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2012年11月22日
「税務調査手続きの明確化」について
2011(平成23)年11月に成立した税制改正に「税務調査手続きの明確化」という事項がありました。
税務調査手続の法定化が規定され、2013(平成25)年1月1日以後に開始する税務調査から適用されることになります。今回は、税務調査手続きについて実地調査終了後の内容について説明いたします。
実地調査終了後について
- 申告内容に誤りがない場合
申告内容に誤りが認められない場合は、その旨を書面により通知されます。 - 申告内容に誤りがあり、修正申告する場合
申告内容に誤りが認められる場合は、調査結果の内容(誤りの内容、金額、理由)が説明され、修正申告を「勧奨」されます。勧奨に応じ修正申告の提出を行う場合、「その修正申告に係る異議申立てや審査請求はできないが更正の請求はできる」ことが説明され、その旨を記載した書面が渡されます。
※これまでは修正申告の勧奨について明確にされていませんでした。 - 修正申告に応じない場合
修正申告の勧奨に応じない場合には、税務署長による更正又は決定の処分が行われます
校正又は決定の処分に不服がある場合の権利救済手続きについて
- 異議申立て
税務署長が行った処分に不服があるときには、処分の通知を受けた日の翌日から2か月以内に、税務署長に対して異議申立てをすることができます。
なお、青色申告書に係る更正処分に不服があるときなどは、異議申立てをせずに、直接、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。
※ 異議申立てから3か月を経過しても異議決定がない場合には、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。 - 審査請求
税務署長の異議決定を経た後の処分に、なお不服があるときは、異議決定の通知を受けた日の翌日から1か月以内に、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。
※ 審査請求から3か月を経過しても裁決がない場合には、裁判所に訴訟を提起することができます。 - 訴訟
国税不服審判所長の裁決があった後の処分に、なお不服があるときは、その裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内に、裁判所に訴訟を提起することができます。
- 申告内容に誤りがない場合
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2012年10月10日
消費税改正に向けて企業が対処すべき課題
消費税増税が成立
去る8月10日、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」(いわゆる「消費税増税法案」)が成立し、同22日に公布されました。
この法律の施行は2014(平成26)年4月1日からとなります。消費税は、今から約1年半後に8%へ、さらにその1年半後に10%へと、今までにはない短い期間に税率が上がっていくことになります。消費税増税に備え企業が検討すべき課題
消費税増税が経営に与える影響は少なくありません。企業が検討すべき課題には、次のようなものがあります。
消費税増税分の価格転嫁の課題
- 長期デフレ経済下、短期間2段階税率上昇分のすべてを価格に転嫁できるか
- 増税分を価格転嫁できなければ売上単価の値下げになる
- 転嫁できない実質値下げは、売上数量の増加かコスト削減でカバーする必要あり
- 値ごろ感のある価格設定(2,980円など)を維持できるか
駆け込み需要対策
- 駆け込み需要予測と売上計画の策定
- 品不足による機会損失を回避するため、事前の調達準備の徹底
- 増税前、増税後の販売戦略の策定
- プロモーション方法の検討(消費税還元セールなど)
- 税率引上げ後の需要の落ち込みとそれによる滞留在庫リスク対策
資金繰り対策
- 消費税の申告納税額が2倍になるため、資金繰りがより重要に
- 売掛金回収、得意先の与信管理もより厳しく
社内対策
- 適正な税率による経理処理
- 会計システムの対応確認(5%・8%・10%の混在する期間)
- 社員研修による消費増税対応策の周知
特に価格転嫁の課題は、企業の売上に大きな影響を与えます。価格についての検討は、早め早めに対策を練るのが賢明といえそうです。
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2012年8月20日
現物給与と隣接経費の取扱い
現物給与のうち、隣接経費と関係がある項目を一覧にまとめると次のようになります。同じ内容であっても、対象者の違いなどで処理が異なることになり、注意が必要です。
レクリエーション行事
全従業員を対象としたもの
- 一般的に認められているレクリエーション行事
- 通常要する費用
- 場合によっては、家族の参加も認められる
⇒福利厚生費に該当
- 役員のみ又は特定の社員のみ等を対象とするもの
- 華美、過大の費用
- 自己都合による不参加者への金銭支給は参加者も給与となる
⇒給与に該当
- 役員のみ、又は特定の社員のみ等を対象とするもので給与とならないもの(5,000円基準の適用なし)
⇒交際費等に該当
社内サークル活動
- サークル参加が自由
- 会社補助金が本来目的に使用し、かつ、明確なもの
- 打上げ、祝勝会等の飲食で会議費程度のもの
⇒福利厚生費に該当
- 特定の社員のみを対象又は得意先等も参加
- 通常の程度を超える補助金
- 会社補助金を各人に分配、自由使用が可能
⇒給与に該当
- 役員のみ、又は特定の社員のみ等を対象とするもので給与とならないもの
- 打上げ、祝勝会等の飲食で会議費程度を超えるもの(5,000円基準の適用はない)
⇒給交際費等に該当
レジャークラブ等の施設利用(ゴルフ会員権は除く)
- 法人会員として入会
- 福利厚生施設として社員が自由にできるもの
⇒福利厚生費に該当
- 個人会員としての入会
- 特定の役員、個人のみが利用
⇒給与に該当
- 得意先等が利用しているもの
⇒交際費等に該当
ゴルフクラブ
- 個人が使用する入会金、年会費、プレー代
⇒給与に該当
- 得意先接待としての年会費、プレー代等
⇒交際費等に該当
※ゴルフに関しては、現在のところ、専ら社員等の慰安等とするものでも、福利厚生費として認められていない
法人名義であっても、個人が使用するものは、入会金、年会費、プレー代は給与となる社員旅行
以下のような旅行
- 旅行期間が4泊5日(海外は目的地滞在期間)
- 全従業員の50%以上が参加
⇒福利厚生費に該当
- 上記2点に該当しないもの
⇒給与に該当
- 旅行中での交際費等行為の負担(5,000円基準の適用なし)
⇒交際費等に該当
創立記念パーティー等
おおむね5年以上の周期で行う
- 従業員におおむね一律に社内で供与される通常の飲食費用、ふさわしい記念品
- 記念品は元従業員に一律配布も交際費等とならない
⇒福利厚生費に該当
- 高価(処分見込価額1万円以上)な記念品
⇒給与に該当
- 得意先を招待したパーティー等への社員の参加費用(飲食が主であると5,000円基準の適用あり)
⇒交際費等に該当
慶弔・禍福費、永年勤続記念など
- 「社内慶弔規定」等の一定の基準に従って支給される金品
- 元従業員も上記基準に準じての支給
- 永年勤続記念は、10年以上勤務で飲食、記念品として相当なもの(旅行、観劇招待を含む)
⇒福利厚生費に該当
- 役員のみ、特定の社員のみ等を対象とするもの
- 役員等の理由のみで、特に加算支給のもの
- 永年勤続記念としての高価な記念品
⇒給与に該当
- 上記給与に該当しないもの
- 永年勤続記念は、式典での通常パーティー等後の二次会など(5,000円基準の適用はない)
⇒交際費等に該当
忘年会、新年会、誕生日会等
会社員を対象とする社内行事の一環とするもの(支店、部、課単位も認められる)
⇒福利厚生費に該当
- 役員のみ、特定の社員のみ等を対象とするもの
- 華美、過大の費用
⇒給与に該当
特定の社員等を対象とするもので給与とならないもの(5,000円基準の適用はない)
⇒交際費等に該当
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2012年7月13日
決算月の変更
決算月はいつが多いのか
現在、法人でもっとも多い決算月は3月で、全体の約20%を占めています。次に多いのが9月決算で約11%、12月決算、6月決算がそれぞれ約10%と続いています。
国税庁HP 統計年報(平成22年)
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/h22/h22.pdf資金繰りの観点から考えると、決算月は何月がよいか
売上が季節変動する会社の場合、資金繰りの観点からは、最も売上の上がる前に決算月を設定するのがよいとされています。
最も売上が上がった後に決算月を迎えると、回収した売上代金をすぐに納税に充てなければなりませんが、売上が上がる前に決算月を迎えた場合は、次の決算後の納税までの間、資金を次の投資に回すことができるからです。
売上が季節により変動する場合、決算月を見直すことが有効な資金繰りの手段となる場合があります。また、税制改正が4月開始の事業年度から適用されることが多いため、3月決算の会社は新しい税制の適用を真っ先に受けることになります。
そのため、2012(平成24)年のように法人税率の引下げが行われるなどの減税措置があった場合は有利になりますが、増税措置の場合は不利になるといえるでしょう。決算月変更をする場合の手続き
決算月を変更する場合は、「事業年度」の変更手続きが必要です。事業年度の変更をするためには、株主総会の特別決議を経て定款を変更しなければなりません。
なお、事業年度の変更は登記事項ではありませんので、登記手続きは不要です。事業年度変更の手順
- 株主総会の特別決議
- 定款の「事業年度」を変更したい事業年度に変更
- 税務署等の行政機関へ異動届出書(事業年度の変更)を提出
(異動届出書には、変更後の定款のコピー、株主総会の議事録コピーを添付)
IFRS導入をにらんだ決算期の変更
IFRSでは本社と連結子会社との決算期の統一が基本的には求められているため、その適用に備え現段階から決算期を変更する上場会社もあるようです。
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2012年6月18日
株主総会終了後の重要な手続き
決算作業が進み数字が固まってくると、次に株主総会の準備に本格的に取り掛かることになります。株主総会は事前準備に多くの力を割きますが、株主総会終了後も重要な手続きがありますので注意が必要となります。
株主総会終了後の三大手続き
議事録の作成
株主総会で決議された事項は、議事録として残すことが法律上義務付けられています。議事録には、議事の経過の要領およびその結果を記載していくことになります。
登記事項の変更について、期限内に登記手続き
決議された事項の中に役員変更など登記手続きを要するものがある場合、議事録を添付して変更登記手続きを行います。登記手続きは、本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内に行うことになります。
配当金の支払い
剰余金の配当を行う場合には、配当通知を株主へ送付し、支払い手続きを遅滞なく行います。
定時株主総会開催の手順(取締役会設置会社の場合)
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2012年5月10日
調査の種類
企業に調査が入るというと税務調査、それも法人税・消費税に関する調査を真っ先に思い浮かべるかもしれません。
しかし、調査は税務署による税務調査に限らず、これ以外にもさまざまなものがあります。一般的な企業に対してなされる主な調査について、行政機関別に内容をまとめてみますと次のようになります。法人税・消費税以外の調査のまとめ
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2012年4月10日
今期決算から税効果会計の適用税率に注意
多くの法人が先月末に決算を迎え、決算作業を進めています。本決算では税効果会計における適用税率に注意する必要があります。
周知のとおり、昨年11月末に成立した税制改正で、この4月1日以後に開始する事業年度から法人税率の引下げが行われます。これにより、今決算からは税効果会計の法定実効税率が変わることになります。税率の変更は、3年間の復興特別法人税の税率も加味して検討を行うことになります。東京都に本店を置く資本金1億円超の3月決算法人の例
(注1)
事業税等は、段階税率を加味しない所得割の最高税率に地方法人特別税の税率を考慮した税率。東京都:3.26%(所得割)+ 2.9%×148%(地方法人特別税)= 7.55%と計算。(注2)
住民税も、段階税率を加味しない最高税率で計算。なお、将来減算一時差異については、スケジューリングの可否により、次のように取り扱うことになります。
- スケジューリング不能の一時差異
復興増税を考慮しない実効税率により算定 - スケジューリング可能の一時差異
復興増税対象期間中に解消される一時差異については、復興増税を考慮した実効税率により算定
税効果会計における税率をしっかりと確認し、ミスが生じないようにしておくことが肝要です
- スケジューリング不能の一時差異
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2012年3月12日
給与と外注費の違い
会社が支払う人件費には主に「従業員に対する給与」と「個人事業主に対する外注費等」があります。どちらも労働の対価として金銭を支払うことには変わりはありませんが、その取扱いには次のような相違点があります。
給与
- 契約形態は雇用契約
- 消費税の仕入税額控除ができない
- 源泉所得税の徴収義務がある
- 労災・雇用・社会保険などへの加入義務がある
外注費等
- 契約形態は請負契約等である
- 消費税の仕入税額控除ができる
- 報酬源泉が必要な業務以外については、源泉所得税の徴収義務がない
- 労災・雇用・社会保険などへの加入義務がない
外注費等は給与と比較して消費税の仕入税額控除ができること、社会保険の負担がないこと等のメリットがあります。ただし、外注費等と給与の区分は不明瞭なケースが多く、契約形態の形式だけではなく、その役務提供の実体や個別事情を総合的に勘案することで取扱いが変わりますので、注意が必要となります。
外注費が否認され、給与とされてしまうポイントは次のような点になります。
- 契約内容は他人の代替が可能なものである。
- 仕事の遂行に当たり会社の指揮・命令を受けている。
- 交通費負担や、仕事の上で必要な道具や材料を自ら用意していない。
- 受けた仕事が不可効力により完成しなくても報酬を請求することができる。
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2012年2月10日
欠損会社への”ダブルパンチ”課税
昨年秋からの税務調査のピークは年を明け終息しつつあります。昔から一般に欠損金のある会社は調査が来ないと思われていますが、実際には欠損金のある会社でも調査の対象となっています。しかも、欠損会社ではひとつの取引について2種類の追徴課税を受けるケースが多く見られるため注意が必要です。
具体的には、外注費と処理したものが給与と認定されてしまうケースです。この場合、外注費の計上に伴う消費税の仕入税額が否認され消費税の追徴課税が行われるとともに、給与に係る源泉所得税も追徴されることになり、まさに”ダブルパンチ”となります。
また、源泉所得税については、誰がそれを負担するかという問題も生じます。すなわち、調査により給与の支給を受けたとされた個人から返金を受けて源泉分を回収するか、会社が負担するかと言うことです。
ただ、元々会社はその費用を外注費として認識しているのであるから当然ながら源泉所得税のことは頭にはなく、調査により給与をもらったとされた個人から年末調整の扶養控除等申告書をもらうこともないでしょう。
そこで、この場合、源泉所得税を乙欄で計算しなければならなくなり、金額もとても多額となってしまうことから、結局は会社が源泉分を負担するケースが多くみられます。
なお、会社が源泉所得税を負担とした場合、「税」である源泉所得税相当額は損金にならないのではないかとの疑問も生じますが、税務上は「給与の追加払い」ととらえることになりますので、給与の対象者が役員でない限り、損金に算入されることになります。
税務会計