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2013年12月24日
平成26年度税制改正について(速報)
12月12日に、自民党と公明党から「平成26年度税制改正大綱」が公表されました。
最大の焦点とされた消費税の軽減税率制度については、税率10%時に導入するとされました。消費税増税に伴う法人課税、個人課税はどうなるのかにも注目が集まりましたが、法人は減税措置、個人は増税措置となりました。
12月に新たに公表された主な論点のポイントをまとめた資料を作成いたしましたので、ご活用いただければ幸いです。●12月に新たに公表された主な論点のポイント
Actus Newsletter 2013年12月24日号なお、今回発表された大綱は、10月に公表された民間投資活性化等のための税制改正の内容も含めたものになっています。そちらも合わせてご確認いただければ幸いです。
●10月に公表された民間投資活性化等のための税制改正のポイント
Actus Newsletter 2013年10月7日号関連するお役立ち情報
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2013年12月20日
為替換算について大きな変動があった際のポイント
昨年来からの円安の進行
昨年12月26日に第2次安倍政権が発足してから1年が経とうとしています。当時の対ドル円相場は85円前後でありましたが、今年の5月に103円台まで下落し、その後の世界的な株価下落やアメリカの量的緩和縮小の示唆などにより、93円台までもどることがありましたが、現在はまた103円前後と結果的には円安が大きく進行しています。このような急激な為替市場の変動は、日本企業の損益に大きなインパクトを与えます。
今回は、急激な為替変動による為替差損益の税務のポイントについて解説します。期末為替換算の原則
外貨建資産・負債については、金融商品会計基準の時価評価の適用に合わせ、期末換算規定が定められています。
会計と税務の外貨建資産・負債の期末換算方法をまとめると図表の通りとなります。
外貨建資産・負債の期末換算
税務上、外貨建資産・負債の期末の換算は、発生時換算法と期末時換算法のいずれかを選定することになります。選定は、外国通貨の種類ごとに、かつ、一定の区分ごとに行います。
換算方法を選定しなかった場合には次のそれぞれの換算方法(以下、「法定換算方法」という。)により換算することになります。- 短期外貨建債権債務・・・期末時換算法
- 長期外貨建債権債務・・・発生時換算法
- 売買目的外有価証券(償還期限及び償還金額の定めのあるもの)・・・発生時換算法
- 短期外貨預金・・・期末時換算法
- 長期外貨預金・・・発生時換算法
為替相場が著しく変動した場合に特例あり
為替相場が著しく変動した場合ついて、税務上、特例が設けられています。
事業年度終了の時において有する個々の外貨建資産・負債の為替相場が著しく変動した場合には、その外貨建資産・負債と通貨の種類を同じくする外貨建資産・負債のうち為替相場が著しく変動したもののすべてについて、これらの取得又は発生の基因となった外貨建取引をその事業年度終了の時において行ったものとみなして、それに係る全ての外貨建資産・負債につき期末換算を行うことができます。
つまり、著しく為替相場が変動した場合には、原則にかかわらず、期末換算を行うことができることになります。なお、為替相場が著しく変動した場合とは、次の算式により計算した割合がおおむね15%以上となるときをいいます。
この規定が適用される場合、会計上と税務上の法定換算方法の乖離があるものでも期末換算に統一されることになり、申告調整が不要となります。
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2013年11月20日
更正の請求について
更正の請求とは
税務においては、「修正申告」「更正の請求」という申告の誤りを是正する手続きがあります。これらの手続きは、いざと言う時のためにも十分に把握しておくことが必要です。
修正申告、更正の請求は、納税者側からの是正手続きという点で共通しています。所得が過少であった場合は修正申告となり、所得が過大であったり所得税の純損失や法人税の欠損金が過少の場合は更正の請求を行います。
更正の請求は、原則として、既に行った申告が法律の規定に従っていなかったこと又は計算誤りがあったことの2点の理由により、税額が過大であったり、又は還付金が過少であった場合等に税務署長に対しその是正を求めることができるものです。
更正の請求ができる期間は、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については法定申告期限から5年とされ、平成23年12月2日より前に法定申告期限が到来する国税については法定申告期限から1年となります。
更正の請求の手続き
更正の請求をする際には、その請求に係る請求前及び請求後の課税標準及び税額、その更正の請求をする理由等を記載した「更正の請求書」や、その更正の請求の理由のもとになる「事実を証明する書類」を添付して提出しなければなりません。
そして、税務署長はその更正の請求について調査し、更正をするべきかどうかを検討した上で、請求をした者へ通知することになります。なお、所得計算の特例や税額控除等の一定の当初申告を適用要件としているものや当初申告に記載された金額を限度とする適用額の制限のあるものについては、その申告がなかったため特例措置が受けられず、税額が過大になった場合や他の計算に誤りがあり、適用額の金額に影響があった場合でも、その当初申告に記載された金額を超えて適用額を増加させる更正の請求は認められないこととされてきました。
これらについては、平成23年12月の改正により、法人税法、所得税法や相続税法などの一定の制度で当初申告要件は廃止となり、適用額の制限についても見直しが行われました。
法人税関係については主に以下のような制度が、廃止、または直しされました。
法人税関係の当初申告要件が廃止された制度
- 受取配当等の益金不算入制度
- 外国子会社から受ける配当等の益金不算入制度
- 国等に対する寄附金、指定寄附金及び特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入制度
- 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度
- 協同組合等の事業分量配当等の損金算入制度
- 所得税額控除制度
- 外国税額控除制度
- 公益社団法人又は公益財団法人の寄附金の損金算入限度額の特例制度
- 引継対象外未処理欠損金額の計算に係る特例制度
- 特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の制限の5倍要件の判定の特例制度
- 特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入の対象外となる資産の特例制度
- 特定資産に係る譲渡等損失額の計算の特例制度
法人税関係の適用額の制限が見直された制度
- 受取配当等の益金不算入制度
- 外国子会社から受ける配当等の益金不算入制度
- 国等に対する寄附金、指定寄附金及び特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入制度
- 所得税額控除制度
- 外国税額控除制度
- 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(措法)
- 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の特例(措法)
- エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法)
- 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法)
- 沖縄の特定地域において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法)
- 沖縄の特定中小企業者が経営革新設備等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法)
- 国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法)
- 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除(措法)
- 法人税の額から控除される特別控除額の特例(措法)
これにより、当初申告において制度の適用を受けていない場合でも、修正申告や更正請求書に適用を受けるべき金額など一定の事項を記載した書類を添付することにより、新たに制度の適用を受けることができることとなり、また、当初申告に添付された書類に記載された適用を受ける金額を増額させることができることとなりました。
ただし、租税特別措置法における試験研究費の特別控除制度など租税特別措置法における当初申告要件は、当初申告に添付される書類に特定の事項を記載する必要があるため、法人税法における当初申告要件とは異なり、引き続き当初申告要件が存続することとなりますので注意が必要です。
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2013年10月21日
消費税転嫁対策法の成立
今年の6月に「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(通称:「消費税転嫁対策法」)が可決、成立しました。この法律の内容は、4本柱で構成されています。
第1 :消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置
第2 :消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置
第3 :価格の表示に関する特別措置
第4 :消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置多くの事業者に影響する項目が、第2と第3の項目となります。
表示の是正について
事業者は、消費税の転嫁を阻害する表示をしてはならないとして次のような表示を禁止しています。
- 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
例) 「消費税は転嫁しません」
例) 「消費税は当店が負担しています」 等の表示 - 取引の相手方が負担すべき消費税を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの
例) 「消費税率上昇分値引きします」 等の表示 - 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって 2. に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの
例) 「消費税相当分,次回の購入に利用できるポイントを付与します」 等の表示
価格の表示について
2013(平成25)年10月1日から2017(平成29)年3月31日まで時限的に、消費税率の引上げに際し,消費税の円滑で適正な転嫁のため必要があるときは,現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じているときに限り,税込価格を表示することを要しない(総額表示義務の特例措置)ことになります。
例) 税抜表示にするが、レジや棚に消費税の換算表や主要な製品の税込価格を掲げる など税率の2段階引上げに対応する価格戦略は企業にとって非常に大切なものになります。先月9月に公表されました消費税転嫁対策特別措置法のガイドラインでどのような表示が認められるのか確認し、価格の決定を行うことが必要になってきます。
- 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
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2013年10月7日
民間投資活性化等のための税制改正(速報)
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2013年9月20日
所得拡大促進税制とその活用ポイント
概要
平成25年度税制改正では、前回紹介しました「生産等設備投資促進税制」のほか、「所得拡大促進税制」が新設されました。
現在、人件費における優遇税制としては、「雇用促進税制」がありますが、適用を受けるためには、新たに従業員を雇用する必要があります。一方、今回の「所得拡大促進税制」は、現在の雇用者に対して給与等を増加させることで、適用が受けられることになります。
企業にとって人件費は金額的にも重要な費用であり、給与増を実施する場合には、優遇税制を受ける要件を是非ご確認ください。
所得拡大促進税制の内容
概要
所得拡大促進税制は租税特別措置法に規定されています。条文上は、「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」とされており、雇用者給与等支給額が増加した場合に、その増加額に対して10%の税額控除を認めるものです。ただし、税額控除の額は、中小企業者等の場合は法人税額の20%、それ以外の法人の場合は10%が限度となります。
この税制は、青色申告書の提出を要件としますが、資本金基準や業種の要件は設けられていないため、多くの企業で適用が期待できます。適用期間
平成25年4月1日から平成28年3月31日までの3年間の間に開始する各事業年度が適用対象期間となります。
適用要件
適用にあたっては、次の3つの要件のすべてを満たす必要があります。
- 雇用者給与等支給額が基準雇用者給与等支給額(基準年度の雇用者給与等支給額)に比し5%以上増加している。
- 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額(前事業年度の雇用者給与等支給額)を下回らない。
- 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額(前事業年度の平均給与等支給額)を下回らない。
給与等の範囲
- 給与の受給者の要件
国内の事業所に勤務する雇用者に対する給与等が対象となります。また、法人の使用人に限られています。(その法人の役員及びその役員の一定の特殊関係者並びにその法人の使用人としての職務を有する役員を除く) - 給与等の意義
所得税法において「給与所得」に該当するものとなります。また、法人の給与台帳に記載される者に対する給与がすべて含まれます。すなわち、日雇い、パート、アルバイト、嘱託などへの支払いもすべて含まれることになります。
一方、派遣社員、請負労働者、出向元が給与等を負担する出向者などに対する支払いは含まれません。なお、出向に限らず、他の者からその給与等に充てるため支払いを受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額となります。
各用語の意義
- 雇用者給与等支給額
適用を受けようとする事業年度(適用年度)の損金の額に算入される給与等の支給額 - 基準雇用者給与等支給額
平成25年4月1日以後に開始する事業年度のうち、最も古い事業年度開始の日の前日を含む事業年度(基準年度)における雇用者給与等支給額をいう。
(例)3月決算の場合 平成24年4月1日~平成25年3月31日
12月決算の場合 平成25年1月1日~平成25年12月31日 - 比較雇用者給与等支給額
適用年度開始の日の前日を含む事業年度の雇用者給与等支給額 - 平均給与等支給額
適用年度における以下の算式により計算した額をいう。
<算式>
- 比較平均給与等支給額
適用年度にかかる比較雇用者給与等支給額(前事業年度の雇用者給与等支給額)を④と同様の算式により計算した額をいう。
本制度活用のポイント
所得拡大促進税制の活用にあたっての注意点やポイントは次のとおりです。
- 適用年度2年目以降の取り扱い
税額控除の対象となる雇用者給与等の支給増加額は基準年度との比較になります。適用年度1年目において適用することができれば、2年目以降に給与等の水準に大きな変動がなければ、2年目においても適用することができる可能性が高いことになります。 - 雇用促進税制との併用はできない。
雇用促進税制の適用を受けている場合は、この制度の適用は受けることができません。なお、雇用促進税制の場合は、事業年度開始より2か月以内に雇用促進計画をハローワークに提出していることが要件となっております。なお、所得拡大促進税制においては、このような要件はないので、適用年度の業績や予算を見ながら検討することが可能です。 - 税額控除の繰越について
税額控除において控除できる金額を超えた限度超過額がある場合、その金額を、翌年に繰越すことはできません。 - 入社員等の増加時の適用
平均給与等支給額が前年の平均給与等支給額を下回らないことが必要となるため、比較的給与等が低いと見込まれる新入社員等の採用を考えている場合は、注意が必要となります。平均給与等支給額が大きく下がり、適用を受けられない可能性がでてくるためです。
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2013年8月20日
生産等設備投資促進税制とその活用ポイント
平成25年度税制改正法では、企業の設備投資を促進するため「生産等設備投資促進税制(正式名称:国内の設備投資額が増加した場合の機械等の特別償却又は法人税額の特別控除)」が導入されました。
この制度は、国内における設備投資が増加した場合、機械及び装置について、その取得価額の30%特別償却又は取得価額の3%税額控除(法人税額の20%を限度)を認めるものです。青色申告書の提出を要件としますが、既存の設備投資減税と違い、資本金などの基準が設けられておりません。このため、多くの企業で適用が期待できます。
具体的にどのような場合に適用があるのか見てみましょう。まず適用期間は、2013(平成25)年4月1日から2015(平成27)年3月31日までの2年間の間に開始する各事業年度(設立事業年度を除く。)とされており、3月決算法人では、既に適用期間が開始しています。
また、適用要件には、金額要件と申告要件があり、具体的には以下のとおりとなります。金額要件
青色申告書を提出する法人が、上記適用期間のいずれかの事業年度で取得し、国内の事業の用に供する生産等設備で、適用対象年度末日において有するものの取得価額の合計額が次の1.及び2.の金額を超えること。
- その法人の有する減価償却資産について、その適用対象年度において償却費として損金経理した金額(特別償却準備金として積み立てた金額を含み、前事業年度の償却超過額等を除く。)
- 適用対象年度の前事業年度に取得し、国内事業用に供した生産等設備の取得価額の合計額の110%相当額
対象となる生産等設備は、「その法人の製造業、その他の事業の用に直接供される減価償却資産(無形固定資産及び生物を除く。)で構成されているものをいう。なお、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設等は、該当しない。」とされています。リース取引により取得した機械及び装置は税務上、賃貸借ではなく取得に該当することになり、今回の税制においても税額控除の対象とされています。しかしながら、特別償却は適用対象外となります。
申告要件
特別償却の場合は、確定申告書等に「機械等の償却限度額の計算に関する明細書」、税額控除の場合は、確定申告書等に「控除の対象となる機械等の取得価額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類」の添付が必要となります。
上記の適用要件を満たした場合、適用事業年度に取得した生産等設備のうち、国内事業用に供された機械及び装置の取得価額の30%特別償却又は3%の税額控除が認められます。税額控除については、法人税額の20%を限度とする上限が設けられています。税額控除において控除限度額を超える超過額がある場合、翌年に繰越すことはできません。
一般的には税額控除を選択した方が、減価償却費を通常どおり計上したうえに、更に税額を減らす効果が追加的にもたらされるため有利となりますが、所得が赤字となる場合には、控除する税額がないまま切り捨てられてしまいます。
このような場合には、特別償却を選定したほうがよいといえます。また、法人住民税及び法人事業税の地方税の適用にあたっては、中小企業者等のみが適用対象となるので注意が必要です。上述のように、この制度は2年間の期間限定措置となっており、また、適用要件の一つで前事業年度の投資額の110%相当を超える投資が必要ということになっております。このため適用初年度に大きな投資をし、2年目に投資を控えるような場合には、2年目においてはこの税制の適用が受けられないことも想定されます。つまり、投資計画次第で享受できるメリットが変わるということです。製造業等の法人は、この制度の適用も見据えた投資計画を検討してみてはいかがでしょうか。
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2013年3月8日
消費税95%ルールの改正
消費税95%ルール改正の概要
平成23年6月税制改正の消費税改正項目のうち、平成25年3月期決算において大きな影響があるのは、「95%ルールの改正」です。 95%ルールとは、課税売上割合が95%以上となる課税事業者については、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を課税標準額に対する消費税額から控除できる制度のことです。改正により、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から、課税売上高が5億円を超える課税事業者は、95%ルールの適用対象外とされました。課税売上高が5億円を超える課税事業者は、課税仕入れ等に係る消費税額の全額の控除は認められず、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかの方法によって仕入税額控除の計算を行うことになります。なお、課税売上高が5億円以下の課税事業者は、従来通り、全額の税額控除が認められます。今回は、95%ルールの適用対象外とされる課税売上高が5億円を超える課税事業者の注意すべき点を解説します。
95%ルールの改正の内容
課税仕入れ等の用途区分の見直し
仕入税額控除の計算において個別対応方式を採用する場合には、その課税期間における個々の課税仕入れ等について課税売上対応分、非課税売上対応分及び共通対応分に用途区分が必要になります。この用途区分は、個々の課税仕入れ等ごと(取引ごと)に行う必要があります。そして課税仕入れ等の3つの用途区分についての判定時期は、原則、課税仕入れ等を行った日の現況とされています。具体的な経理処理においては、取引の仕訳の都度、用途区分が必要となります。しかしながら、課税期間の末日までに用途区分が明らかにされた場合には、その用途区分されたところによって個別対応方式による計算を行って差し支えないとされています。そこで、決算作業にあたっての消費税申告のポイントをまとめると、次のようになります。
消費税申告にあたってのポイント
- 消費税の申告における主な注意点は、課税・非課税等の区分の適否、課税の場合の用途区分が適正かの確認です。用途区分については、課税期間の末日までに明らかにされた場合、その用途区分されたところによって個別対応方式による計算を行って差し支えないとされているため、決算作業前となる3月中に正しい区分がされているか、事業部ごと、勘定科目ごとなどに消費税集計表から確認しておくことが望ましいでしょう。
- 用途区分の確認については、会計ソフトにその用途区分を入力するなど、申告後においても客観的に確認できるように用途区分されていればよく、その区分方法は問わないこととされています。
- 個別対応方式と一括比例配分方式の選択は、申告時までに決めればよいことになりますが、改めて、一括比例配分方式との比較を忘れてはなりません。なお、一括比例配分方式を採用すると、いわゆる2年間の適用縛りが発生するので注意が必要です。
- 課税売上割合に準ずる割合については、今期に適用を受ける場合には、「承認」まで得ておかないと適用できません(現実として、本稿公開日からの申請で、今期の適用は、日程的に厳しいと思われます)。
申告書記載にあたってのポイント
- 主に使う申告書、付表2については、95%ルール改正が反映された様式になっています。申告は、新しい様式のものを使うようにしてください。
- 平成23年6月の税制改正により、平成24年4月1日以後に消費税の還付申告書(中間還付を除く)を提出する場合、「消費税の還付申告に関する明細書」を添付しなければなりません。
95%ルール改正による法人税申告への影響
95%ルールの改正により、仕入税額控除できない金額が増えます。これにより法人税の申告において影響する項目もあり、注意すべき点を簡単にまとめると、次のようになります。
- 控除対象外消費税の損金算入
税抜経理方式を採用している場合の控除対象外消費税の処理に注意しなければなりません。繰延消費税として資産計上し損金算入していくのか、個々の資産の取得価額に算入していくのか、あるいは一時の損金にできるのかなどの検討を忘れないようにしてください。 - 交際費等に係る控除対象外消費税
交際費等に係る控除対象外消費税に相当する金額は、交際費等の額として、別表十五において交際費等の損金不算入額の計算をします。
本稿は、下記の寄稿記事より一部修正・抜粋の上、掲載いたしました。
『 Profession Journal No.9(2013年3月7日)』
平成25年3月期決算・申告にあたっての留意点(第5回) 「消費税95%ルールの改正」 -
2013年3月1日
減価償却における定率法の改正
定率法の償却率の改正
平成23年12月の税制改正において法人税率引下げに対する課税ベース拡大措置のひとつとして「定率法の償却率引下げ」とそれに伴う整備が行われました。具体的には、平成24年4月1日以後に取得される減価償却資産に適用する定率法の償却率が定額法の償却率を2倍した償却率(以下「200%定率法」という)に変更されたのです。 これにより、平成19年度税制改正で導入された250%定率法の償却率から、200%定率法へ引き下がることになりました。間もなく決算を迎える3月決算法人においては、200%定率法が適用される最初の事業年度となります。なお、この改正においては、250%定率法から200%定率法への移行にあたっての経過措置が設けられています。経過措置の内容をまとめると、大きく次の2点となります。
- 減価償却資産の取得にあたっての経過措置
3月決算法人以外の法人については、平成24年4月1日以後に最初に終了する事業年度において取得したものは、平成24年4月1日以後の取得であっても250%定率法による償却限度額の計算ができる。
→今回の3月決算法人(平成24年4月1日~平成25年3月31日)については、経過措置の適用はないことになります。
- 平成19年4月1日~平成24年3月31日までの間に取得された250%定率法適用資産に対して200%定率法の適用を選択できる経過措置
平成19年4月1日~平成24年3月31日までの間に取得された250%定率法適用資産について、平成24年4月1日の属する事業年度の確定申告期限までに一定の届出書を提出したときは、選択により改正事業年度又は平成24年4月1日以後最初に開始する事業年度のいずれかの事業年度以後について、200%定率法により償却することができることになる。
→今回の3月決算法人については、改正事業年度=平成24年4月1日以後最初に開始する事業年度となり、今期の確定申告期限までに選択ができる。
申告にあたってのポイント
届出により200%定率法に変更する経過措置を適用する場合
250%定率法を適用しているすべての資産が200%定率法により償却を行うことになります。届出書の提出期限に注意が必要です。提出期限は確定申告書の提出期限となります。延長をしている法人については、延長後の提出期限となります。選択適用の規定であり、減価償却費の額に変動が生じることになります。納税上の有利・不利や会計監査の要請などを考慮し、選択していく必要があるといえます。
資本的支出について
平成24年4月1日以後に支出する資本的支出については、その本体資産が250%定率法適用資産であっても、200%定率法により償却限度額を計算することになります。また、250%定率法適用資産と200%定率法適用資産では異なる償却率であるため、資本的支出の取得価額の特例(翌期首からの合算償却)は適用できないことになります。
旧定率法適用資産(平成19年3月31日以前に取得した資産)ついて平成24年4月1日以後に資本的支出を行った場合
→従来通り資本的支出を行った事業年度にその資本的支出の額を本体の取得価額に合算し旧定率法により償却限度額を計算できます。
250%定率法適用資産について200%定率法適用資産とみなす経過措置の規定を適用した場合
→平成24年4月1日以後に行った資本的支出については翌期首からの合算償却の特例を適用できます。
本稿は、下記の寄稿記事より一部修正・抜粋の上、掲載いたしました。
『 Profession Journal No.8(2013年2月28日)』
平成25年3月期決算・申告にあたっての留意点(第4回) 「減価償却における定率法の改正」 - 減価償却資産の取得にあたっての経過措置
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2013年2月22日
繰越欠損金の使用制限と控除期間の延長
欠損金の繰越控除の改正の概要
欠損金の繰越控除制度とは、法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合、その欠損金額に相当する金額を、各事業年度の所得の金額を限度として損金の額に算入する制度です。
平成23年12月改正により、繰越欠損金制度の改正が行われました。その内容は大きく分けて2つあります。1つは、中小法人等以外の法人について、欠損金の控除限度額は、その事業年度の所得の金額の80%相当額になる点。もう1つは、繰越欠損金(青色欠損金、災害損失金及び連結欠損金)の繰越期間が7年から9年に延長された点です。
この改正は平成24年4月1日以後開始の事業年度から適用され、今年の3月に決算を迎える3月決算法人については、最初の適用事業年度となります。
改正内容についてのポイントをまとめると、次のようになります。
ポイント1 控除限度額の所得金額80%制限
- 中小法人等(※)については、改正前のまま、所得金額の100%相当額が控除限度額となります。
- 中小法人等(※)以外の法人については、所得金額の80%相当額が繰越控除の限度額となります。
※中小法人等とは、次の法人をいいます。
- 普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、又は資本もしくは出資を有しないもの(大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人、法人課税信託に係る受託法人などを除く)
- 公益法人等又は協同組合等
- 人格のない社団等
ポイント2 繰越期間の9年延長
- 延長の措置は、中小法人等の区別なく適用されます。
- 過年度の欠損金は、平成20年4月1日以後に終了した事業年度で生じた欠損金額から9年が適用されます。
- 付随措置として、次の3点が講じられています。
- 欠損金額が生じた事業年度に係る帳簿書類の保存要件が追加されました。
- 法人税の欠損金額に係る更正の期間制限が7年から9年に延長されました。
- 法人税の欠損金額に係る更正の請求期間が1年から9年に延長されました。
《イメージ図》 欠損金の繰越控除
申告にあたってのポイント
別表七(一)の記載には、欠損金控除前所得金額を算出し、その金額に80%又は100%を乗じて限度額を計算し、その限度額を発生年度の古い欠損金額から充当していくことになります。
― 記 入 例 ―
※法人税申告書 別表七(一)より抜粋
本稿は、下記の寄稿記事より一部修正・抜粋の上、掲載いたしました。
『 Profession Journal No.7(2013年2月21日)』
平成25年3月期決算・申告にあたっての留意点(第3回) 「繰越欠損金の使用制限と控除期間の延長」 -
2013年2月15日
寄附金の損金算入限度額の見直し
寄附金の損金算入限度額の見直しの概要
寄附金については、一般の寄附金の損金算入限度額が縮減され、一方、特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額が拡充されることになりました。適用は、平成24年4月1日以後に開始する事業年度となり、3月決算法人は平成25年3月期から適用されます。
1.一般の寄附金の損金算入限度額の縮減法人が支出する一般の寄附金の損金算入限度額は、次のように縮減されました。
(1)資本等のある法人
(2)資本等のない法人
2.特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額の拡充法人が支出する特定公益増進法人、認定特定非営利活動法人及び仮認定特定非営利活動法人に対する寄附金に係る特別損金算入限度額は、次のように拡充されました。
(1)資本等のある法人
(2)資本等のない法人
《イメージ図》改正前、改正後の寄附金の損金算入限度額
(国税庁「平成23年度法人税関係法令の改正の概要」より)
申告にあたってのポイント
申告書上において、損金算入限度額の記載欄の書き方に注意しなければなりません。一般寄附金については、1/2でなく、1/4を選択することです。
― 記 入 例 ―
※法人税申告書 別表14(2)より抜粋
本稿は、下記の寄稿記事より一部修正・抜粋の上、掲載いたしました。
『 Profession Journal No.6(2013年2月14日)』
平成25年3月期決算・申告にあたっての留意点(第2回) 「貸倒引当金制度の縮減と寄附金の損金算入限度額の見直し」 -
2013年2月15日
貸倒引当金制度の縮減
貸倒引当金制度の改正の概要
平成23年12月改正において、貸倒引当金制度の改正が行われました。この改正により、貸倒引当金制度の適用対象となる法人が、(1)中小法人等、(2)銀行・保険会社等、(3)リース会社、信販会社等に限定されます。資本金が1億円を超える一般の事業法人等、適用対象外の法人については、貸倒引当金制度が廃止されます。
この貸倒引当金制度の改正に当たっては、貸倒引当金の繰入限度額を段階的に1/4ずつ縮減させていくという経過措置が設けられています。経過措置が適用される期間は、平成24年度(平成24年4月1日以後に最初に開始する事業年度)から平成26年度(平成26年4月1日以後に最初に開始する事業年度)までの3事業年度です。平成24年度は4分の3、平成25年度は4分の2、平成26年度は4分の1となり、平成27年度で廃止となります。
これらの貸倒引当金制度の改正は、個別評価貸倒引当金と一括評価貸倒引当金のいずれにも適用されます。
間もなく決算を迎える3月決算法人においては、平成25年3月期が経過措置事業年度の最初の事業年度となりますので注意が必要です。
3月決算法人の繰入限度額の経過措置
繰入限度額の経過措置
繰入限度額の経過措置のイメージ
(国税庁webサイト「平成23年度法人税関係法令の改正の概要」より)
貸倒引当金制度の適用対象となる限定法人
今回の改正で貸倒引当金制度の適用対象となる法人は、次の3区分のいずれかに該当する法人に限定されます。
- 普通法人(資本金の額が1億円以下である法人で、大法人(資本金5億円以上)との間に完全支配関係があるもの等を除く)、公益法人、協同組合、人格のない社団等
- 銀行、保険会社、これらに準ずる法人
- リース会社、証券会社、クレジット会社、信用保証会社等のリース債権を有する法人その他の金融取引に係る金銭債権を有する法人
なお、3. の法人については、法人の種類ごとに設定対象となる金銭債権が限定されていますので特に注意が必要です。
平成25年3月期の申告におけるポイント
経過措置中の事業年度では、新法と経過措置の選択適用が認められていますので、平成25年3月期の申告においても、新法と経過措置のいずれか有利な制度を選択適用することが可能です。
個別評価金銭債権については、金銭債権ごとに選択することができ、一括評価金銭債権については、事業年度ごとに選択することができます。中小法人等は、改正後においても貸倒引当金制度の対象となることに変わりはなく、今までの申告と同様になります。一方、中小法人等以外の法人については、貸倒引当金制度の対象外となるので、限度額が残る経過措置を適用した方が有利であると考えられます。ただし、上記3. の法人については、一定の金銭債権について繰入れが認められるため、経過措置の適用を受けるか、新法の適用を受けるか、といった有利不利が発生するものと考えられます。
申告にあたってのポイント
- 個別評価金銭債権は、金銭債権ごとに経過措置の適用を選択する。
- 一括評価金銭債権は、事業年度ごとに経過措置の適用を選択する。
別表の記載にあたっては、改正前の繰入限度額計算を行った後に75%を乗じることで、3/4への縮減を行うことになります。
本稿は、下記の寄稿記事より一部修正・抜粋の上、掲載いたしました。
『 Profession Journal No.6(2013年2月14日)』
平成25年3月期決算・申告にあたっての留意点(第2回) 「貸倒引当金制度の縮減と寄附金の損金算入限度額の見直し」 -
2013年2月8日
法人税率の引下げと復興特別法人税の開始
法人税率の引下げと復興特別法人税の開始
平成24年4月1日以後開始事業年度から、法人税率が30%から25.5%へ引下げられます。中小法人等の軽減税率についても18%から15%へ引下げられます。
一方、法人税率の引下げと同時に、復興特別法人税が課税されるようになります。復興特別法人税は、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事 業年度について、その各課税事業年度の基準法人税額に10%の税率を乗じた額が復興特別法人税額となります。平成25年3月期の申告における税率をまとめると、次の通りとなります。
〔普通法人〕
25.5%+2.55%(25.5%×10%)=28.05%〔中小法人等の年800万円以下所得〕
15%+1.5%(15%×10%)=16.5%申告にあたってのポイント
ポイント1
実際の申告計算にあたっては、源泉所得税の徴収のように合計税率を乗じた計算は行いません。法人税申告書を作成し、その上で、その法人税額を課税標準として 計算する「復興特別法人税申告書」を使って、別々に計算します。ポイント2
復興特別法人税の納付は、法人税の納付とは別に行います。そのため、納税にあたっては法人税の納付書と復興特別法人税の納付書の2枚が必要です。ポイント3
提出期限の延長の特例の適用を受けている法人は、復興特別法人税の申告期限も自動的に延長されます。法人税申告における復興特別所得税の税額控除
法人が平成25年1月1日以後に支払いを受ける預金利息や配当等については、所得税のほかに、復興特別所得税が源泉徴収されることになります。 この源泉徴収 された所得税と復興特別所得税は、法人税と復興特別法人税の前払いであるため、確定申告において税額控除の対象となります。 税額控除の際、ポイントとなるの は、源泉徴収された復興特別所得税は、復興特別法人税から税額控除され、法人税からは控除されない点です。
税額控除
(1)法人税額から控除されるのは、源泉徴収された「所得税の額」
(2)復興特別法人税額から控除されるのは、源泉徴収された「復興特別所得税の額」申告にあたってのポイント
ポイント1
平成25年1月1日以後に預金利息や配当等を受け取った場合、所得税と復興特別所得税は、確定申告書において別々に税額控除されます。
復興特別法人税別表2(復興特別所得税額の控除に関する明細書)を使って、控除を受ける復興特別所得税の計算を行います。ポイント2
復興特別法人税について、課税標準となる法人税額がない場合には、復興特別法人税申告書の提出を要しないものとされています。しかし、復興特別所得税の還付 を受けるためには、申告書の提出が必要となります。 具体的には、
復興特別法人税別表1(各課税事業年 度の復興特別法人税に関する申告書)
復興特別法人税別表2(復興特別所得 税額の控除に関する明細書)
の提出が必要です。本稿は、下記の寄稿記事より一部修正・抜粋の上、掲載いたしました。
『 Profession Journal No.5(2013年2月7日)』
平成25年3月期決算・申告にあたっての留意点(第1回) 「法人税率の引下げと復興特別法人税の開始」 -
2013年1月29日
平成25年度税制改正について(速報)
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2013年1月10日
復興特別所得税に関して実務上注意すべき点
復興特別所得税の概要
復興特別所得税が2013年(平成25年)から課されます。この税は、東日本大震災からの復興施策を実施するため、必要な財源を確保する目的で創設されたものです。復興特別所得税が増税される期間は、2013年(平成25年)から2037年(平成49年)までの四半世紀、25年間となり、その税率は2.1%です。
復興特別所得税は、所得税の税額(基準所得税額)を課税標準とする「付加税」の仕組みをとっています。つまり、納税者は、所得税額に2.1%を付加した102.1%相当の税額を納付することになります。
源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額
源泉徴収すべき復興特別所得税の額は、源泉所得税額に2.1%を付加した額となります。
実際には、源泉徴収の対象となる支払金額に対して、所得税と復興特別所得税の合計税率を乗じて計算した金額を徴収し、1枚の所得税徴収高計算書(納付書)で納付することになります。
給与等に係る所得税及び復興特別所得税の源泉徴収
給与や賞与について源泉徴収すべき金額は、税務署が配布している「平成25年分の源泉徴収税額表」に基づき算出します。
「平成25年分の源泉徴収税額表」は、国税庁ホームページにも掲載されており、この税額表は、復興特別所得税を含んだ税額に変更されています。平成24年分以前の税額表は使用しないように注意が必要です。
給与計算ソフトを使用している場合は、ソフトウェアのアップデートをし、税額表どおりに計算されているか今一度確認しておく必要があります。
報酬等に係る所得税及び復興特別所得税の源泉徴収
源泉徴収の対象となる報酬や配当についても、支払金額に対して所得税と復興特別所得税の合計税率を乗じて計算した金額を徴収し、納付します。
源泉徴収すべき所得税及び復興特別税の額
支払金額 × 合計税率(%) = 源泉徴収すべき所得税及び復興所得税の額
※ 合計税率 = 所得税率(%) × 102.1%
算出した所得税及び復興特別所得税の額に1円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる源泉徴収する際の実務上の留意点
手取金額からの源泉すべき税額のグロスアップ計算
報酬等の料金について、実務上、手取額をキリの良い金額になるように支払われることが多いでしょう。この場合の納付すべき所得税及び復興特別所得税の額は、次のようにして求めることができます。
(例)手取金額 200,000円、源泉税率を10.21%
(ア)消費税込金額の支払対価に源泉する場合
(イ)消費税抜金額の支払対価に源泉する場合(消費税は5%)
源泉徴収の適用税率の切り替わるタイミング
源泉徴収の適用税率が、2013年(平成25年)1月から変更されますが、以下のようなケースでは変更前後のどちらの税率で源泉徴収するのか迷う点がでてきます。
(ケース1)
2012年(平成24年)12月25日支給日の12月分の給与が未払となってしまい、2013年(平成25年)1月10日に支払った場合
給与の収入すべき時期は、支給日が定められている場合、その支給日とされています。したがって、当ケースの場合、2012年(平成24年)12月25日支給の給与は、未払いになっていますが、2012年(平成24年)分の所得となる。実際の支払が2013年(平成25年)1月以後になったとしても、復興特別所得税を源泉徴収する必要はありません。(ケース2)
2012年(平成24年)12月分給与を2013年(平成25年)1月25日に支給する定めに基づき、支払った場合
このケースでは、2013年(平成25年)1月25日が収入すべき時期となり、2013年(平成25年)分の所得となるため、復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。(ケース3)
2012年(平成24年)12月開催の株主総会で配当決議を行い、2013年(平成25年)1月25日に配当を支払う場合
配当の収入すべき時期は、配当決議がありその効力発生日が収入すべき時期とされています。したがって、このケースでは配当決議日が2012年(平成24年)であるため、2012年(平成24年)分の所得となります。ケース1と同様、実際の支払が2013年(平成25年)1月以後になったとしても、復興特別所得税を源泉徴収する必要はありません。
税務会計