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2010年9月10日
資本的支出と修繕費の区分
建物や機械などの固定資産は長期間使用していると故障や破損が生じます。そのため、定期的な修理・改良等が必要となります。企業は、その修理・改良等のために支出した費用が一時の損金になるか否かを判断しなければなりません。
企業が固定資産の修理・改良等のために支出した金額のうち、耐久性の増加や性能の向上のための支出は資本的支出とされます。一方、修理や維持管理のための支出は修繕費とされます。
修繕費は支出した事業年度の損金に算入されるのに対し、資本的支出は固定資産の取得として減価償却により損金算入されます。企業の支出が修繕費か資本的支出になるかは、実態に基づき判定を行うことになります。しかし、その判定が困難な場合も多く、実務上は次のような形式的な判断基準を設けています。次に該当する場合には、修繕費として損金に算入することができます。
- 一つの修理、改良等の支出が20万円未満のとき
- 修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われている場合
- 明らかに資本的支出に該当するものを除き、その支出が60万円未満の場合
- その支出がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額の10%以下である場合
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2010年9月10日
ホームページ制作費用の取扱い
最近では、企業が自社のホームページを持つことがごく普通のことになり、1つの企業がいくつものホームページを持つことも珍しくなくなりました。そこで、ホームページを開設するために支払った費用は、どのように取扱うか確認しておきましょう。
企業や製品のPR目的のもの
このような目的のホームページは、内容が常に最新のものになるよう更新されるのが一般的です。このような更新が行われている場合には、制作当初に支出した費用の効果が1年以上及ぶとは考えられません。したがって、制作費用は支出時の費用として取り扱うのが相当となります。
ただし、1年以上更新されない場合には、その使用期間に応じて均等償却することとなります。プログラムが組み込まれているもの
プログラムが組み込まれているものとは、例えば、企業内ネットワークにアクセスできる、検索機能を有する、オンラインショッピングができるなどの高度な機能をホームページに組み入れているものです。
これらのホームページはプログラムの作成が必要となります。プログラムの作成費用は無形固定資産(ソフトウェア)の取得として資産計上し、耐用年数5年で償却することになります。
ホームページを制作した場合、費用を外注費・広告宣伝費などとし、全額費用計上してしまうケースが見受けられます。まずは、資産計上するプログラム作成部分がないか注意する必要があります。 -
2010年9月10日
エコカー補助金を受けた場合の処理方法
環境対応車への買い替えを促進するため導入されたエコカー補助金。これを機に、補助金を利用して車両の入れ替えを実施した企業もあるでしょう。そこで、補助金を受けた場合の取扱いについて確認しておきましょう。
企業が補助金を受けた場合、2つの処理方法があります。
- 補助金の額を収益計上する方法
- 補助金の額を車両の取得価額から減額する方法(いわゆる圧縮記帳)
1.の方法は、簡便的な処理となります。収益計上するため、税は受けた補助金に対し一時に課されます。
2.の方法は、多少煩雑な処理となります。補助金の額は収益に計上し、同時に車両の取得価額を補助金の額だけ費用で減額します。
次期以降は、取得価額が減額されているため、毎期の減価償却費が小さくなり、その分、所得が増加します。結果、税は一時に課されるのではなく、車両の耐用年数にわたり「課税の繰延べ」が図られます。いずれの方法を選択するかは他の所得の状況との兼ね合いで、決定するのがよいでしょう。
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2010年9月10日
グループ法人税制
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2010年8月10日
会社清算時の課税の変更
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2010年8月10日
中古の固定資産を購入した場合の耐用年数の決め方
経費削減などの理由により、新品ではなく中古の固定資産を購入することがあります。中古の固定資産を購入した場合、税務上、減価償却を行う際の耐用年数の決定について注意が必要です。
中古の固定資産を取得して事業の用に供した場合は、単純に法定耐用年数を使用するのではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数をもって耐用年数とします。
但し、見積もりのための必要資料がなかったり、耐用年数の見積もりに多額の費用がかかる等見積もりが困難な場合は、以下の算式で計算した耐用年数を使用することも認められます。- 法定耐用年数の全部を経過した資産を購入した場合
その法定耐用年数の20%に相当する年数 - 法定耐用年数の一部を経過した資産を購入した場合
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%を加えた年数
※計算した年数に1年未満の端数が生じた場合は端数切り捨て。
※計算した年数が2年に満たない場合には、2年とする。 - 法定耐用年数の全部を経過した資産を購入した場合
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2010年8月10日
法人税法上の役員について
一般に役員とは、「取締役」など会社法等で定められ商業登記簿に登記されている者をいいます。しかし、法人税では、このように登記されている役員以外でも役員とみなされる「みなし役員」というものがあります。
みなし役員とは、次の要件に該当する者をいい、他の役員同様、役員給与に関する制限を受けることになります。
- 法人の使用人以外の者で取締役や監査役、理事、監事ではないが、その地位や職務等から他の役員と同様、実質的に法人の経営に従事していると認められる者
- 同族会社の使用人のうち、株式の持株割合が一定の要件に該当する特定株主等であり、かつ、法人の経営に従事していると認められる者
「経営に従事している」とは、法人の主要な業務執行の意思決定に参画することをいいます。例えば、経営方針の決定、従業員の採用・給与の額の決定、取引先の選定や契約等に関する決定、売上・仕入の価格決定、などが該当します。
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2010年7月12日
資本剰余金を原資とする配当の取扱い
株式投資の目的のひとつに『配当』の受け取りがありますが、最近では資本剰余金を原資として配当を行う法人も少なくありません。
利益剰余金を原資とする配当は、株主への利益の還元を意味するのに対し、資本剰余金を原資とする配当は、出資された資本の払戻しを意味します。配当を受け取る場合の処理ですが、配当の原資が利益剰余金か資本剰余金かにより税務上の取扱いが異なるため注意が必要です。
- 利益剰余金を原資とする場合
全額を配当金額として処理
- 資本剰余金を原資とする場合
一部を配当金額、一部を株式の譲渡として処理
(配当部分と株式譲渡部分の割合は配当を行う法人から通知されます。)
配当を受ける法人では、配当金額として処理される部分は受取配当の益金不算入の規定が適用できます。投資先からの配当があった場合には、計算書等を十分確認するようにしてください。
- 利益剰余金を原資とする場合
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2010年7月12日
「資産除去債務に関する会計基準」導入時の税務上の取扱い
日本の会計基準を国際会計基準に近づけようとする取り組みの一環として、2010(平成22)年4月1日以後開始する事業年度から「資産除去債務に関する会計基準」が適用されます。
この会計基準の適用を受けると、「法令や契約で要求される有形固定資産の除去時の費用を債務として計上し、当該費用相当額を有形固定資産の取得価額に上乗せし、減価償却を通じて費用化する会計処理」が要求されますが、ここで気をつけたいのが税務上の取扱いです。
資産除去債務に関する会計基準の導入時に起票される会計仕訳は、次の通りです。
(借方)取得価額 ××× / (貸方)資産除去債務 ×××まず、取得価額についてですが、税務上、購入代価に事業供用に直接要した付随費用を加算した金額をもって資産計上するものと定められています。
この会計基準によって計上される取得価額は、購入代価でも事業供用に直接要した付随費用でもありません。そのため、税務上の資産とは認めらず、減算調整が必要となります。
また、これに伴い、資産計上された除去費用相当額に対応する減価償却費について加算調整が必要となります。一方、資産除去債務については、税務上、債務確定基準のもと、債務として確定したものに限ってその計上が認められています。
この会計基準によって計上される債務は、将来発生すると見込まれる費用の見積額であり、その支出金額や支出時期は確定したものではありません。そのため、税務上の債務とは認められず加算調整が必要となります。この会計基準の適用を受ける場合は複雑な税務処理が必要となるときがあるため、経理担当者はご注意ください。
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2010年6月16日
清算所得課税の廃止と期限切れ欠損金の利用
平成22年度税制改正で行われている企業グループにおける法人税制の見直し等に伴い、清算所得課税など資本に関する取引についての見直しも行われ、2010(平成22)年10月1日から適用されることとなりました。
清算所得課税については、残余財産確定時の残余財産価額から、会社解散時の資本金等の額および利益積立金額を控除した残額が課税対象になる「財産課税」と言われる課税制度が採用されていました。
今回の改正でこの方式が廃止され、通常の「所得課税」へと移行されます。清算事業年度に債務整理などの目的で債務免除を受けることが多々ありますが、現行制度では、残余財産が残らなければ課税の問題は考えなくてよいものとされています。
ところが、今回の改正により、債務免除益が益金の額に算入されることになったため、今後は課税の問題を考えなければならなくなります。なお、この移行にあわせて、清算事業年度各期末において残余財産がないと見込まれるときには、期限が切れた欠損金額を損金に算入するという措置も講じられます。そのため、解散決議後に債務免除益や資産の譲渡益などが生じる場合でも、税負担が生じないことがありますので、事前の確認が重要です。
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2010年6月16日
外国人雇用のポイント
昨今、国内の小売店等で外国人の方が働いているのをよく見かけるようになりましたが、外国人労働者を雇用し、給与を支給する場合の課税関係はどのようになるのでしょうか。
外国人労働者に給与を支給する場合、その労働者が居住者であるか非居住者であるかによって、源泉徴収の方法が異なります。
居住者とは、原則として次の1.又は2.のいずれかに該当する者をいいます。- 国内に住所を有する者
- 国内に現在まで1年以上の居所を有する者
居住者に該当する場合には、通常の日本人労働者と同様に所得税の源泉徴収が行われます。それに対して、非居住者に該当する場合には、給与の金額から原則として20%の税率による源泉分離課税が行われます。
なお、外国人の雇用に際しては、不法就労等に留意する必要があります。パスポートや外国人登録証明書等により「在留資格」「在留期間」を確認し、「在留資格」については、就労活動が認められる資格かどうか確認することが重要です。 -
2010年6月16日
中小法人の優遇税制見直し
平成22年度税制改正で資本金1億円以下の中小法人の優遇税制が見直されます。
今後は、資本金5億円以上の親会社の100%子会社である法人については、当該法人の資本金が1億円以下であったとしても、以下の優遇税制が受けられなくなります。
- 軽減税率
- 貸倒引当金の法定繰入率
- 欠損金の繰戻し還付
- 留保金課税の不適用
- 交際費等の損金算入の特例制度
親会社に大法人が存在する場合には、通常の中小法人と違い、資金調達能力に政策的な配慮の必要性が乏しい、ということが改正の大きな理由のようです。
なお、この改正は、2010(平成22)年4月1日以降開始される事業年度から適用されます。 -
2010年6月16日
海外への事業展開と税金の関係
日本の企業が海外進出して事業を展開する場合、その進出形態は、1.駐在員事務所、2.海外支店、3.海外子会社(現地法人)の3つに分けることができます。
- 駐在員事務所
駐在員事務所が行うことのできる事業内容は、主に情報収集や広報活動などに限られています。現地では売上が発生せず、費用も日本本社が負担するため、事務所が所在する国では法人税を課税されません。
- 海外支店
海外支店は事務所や工場などの施設を現地に設置し運営していくものであり、その事業内容に制約はありません。駐在員事務所との違いは、支店にて独自に損益を計算し、稼得した所得は支店所在地の国で課税されるという点です。
あくまでも日本法人の「支店」という位置づけであるため、日本においても、本店と支店の損益が合算された上で課税される点に注意が必要です。
なお、現地で納付した法人税は、「外国税額控除」の適用により一定額を日本の法人税から控除することが出来ます。
- 海外子会社(現地法人)
海外子会社の運営、事業内容は海外支店と同様ですが、子会社の場合には設立から事業展開に到るまで、全て現地の法律が適用されます。
日本においては、海外子会社の所得に対して課税することはありません。一定の要件を満たす子会社が日本の親会社に配当をする場合には、「外国子会社配当益金不算入制度」の適用を受けることもできます。
なお、タックスヘイブン税制や移転価格税制についても確認が必要です。
海外進出する場合には、その進出形態と両国の税務上の取り扱いについて、それぞれの国の専門家に相談することをお勧めいたします。
- 駐在員事務所
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2010年6月10日
経営不振の子会社・関連会社の支援を行う場合
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2010年5月20日
出向者給与の取扱い
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2010年5月10日
役員・従業員を被保険者とする保険の保険料の取り扱い
法人が役員や従業員を被保険者として保険に加入して支払う保険料は、保険の種類や保険金の受取人によって取り扱いが異なります。
今回は、養老保険と定期保険について税務上の取扱いを解説します。養老保険
- 死亡保険金・満期保険金ともに受取人が法人の場合
保険料は全額、資産として積み立てられます。 - 死亡保険金・満期保険金ともに受取人が被保険者または遺族の場合
保険料は、被保険者に対する給与となります。 - 死亡保険金の受取人は遺族、満期保険金の受取人は法人の場合
保険料の1/2は資産として積立て、1/2は福利厚生費などとして損金となります。
※役員・従業員の全員が加入することが原則であるため、役員又は特定の使用人のみを被保険者にする場合は、保険料の1/2は、被保険者に対する給与となります。ただし、全員が加入している場合であっても、その法人の役員・従業員の大部分が同族関係者である場合には、同族関係者分の保険料の1/2は被保険者に対する給与となるため、注意が必要です。
定期保険(長期平準定期保険、逓増定期保険に該当する場合を除く。)
- 保険金の受取人が法人の場合
保険料は、支払保険料として期間の経過に応じて損金となります。 - 保険金の受取人が遺族の場合
保険料は、福利厚生費として期間の経過に応じて損金となります。
ただし、役員・従業員の全員が加入することが原則であり、役員又は特定の使用人のみを被保険者にする場合は、その保険料は被保険者に対する給与となります。
※長期平準定期保険、逓増定期保険に該当する場合、保険料には、年齢が高くなり割高になる後半の保険料に備え、前払分が含まれていると考えます。そのため、支払保険料の全額は損金にならない取扱いとなります。
保険料が被保険者に対する給与となる場合、通常の給与と同様、源泉徴収を行わなければなりません。
また、法人が保険料を一時払いしたときなどは、被保険者に対する賞与となります。この場合、被保険者が役員のときは、定期同額給与に該当せず損金不算入となりますので、注意が必要です。 - 死亡保険金・満期保険金ともに受取人が法人の場合
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2010年5月10日
合併を経た場合の役員退職金通算支給の可否
合併により、被合併法人の役員であった者が合併法人の役員に就任した場合、その者が合併法人を退職する際に支払われる退職金の算定において、合併前後の勤続期間を通算することはできるのでしょうか。
本来、法人の役員はそれぞれの株主と別個の委任関係にあるため、法人間で勤続期間を通算して退職金を算定することはできないと考えるのが通常です。
しかし、税務上の取扱いでは、被合併法人の役員に支給する退職金については、未払であってもその損金性を認めており、合併法人は、被合併法人の役員でだった者に対してその勤続期間等に応じた退職金を負担するのが適当とされています。では、被合併法人の役員が退職金の支給を受けずに合併法人の役員に就任した場合はどうでしょうか。
この場合には、合併承認総会等で退職金を通算支給することについて決議されていること等相当の理由があれば、被合併法人での勤続期間と合併後の勤続期間を通算して役員退職金を算定することが可能となります。
これは、合併によって被合併法人の資産・負債が合併法人に引き継がれ、また、合併の性質上、実態としては法人格が合併後も継続しており、退職金の引継ぎがあったと考えられるためです。 -
2010年5月10日
1人オーナー会社課税制度の廃止
特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度(いわゆる「1人オーナー会社課税制度」)が、2010(平成22)年4月1日以後に終了する事業年度から廃止されます。
役員給与は、法人段階で損金算入され、さらに個人段階でも給与所得控除の対象となります。同族会社の役員の場合には、自らの給与を決めることができるため、この「二重控除」を通じて税負担の調整を図ることが可能であり、個人事業主との間で課税の不均衡が生じていました。
この制度は、このような「二重控除」の問題への対処として、平成18年度税制改正で創設されたものでしたが、一方で、この制度が「二重控除」を是正する手法として適当なのかといった批判も相次いでいました。
そこで、平成22年度税制改正では、この制度を一旦廃止し、「給与所得控除を含めた所得税のあり方について議論をしていく中で、個人事業主との課税の不均衡を是正し、「二重控除」の問題を解消するための抜本的措置を平成23年度税制改正で講じる(税制改正大綱より)」こととなりました。
平成23年度の税制改正では、この部分がどのように改正されるのか注目しておきたいところです。
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2010年4月9日
イベントコンパニオンに対する報酬の取扱い
自社の商品やサービスのセールスプロモーションのため、イベントを開催することがあるかと思います。その際、紹介所にイベントコンパニオンの紹介を依頼することもありますが、その際コンパニオンに支払う報酬は源泉徴収すべきでしょうか。
コンパニオンに対する報酬は、飲食を行う場所において行われるパーティーなどで、専ら客に対して接待等を行う場合に、源泉徴収が必要となります。
そのため、展示会やイベントなどで展示品の横に立ち、展示品の説明を行ったり、イベントの司会進行等を行う場合には、源泉徴収は要しません。なお、コンパニオンが派遣会社から派遣されている場合は、派遣会社との契約にもとづき、派遣会社に派遣料を支払うことになりますので、源泉徴収は要しません。
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2010年4月9日
印紙税における課税文書の判定の留意点
会社では、事業活動に伴って多種多様な契約書を締結しますが、契約書等の中には印紙税が課税されるものがあるので注意が必要です。作成した契約書等について、印紙税が課税されるかどうか判断する際、その判断に迷うことも多いのではないでしょうか。
印紙税法では、印紙税が課税される文書を課税物件表において第1号から第20号まで分類し、それぞれ区分された号ごとに課税標準及び税額等が規定されています。
従って、課税物件表に掲げられていない契約書等については、印紙税は課税されません。ここで留意したいポイントは、作成した契約書等が課税物件表に掲げられている課税文書に該当するかどうか、契約書等に記載されている個々の内容に基づいて判断をする必要があるということです。
例えば、業務委託契約書という名称で作成された文書について、その契約内容が委任であれば印紙税は課税されませんが、その契約内容が請負(仕事の完成を目的とするもの)であれば課税物件表の第2号文書(請負に関する契約書)に該当するため、印紙税が課税されます。
印紙税の課税判断においては、契約書等の名称のみで判断せず、記載されている事項の一つ一つについて検討する必要がありますので注意してください。
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2010年4月9日
従業員が海外に転勤した場合の源泉徴収
販路拡大などのため、従業員を海外の支店に勤務させている会社も多いでしょう。それでは、海外に勤務する従業員に給与や賞与を支払う際の源泉徴収はどのように行うべきでしょうか。
源泉徴収の仕方については、海外に転勤する前と後に分けて考えます。
まず、海外に転勤する前に支払われた給与や賞与については、海外に転勤する日までに年末調整を行います。社会保険料控除や生命保険料控除は、海外に転勤する日までに支払われたものが対象になり、扶養控除や配偶者控除などの人的控除は、出国のときの現況により判定します。
次に、海外に転勤した後に支払われた給与や賞与についてですが、その従業員は非居住者として扱われますので、基本的には日本の所得税はかかりません。しかし、海外に転勤した後に支払われる賞与の計算期間内に日本で勤務した期間が含まれている場合には、源泉徴収が必要となります。この場合、日本で勤務した期間に対応する金額について、20%の税率で源泉徴収を行わなければなりません。
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2010年4月9日
中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例
今年の3月末で期限を迎える『中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例』制度が、平成22年度税制改正により2年間延長されることになりました。
この制度は、青色申告法人である中小企業者等が取得価額30万円未満の事業用資産を購入した場合に、その事業年度における取得価額の支出合計300万円までを限度に損金とすることが認められる制度です。
減価償却資産で取得価額が少額なものについては、上記のほかにも、取得価額が10万円未満の場合の少額減価償却資産の制度と、取得価額が10万円以上20万円未満の一括償却資産制度があり、それぞれ以下のような特徴があります。
少額減価償却資産
対象企業 : 全て
対象資産 : 10万円未満の減価償却資産など
償却方法 : 即時償却
償却資産税の課税 : 課税なし一括償却資産
対象企業 : 全て
対象資産 : 10万円以上20万円未満の減価償却資産
償却方法 : 3年均等償却
償却資産税の課税 : 課税なし中小企業者等の少額減価償却資産
対象企業 : 青色申告法人である中小企業者等
対象資産 : 30万円未満の減価償却資産
償却方法 : 即時償却
償却資産税の課税 : 課税ありこれらの制度は資産ごとの選択が可能なため、自社の状況や償却資産税の負担額などを十分に考慮して選択することをお勧めします。
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2010年4月9日
決算書からわかる経営分析
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2010年3月10日
書画骨とう等を資産計上するケース
応接室等の装飾のために高価な絵画や壷を購入することがありますが、資産と費用のどちらで計上すべきか判断に迷う場合も多いでしょう。
税務上は、購入した絵画等が「書画骨とう」に該当するか否かで取扱いが異なります。書画骨とうに該当すると、時の経過によってもその価値は減少しないもの(非減価償却資産)として資産計上し、売却時までその購入費用を費用化することができません。
書画骨とう等であるかどうかは、(1)古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し代替性のないものかどうか、(2)美術関係の年鑑等に登録されている作者の制作した書画、彫刻、工芸品などに該当するかを基準にして判断します。
実際には、この判断基準に照らして書画骨とう等に該当するかどうか、判断の難しいものも少なくありません。その場合は、形式的に1点あたりの購入費用が20万円未満のものは、減価償却資産として扱うことができます。
また、ピカソなどの著名な画家の作品であっても、複製画のように単に装飾目的にのみ使用されるものは、時の経過により価値が減少するものと考えられ、少額な場合を除き減価償却資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却により費用化することになります。購入した絵画等が減価償却できるものなのかどうか、取扱いの違いにご注意ください。
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2010年3月10日
産業医に支払う報酬の取扱い
常時50人以上の労働者を使用する事業者には、労働安全衛生法第13条及び同法施行令第5条により、産業医を選任する義務が課せられています。
その産業医に支払う報酬ですが、(1)産業医が医療法人の勤務医の場合と、(2)産業医が個人事業者である医師の場合とで、税務上の取扱いに違いがあります。- 消費税
- 医療法人の勤務医の場合
報酬は医療法人にとっての医業収入であるため、消費税の課税対象となります。 - 個人事業者である医師の場合
報酬は原則として給与所得に該当し、その個人医師に対する給与扱いとなるため、消費税は課税対象外です。
- 医療法人の勤務医の場合
- 源泉所得税
- 医療法人の勤務医の場合
法人への支払いであるため、源泉徴収は行いません。 - 個人事業者である医師の場合
給与として源泉徴収を行います。
- 医療法人の勤務医の場合
- 外形標準課税
- 医療法人の勤務医の場合
課税対象外となります。 - 個人事業者である医師の場合
給与に該当するため、報酬給与額に含めます。
- 医療法人の勤務医の場合
産業医に対して支払う報酬は福利厚生費などの科目で処理される場合が多く、特に消費税、源泉所得税の取扱いにミスが生じやすいので注意が必要です。
- 消費税
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2010年3月10日
配当免税制度導入に伴う直接外国税額控除
3月を間近に控え、本決算に向けて準備に取り掛かっている法人も多いことと思います。
海外に子会社を有する法人には、平成21年度税制改正により導入された配当免税制度(受取配当の益金不算入制度)が適用されていますが、本制度の適用に伴う直接外国税額控除の取り扱いについても充分に留意する必要があります。平成21年度税制改正によって、配当免税制度の導入され、内国法人が外国子会社から受ける配当等でその配当等に対する外国法人税については、外国税額控除が受けられなくなりました。
この規定は、2009(平成21)年4月1日以後開始事業年度(以下、「適用開始事業年度」という。)において納付する外国法人税について適用されます。ここで問題となるのは、外国子会社が、配当免税制度適用前の配当等に対して課された外国法人税を2009(平成21)年4月1日以後に納付した場合、外国税額控除適用はどうなるのかです。
例えば、内国親会社(3月決算法人)の有する外国子会社(12月決算法人で、海外子会社合算税制の対象となる特定外国子会社等には該当しない。)が、2008(平成20)年12月期の配当決議を2009(平成21)年3月中に行い、その配当の支払いが2009(平成21)年6月に行われ、外国源泉税が徴収されているケースです。
上記の場合には、内国親会社が受ける配当については、適用開始事業年度前に係る配当に該当することから、配当免税制度の適用はなく、益金算入されることになります。
その関係上、2009(平成21)年6月に納付される外国法人税については、外国税額控除の適用対象となるので、失念しないよう注意が必要です。
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2010年2月10日
「エコ通勤」導入時に注意したい通勤手当の税務処理
2009(平成21)年6月、国交省などの協議会はCO2削減目標達成に向けて、「エコ通勤優良事業所認定制度」を創設、スタートしました。
この制度は、通勤手段をマイカーから公共交通・自転車・徒歩に切り替えるなど、主体的・積極的に「エコ通勤」に取組む企業を認定し、その事例を周知してエコ通勤の普及促進を図ろうというものです。
認定されれば国交省ホームページ等で企業名や取組みが公表され、指定のロゴマークの使用が許可されます。企業にとっては環境対策に取り組む好機会であり、従業員の健康増進や企業イメージの向上等にもつながることから注目したい制度の1つです。このエコ通勤の導入にあたり、マイカーから自転車・徒歩に通勤手段を変更して通勤手当を支給する場合の税務上の注意点は以下のとおりです。
自転車通勤に切り替える場合
マイカー利用の場合と非課税限度額は変わりません。2km未満は全額課税、2km以上では下記のとおり一定額までが非課税となります。限度額を超える金額は給与として課税されます。
- 2km以上10km未満…4,100円まで
- 10km以上15km未満…6,500円まで
- 15km以上25km未満…11,300円まで
- 25km以上35km未満…16,100円まで
- 35km以上45km未満…20,900円まで
- 45km以上…24,500円まで
徒歩通勤に切り替える場合
エコ通勤を推奨する目的でも、徒歩通勤者への通勤手当は、全額が給与所得として課税されます。マイカーから徒歩に切り替える従業員には事前に説明することが望まれます。
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2010年2月10日
グループ法人税制・連結納税制度の改正
平成22年度の税制改正大綱において法人課税で目玉となるものに、グループ法人税制の整備が挙げられます。
グループ法人税制整備する趣旨は、法人においてグループ経営が進展・加速している現状を受け、グループの要素を反映した課税の実現を図ることが適当である、というものです。
この税制では、既にある連結納税制度とは別に、単体納税の法人についても、100%グループ内であればその一体性に着目した措置がとられることになりました。これが、譲渡損益の繰延と寄付金の取扱いに代表される措置です。
一方、既に制度化されている連結納税制度についても、大きな改正項目があります。
「子会社欠損金の連結納税採用時の一部引継ぎが可能」になった点です。
改正前は、子会社欠損金は連結納税採用時に全額切り捨てられることになっており、連結納税採用に踏み切れない法人がありました。この改正によって連結納税は、そのような法人にとっても適用を検討するに値するものになるでしょう。
ただし、欠損金額について、「個別所得金額を限度として・・・繰越控除の対象に追加します。」と大綱に記載されているため、引継ぐことができる限度額について、十分に確認することが重要です。
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2010年1月27日
平成22年度税制改正によるタックスヘイブン税制の変更点
タックスヘイブン税制は、税負担の著しく低い国・地域を利用した租税回避行為に対処するための税制です。しかし、日本企業がその事業をグローバルに展開する際、健全な経済活動を行っているにもかかわらず同税制が適用されるケースがあります。昨年12月22日に平成22年度税制改正大綱が閣議決定されましたが、今回の税制改正では、このような経緯を踏まえ、日本企業による更なる海外市場の開拓を促すため改善が図られることとなりました。
改正1
タックスヘイブン税制の対象の判定基準が改正されます。タックスヘイブン税制の対象の判定(下記<注1>参照)のうち3.において、外国法人の租税負担割合が25%以下であること、というトリガー税率が存在しますが、改正後は、そのトリガー税率が20%となります。また、特定外国子会社等の判定は持株割合が5%以上である内国法人が対象ですが、改正後は、10%以上である内国法人が対象となります。
<注1>
タックスヘイブン税制は、内国法人あるいは居住者にとって、次の条件を満たす外国法人(税法上、「特定外国子会社等」という。)が対象とされる。- 日本に所在する内国法人や居住者の持分割合の合計が50%超である。(税法上、「外国関係会社」という。)
- その内国法人等の持分割合が5%以上である。
- その外国関係会社の租税負担割合が25%以下である。
改正2
タックスヘイブン税制の適用除外基準(4つの基準があり、全てを満たした場合には、特定外国子会社等の所得を合算しないことができる。)の判定において、事業統括会社が持株会社であることによって事業基準(主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと)を満たさない問題と、地域物流統括会社は関係会社との取引であることによって非関連者基準(非関連者との取引割合が50%超であること)を満たすことができないという問題について、所要の措置が図られます。
このように、今回の税制改正では、タックスヘイブン税制の対象条件が緩和され、さらに適用除外要件が拡充されますが、その一方、
改正3
配当、利子、ロイヤルティなどといった資産性所得に対しては、たとえ適用除外要件を満たす特定外国子会社等であっても、合算課税の対象に含まれることになりますので、注意が必要です。
詳細は、実際に法令が成立した際にご確認ください。
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2010年1月13日
プライバシーマーク制度導入に係る諸費用の税務上の取扱い
最近、顧客情報が会社外に漏洩するという事件をよく耳にします。会社の情報管理に対するモラルが問われる今だからこそ、注目されているのがプライバシーマーク制度です。
この制度は、財団法人日本情報処理開発協会が、個人情報を適切に管理している会社を認定し、プライバシーマークの使用を許諾する制度ですが、この制度の認定を受けるまでには申請料、審査料等を、認定されるとマーク使用料を支払う必要があります。
そこで問題となるのがこれらの申請料等の税務上の取扱いですが、申請料はその支出日の、審査料等はその請求書を受領した日の属する事業年度の損金の額に算入して差し支えないようです。
また、使用料については、法人税法施行令14-1-6ホ(その他自己が便益を受けるための費用)に規定する繰延資産に該当し、契約期間にわたって償却することになります。但し、今現在の使用料は税込200,000円が上限であるため、税抜経理方式を採用している場合には、200,000円未満となり、支出日の属する事業年度の損金の額に算入することになるでしょう。
なお、消費税については税込経理方式を採用している場合で、上限額である200,000円の使用料を支払うときは、この規定の適用対象外となり、契約期間にわたって償却することとなりますので、注意が必要です。
税務会計