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2009年12月23日
特別償却と税額控除ではどちらが有利か
新品の機械装置など一定の設備投資をした場合、その設備について税務上、特別償却又は税額控除のどちらかの適用を受けられることがあります。
特別償却は、通常の減価償却限度額とは別枠で特別に償却限度額が設けられます。その為、通常より多額の減価償却費を計上することが可能となり、その年度において所得を減少させる効果があります。ただし、特別償却は、早期に多額の償却額を計上できるものですが、最終的な償却額が変わるわけではなく、税額そのものを減少させるものではありません。あくまで課税を繰延べるものといえるでしょう。
一方、税額控除制度は、取得価額の何%相当という額をその年度の法人税額から直接控除し、税額を減少させる制度です。
一般的に、税額控除を選択することは減価償却費を通常通り計上した上に、更に税額を減らす効果が追加的にもたらされることになるため、有利な選択といえるでしょう。
ただし、税額控除は繰越せる年数が短く設定されているため、赤字により所得が出ない場合には、税額控除を選択しても控除する税額がないまま切り捨てられてしまうことがあります。このような場合には、特別償却を選定しておいたほうが、トータルで税額を押さえられる結果になります。特別償却と税額控除。どちらが有利になるのか、十分にシュミレーションしておくことが肝要です。
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2009年12月16日
年俸制を導入する際の注意点
年俸制を導入するにあたって、通勤手当をはじめ各種手当の支給制度を廃止する会社もあります。
このような会社が、通勤費を負担した場合に、その年間分の給与総額からその負担した通勤費用を控除して年末調整をしてもいいのか判断がつきにくい部分です。
所得税において、通勤費で非課税所得とされるのは、「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるためのものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当・・・・」と規定されています。
つまり、給与所得者が通常の給与にプラスして、さらに、通勤手当の支給を受ける場合に限り、通勤手当の非課税の適用を受けることができるということです。
したがって、会社が、交通機関等からの証明書などで明確に通勤費を支出していたとしても、その通勤費相当額は「通常の給与に加算して受ける通勤手当」には該当しないため、所得税の非課税とすることができません。
年俸制を導入する際には、通勤手当の支給について、十分に検討することが必要です。
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2009年12月7日
日本版LLPについて
近年、事業活動を行う場合に、株式会社以外にLLPという枠組みを活用するケースが増加しています。
LLP(Limited Liabillty Partnership_有限責任事業組合)は、民法組合の特例として2005(平成17)年8月に施行されたLLP法により定められた事業体で、下記の3つの特徴を有しています。- 構成員全員が有限責任
民法上組合は出資者全員が無限責任となりますが、特例として出資者(構成員)全員が有限責任となります。 - 構成員課税(パス・スルー課税)
事業体には課税されず、構成員に直接課税されます。また欠損となっても原則的にパス・スルーされる為構成員の他の所得との通算が可能です。 - 内部自治制度
出資比率と異なる損益分配を行うことが可能です。また取締役会等の監視機関の設置の義務付けはなく、構成員が組織内部の組織内部の取決めを自由に行うことができます。
株式会社の場合、企業の所得に対する課税と株主の受取配当に対する二段階課税により、結果として出資者の手取額が少なくなりますが、LLPは構成員への利益配分時に構成員の申告時の所得として直接課税されるので二段階課税が発生しません。
また損失が出た場合一定額の範囲内で構成員の他の所得と通算できる為タックス・メリットを享受できる場合があります。LLPに係る税務申告は各構成員が損益を取込んだ事業年度毎に申告します。また計算期間終了の日の属する年の翌年1月末までに所得に関する計算書を税務署に届け出る必要があります。
損益の取込方法は「総額法・折衷法・純額法」の3つがありますが、「純額方式」で取込んだ場合は受取配当等、所得税額控除、各種引当金等の優遇措置の適用はできないので注意が必要です。 - 構成員全員が有限責任
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2009年12月2日
売買処理を行った場合のリース取引に係る消費税
2008(平成20)年4月以降に締結した所有権移転外ファイナンス・リース取引については売買処理が原則となりました。そのため、賃借人は、契約時に利息相当額を含むリース料総額分の消費税額を、課税仕入れ等に係る消費税額として控除することが可能となりました。
ただし、会計上、利息法により売買処理を行っている場合は注意が必要です。
利息法とはリース料総額を元本部分と利息部分とに区分して計上する方法です。
具体的には、元本相当額をリース取引開始時に『リース資産』及び『リース債務』に計上し、利息相当額を毎月のリース料支払い時に『支払利息』として計上する方法です。この場合の消費税の取扱いは以下の通りとなります。
- リース契約において利息相当額が明示されている場合(リース契約時に利息相当額が明示された計算書の交付を受けている場合を含む。)
⇒ 元本部分のみ課税仕入、利息相当額は非課税仕入 - リース契約において利息相当額が明示されていない場合
⇒ 利息相当額を含むリース料総額が課税仕入
契約書に利息相当額が明示されていない場合は、実務上は、後日リース会社から契約書とは別に利息計算のための資料の交付を受けるケースが多いようです。
このケースにおいて、その資料は賃借人が利息法による処理を行うための情報提供を受けたに過ぎず、契約時点において利息相当額が明示されたことになりません。従って、利息部分は非課税仕入とならず、原則どおり契約時にリース料総額に係る消費税の全額を控除することになります。 - リース契約において利息相当額が明示されている場合(リース契約時に利息相当額が明示された計算書の交付を受けている場合を含む。)
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2009年11月25日
ポイント引当金の法人税の取り扱い
昨今、消費者の購買意欲を高めるために商品購入時に「ポイント」を付与する企業が増加してきています。消費者は、付与された「ポイント」を購入金額に充当し、実質的な値引きを受けることなどで利益を享受しています。
この「ポイント」について、以下のような会計処理を行う企業が多いのではないでしょうか。
- 付与時
ポイント引当金繰入額 ××× / ポイント引当金 ××× - ポイント使用時
ポイント引当金 ××× / 売上 ×××
ここで注意したいのが、「ポイント」が税務上損金となる時期です。上記のように、会計上は「ポイント」付与時に費用として処理しますが、税務上は、原則として、「ポイント」を使用時に損金となります。
税法において、販売費等について「債務確定主義」が採用されているからです。この「債務確定主義」に照らして考えると、「ポイント」を付与したとしても、使用されるか否かは不確定であること、使用されたとしても全ての「ポイント」が使用されるかどうか不明であること、「ポイント」に有効期限があること等様々な観点から債務が確定しているとは言い難いため、原則として「ポイント」付与時に損金とすることは認められないのです。
「ポイント」制度を導入している企業は、「ポイント」部分の損金計上時期には注意が必要です。
- 付与時
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2009年11月18日
税金に関する国際間のルール「租税条約」
租税条約とは、国際間の租税に関する課税ルールを定めている条約であり、その主な目的は次の通りです。
- 国際間の二重課税の排除
- 国際的な経済活動の促進
- 国際的な脱税や租税回避を防止する観点からの税務当局間の国際協力
租税条約は二国間で締結されるのが一般的です。条約を締結する一方の国の居住者(法人等も含まれる)が、もう一方の他国で所得を稼得する場合の課税方法等を定めた両国間の合意ということになります。
なお、日本は45の租税条約を締結しており、56の国(旧ソ連との条約を数カ国が継承している)との間で適用されています。(2009(平成21)年10月現在)日本が締結する租税条約の内容は、2004(平成16)年に発効した日米租税条約を機に国際的な経済活動の促進を重視する流れになっており、条約相手国への投資を促すために、その相手国で課される源泉税を減免する規定が多く設けられています。
一方で、租税条約の濫用を防ぐために、特典制限条項(条約の特典の恩恵を受けられる対象を、一定の要件を満たす適格者のみに制限する条項)を導入しているのが特徴です。海外進出を考える企業にとっては、どのような進出形態をとるかで課税関係が変わるため、日本と進出先との間の租税条約の内容を理解しておくことが重要です。
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2009年11月11日
使用人から執行役員に就任した場合の退職金
企業によっては使用人が執行役員となる際に、使用人から役員になる場合と同様、使用人であった期間の退職金を支払うケースがあります。
執行役員は、会社法上の取締役ではなく、あくまでも使用人であることから、使用人から執行役員へ就任した場合に支給した退職金が賞与と見做されない為に以下の要件を満たす必要があります。- 執行役員との契約は、委任契約又はこれに類するもの(雇用契約又はこれに類するものは含まない。)であり、かつ、執行役員退任後の使用人としての再雇用が保障されているものではないこと
- 執行役員に対する報酬、福利厚生、服務規律等は役員に準じたものであり、執行役員は、その任務に反する行為又は執行役員に関する規程に反する行為により使用者に生じた損害について賠償する責任を負うこと
つまり、職務の性質やその内容、労働条件などに重大な変動があり、使用人時代からの延長勤務ではないという特別な事実関係がある場合のみ、退職金として認められることになります。
<参考>
国税庁ホームページ(《使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金》の取扱いについて)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/071205/00.htm -
2009年11月4日
健康診断費用の取扱い
企業は従業員の健康管理のために、健康診断を実施する義務があります。企業が負担した健康診断費用は、一般的には福利厚生費として損金算入が可能ですが、給与や役員給与に該当する場合もあります。
健康診断のような従業員の健康管理のために支出される費用は、次の条件で実施している場合は給与課税されません。
- 役員等、特定の者のみが対象ではないこと
- 通常必要であると認められる範囲内であること
- 費用を企業から診療機関に直接支払っていること
なお、通常の健康診断とは別に、一定年齢以上の希望者に対して人間ドックを実施する場合でも、一定年齢以上の全ての従業員が対象となれば、1.の要件を満たすことになります。一定年齢以上の役職者に限定して等の場合は、この条件を満たさず、該当者に対する給与となります。
該当者が役員であれば、役員給与となりますが、定期同額給与、事前確定届出給与のいずれにも該当しないため、損金不算入となります。また、従業員、役員を問わず、給与課税となった場合には、源泉所得税の納付漏れの問題も生じますので、事前に福利厚生費として損金算入が可能かを確認することが重要です。 -
2009年10月30日
更正の請求期限が過ぎた場合の救済措置
前回、「更正の請求」による過大申告等の是正の手続きを取り上げましたが、更正の請求は、原則として、法定申告期限から1年以内に限り行うことができます。
では、1年を超えた後に過大申告等であることが判明した場合は、どのようになるのでしょう。
法律上は、更正の請求期限を過ぎた後の、納税者側からの過大申告等の是正措置について、規定がありません。そのため、実務上は、税務署長に「嘆願書」を提出し、職権による更正を請い救済してもらうことになります。
嘆願書による嘆願には法律上の権利はありませんので、嘆願書は、単に税務署長に対して要望ないしは陳情を述べた書面としての位置づけでしかありません。つまり、あくまで「お願い」でしかないということです。嘆願書を提出する場合には、嘆願に至るまでの経緯の見直し、情状酌量として更正を認めてほしい理由や、更正を認めてもらえなかった場合の影響、もしくは再発防止策等、誠意ある説明を入れるとよいでしょう。
また、申告の誤りを検証しやすいよう証憑類等の資料整備を周到に行っておくと更によいでしょう。 -
2009年10月21日
更正の請求
税務においては、「修正申告」「更正の請求」という申告の誤りを是正する手続きがあります。
修正申告、更正の請求は、納税者側からの是正手続きという点で共通し、所得が過小の場合、修正申告となり、所得が過大の場合、更正の請求という手続きを行います。更正の請求は、原則として、(1)既に行った申告が法律の規定に従っていなかったこと又は計算誤りがあったために、税額が過大であったり、(2)還付金が過少であった場合等に税務署長に対しその是正を求めるための手続きです。
更正の請求ができるのは、法定申告期限から1年以内に限られています。更正の請求をするときは、その請求に係る請求前及び請求後の課税標準及び税額、その更正の請求をする理由等を記載した「更正請求書」を提出しなければなりません。
更正請求書が提出されると、税務署長がその更正の請求について調査し、更正をするべきかどうかを検討した上で、請求をした者へ結果が通知されます。なお、所得計算の特例や税額控除等、一定の申告を適用要件としているものについては、その申告をしなかったために特例措置が受けられず税額が過大になった場合でも、前述の2点の理由には該当しませんので、更正の請求は認められません。
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2009年10月14日
国内の会社から受取る配当金について
2009(平成21)年度税制改正において、「外国子会社からの配当金の益金不算入制度」が創設されたことが新聞各紙で大きく取り上げられ、企業の資本政策に大きな影響を与えています。
そもそも国内の子会社等から配当を受けた場合、どのように取扱われるのでしょうか。
現行の日本の税制は、法人は個人株主・出資者の集合体という基本的な考え方にのっとっています。つまり、法人が支払う法人税は個人株主等に対する所得税の前取りであり、個人株主等はその法人税を差引いた後の税引後利益の中から支払われる配当に対して所得税が課せられ、企業が稼いだ利益に対する課税が総合的に清算されるという仕組みになっています。
しかし法人の株主の中には個人株主だけではなく法人株主も存在することから、株主たる法人が受ける配当に対してさらに法人税を課してしまうと、同じ利益に対して2重に法人税が課されることになってしまいます。そのため法人が受ける配当については課税をしない制度が設けられています(受取配当金の益金不算入制度)。
受取配当金の益金不算入制度では、出資先の発行済み株式の25%以上を、配当の確定日以前6ヶ月以上引き続き保有している場合は、当該出資先からの配当金の全額が課税されません。それ以外の「マイナー出資」にかかる配当については、その配当金の50%が益金不算入となります。
また、配当を受ける会社において支払利息がある場合は、全体の資産のうち株式に対応する部分の支払利息を控除したものが、最終的な益金不算入額となるのでさらに注意が必要です。
具体的には下記の算式となります。
25%以上保有株式・・・ 受取配当-対応する支払利息 =益金不算入額
その他の株式 ・・・(受取配当-対応する支払利息)×50%=益金不算入額支払利息を控除する趣旨は、極端な例でいえば子会社株式の取得を全額借入金でまかなったケースを想定すると理解しやすいでしょう。この場合に支払利息を控除しないと、受け取った配当は全額課税を受けずに支払う利息だけが経費として算入され、法人を過度に優遇することになってしまいます。
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2009年10月7日
増資の税務 有利発行の場合はご注意を
IPOを目指す企業にとって、増資は重要な資金調達手段です。しかしながら、IPO前で非上場のときは市場価格がついていないため、株価の決定が難しいところです。
増資の方法には有償増資・無償増資・新株予約権の行使による増資などがあります。増資する法人にとっては、税務上、資本等取引に該当するため、いずれの方法であっても原則として課税問題は発生しません。しかし、有償増資の第三者割当増資については、株価の決定により、新株主となる増資を引き受ける個人・法人について課税問題が生じる場合があるので注意が必要です。
具体的には、時価よりも低い発行価額の場合、いわゆる有利発行が行われた場合に注意が必要です。
例えば、発行済株式数15,000株の会社が1株あたりの時価2,000円の時に、1株1,000円で10,000株を有利発行した場合、発行後の株価は、
(15,000株×2,000円+10,000株×1,000円)÷(15,000株+10,000株)=1,600円となります。
この場合、既存の株主にとっては1株の価値が2,000円から1,600円に下がったことになります。これに対して新株主は1,000円の払い込みで1,600円の価値の株を購入したことになります。このように既存株主の株式価値が新株主に移転した場合、下記の課税問題が生じます。新株主が法人の場合
新株主の受贈益に対して法人税が課税される。新株主が個人の場合
新株主の給与所得、退職所得又は一時所得として所得税が課税される。
ただし、新株主が同族会社の既存株主の親族である場合は、既存株主から新株主への贈与があったものとされ、贈与税が課税される。株式を発行する法人は、新株主に係る課税問題にも配慮しながら発行価額を検討すべきと思われます。
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2009年9月29日
ゴルフ会員権評価損の法人税法上の取扱い
企業が保有するゴルフ会員権については、取引相場が急落した場合においても、原則として税務上は評価損を計上することができません。ゴルフ会員権相場により減損処理を求める会計とは取扱いが異なるため、注意が必要です。
ゴルフ会員権の税務上の取扱いは、会員権形態別に、以下の通りです。
- 株式形態
株主会員制ゴルフ会員権は優先プレー権と株主権利を有する会員権であり税務上、非上場有価証券等として、著しい価値の低下がある等一定の場合には評価損の計上が可能です。
ただし、ゴルフ会員権相場の著しい下落をもって会員権の価値低下を判断するのではなく、ゴルフ場経営会社の決算書等を取り寄せて、その資産状態が著しく悪化しているかを検証しなければなりません。 - 預託金形態
預託金制ゴルフ会員権は優先プレー権と預託金返還請求権を有する会員権であり税務上、評価損の計上は認められていません。
一方で、退会届出の提出、預託金の一部切捨て、破産宣告等により金銭債権である預託金返還請求権の全部又は一部が顕在化した部分については、その金銭債権に対して貸倒引当金繰入及び貸倒損失の計上が可能となります。
- 株式形態
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2009年9月24日
中間申告の方法は資金繰りを考慮して
3月決算法人の中間となる9月が終わり、下半期がスタートしています。
法人税においては、中間期が終了すると2ヶ月以内に中間申告を行わなければなりません。この中間申告は、前期の実績による方法と仮決算による方法の2つが用意されており、どちらかの方法で行うことになります。
経営環境の悪化により、今期の業績が前期の業績を下回る場合、資金繰りの観点からどちらの方法で行うのか検討することが重要です。
前期実績による中間申告を行うと、前期の半分の税額を一時に申告納税する必要があります。今期の業績が前期の業績を下回ることが想定される場合、前期の半分の納税額は多額となり、一時的に資金負担が重くなります。資金繰りが苦しい場合には、仮決算を組むことによって、納税額を減らし、資金負担を軽くすることができます。
なお、確定申告における年税額が、中間納税額より小さくなる場合、中間納税額の還付がされます。その際は、還付加算金が付されて還付されます。
この還付加算金は、中間納税時から計算され、年「7.3%」と「前年11月30日において日本銀行が定める基準割引率及び基準貸付利率+4%」のいずれか低い割合(2009(平成21)年においては、4.5%)で計算されます。
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2009年9月16日
海外勤務時の税務取扱い
従業員が出張や駐在で海外に行った時に、給与から源泉徴収する所得税の取扱いの判断に迷うことがあります。その時に最も重要なポイントとなるのは、その人が日本において「居住者」になるか「非居住者」になるかの判定であり、これにより課税所得の範囲や課税方法が異なってきます。
居住者・非居住者の区分は国籍や在留資格に関係なく、住所や1年以上継続した居所が国内にあるか否かにより判定します。なお、日本の法人の役員が海外勤務中に役員報酬を得ている場合は、役員としての役務提供地を判断することが困難であるため、勤務地に関係なく日本の税金が課されます。
また、日本と租税条約を締結している国で勤務する場合には、短期滞在者免税、いわゆる「183日ルール」が適用されます。本来は日本で支払われる給与のうち、海外での勤務期間に対応する金額はその国で課税の対象となりますが、このルールにより、その国での滞在日数が183日以内であれば、これが免税となります。
この183日の算定基準となる対象期間は租税条約ごとに異なり、例えば、暦年を基準とする条約や、入国日から若しくは出国日までの12ヶ月間を基準とする条約があります。他にも、給与のすべてが現地で支払われていない等の一定の要件を満たす必要があるので、特定の国での勤務が多い従業員がいる場合は、これらの要件を満たすよう調整することで、海外での納税を避けることが可能です。
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2009年9月9日
印紙税を過誤納した場合の還付請求
印紙税の納付は、印紙税法に規定されている課税文書ごとの所定の税額の収入印紙を貼り付け、消印することによって納付するのが原則となっています。
誤って印紙税の納付の必要のない文書に誤って収入印紙を貼ったり、所定の税額を超えた収入印紙を貼った場合などは、印紙税の還付を受けることができます。
還付を受ける際には、税務署に用意されている「印紙税過誤納確認申請書」に所定の事項を記載の上、納税地を所轄する税務署長に提出します。
申請にあたっては、当該申請書の他、過誤納となった事実を証明するため、過誤納に該当する文書も併せて準備をしておく必要があります。還付請求の手数料は無料ですので、印紙税の過誤納をしてしまった場合には、還付請求を行ってみてはいかがでしょうか。
なお、収入印紙は国の各種手数料の納付にも使用されていますが、これらの納付のために誤って収入印紙を貼った場合は、印紙税の還付の対象になりませんので、ご注意ください。<参考>
国税庁ホームページ(印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/inshi/annai/23120083.htm -
2009年9月9日
株式異動は不況の今がチャンス?
リーマン・ショックの影響を受け、100年に一度の不況と騒がれていますが、これをチャンスと捉えることもできるのではないでしょうか。
日本企業の95%以上を占めると言われている非上場会社の株価算定の基となる類似業種比準価額が、昨年10月以降、一時的に下落しています。
景気が回復すれば、株価が上昇し、類似業種比準価額も上昇することになるため、類似業種比準価額の低い時期は、税負担を抑えた株式異動をすることが出来るチャンスなのです。特に、IPOを目指す経営者にとっては、上場前に株主構成の見直しをしておくことは必要不可欠ですので、今一度、自社の株価を算定し、株式異動を検討してみてはいかがでしょうか。
<参考>
国税庁ホームページ(平成21年度類似業種比準価額)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/kaisei/090806/index.htm -
2009年8月26日
社宅の貸与に伴う賃料負担
福利厚生等の一環として、会社が賃貸マンション等を借り上げ、社宅として役員又は使用人に対し貸与する場合があります。その際、役員又は使用人に現物給与として所得税を課税されないためには、一定額以上の賃貸料相当額の負担を求める必要があります。賃貸料相当額の参考として、所得税基本通達では以下のように規定されている。
- 自己所有住宅等(小規模住宅を除く)・・・以下の合計額
- その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×12/100(木造家屋以外は10/100)×1/12
- その年度の敷地の年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6/100×1/12
- 借上住宅(小規模住宅を除く)・・・所有者に支払う賃貸料の額の1/2または上記 1. のいずれか多い額
- 小規模住宅(床面積が132m2以下、木造家屋以外は99m2以下)・・・以下の合計額
- その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×2/1000
- 12円×家屋の総床面積(m2)/3.3
- その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×2.2/1000
役員または使用人が社宅の利用に際して無償または賃貸料相当額に満たない金額を負担している場合は、その賃貸料相当額または満たない金額の給与の支払があったものとして所得税が課税されます。
ただし、その社宅が豪華社宅に該当する場合には実勢価格での賃料負担が求められたり、逆に職務遂行上やむを得ない居住の場合には賃料全額が所得税法上は非課税とされるなど、個々の事情によって取扱いが異なる場合もあり、注意が必要です。
- 自己所有住宅等(小規模住宅を除く)・・・以下の合計額
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2009年8月19日
組織再編等における欠損金の留意点
税務上の青色欠損金は7年間の繰越控除が認められていますが、事業譲渡や組織再編を行う場合には欠損金が切り捨てられるケースがありますので十分に注意が必要です。具体的には以下の場合には欠損金の利用が制限されます。
- 欠損金を有する法人が以下の全ての事由に該当する場合
- 他の者による50%を超える支配関係が発生したこと
- その支配日以後5年以内に、一定の事由が生じたこと(その支配日直前に事業を営んでいない場合において、その後新規事業を開始すること等)
- 欠損金を有する法人が合併等した場合
(ただし、一定の要件を満たした場合には欠損金の利用が可能) - 欠損金を有する法人が連結納税の適用開始により連結子会社となった場合の連結子会社の欠損金
1. は休業中の欠損会社を買い取り、事業を移転した場合には過去の欠損金の利用を制限する意図で設けられた規定です。 2. も同様に、合併による欠損金の実質的な買取等の利用を防ぐため制限が設けられていますが、互いの事業に関連性がある等一定の要件を満たした場合には欠損金の利用が可能となります。 3. の連結納税の適用開始時には原則として無条件に欠損金が切り捨てられますが、現在欠損金の繰越を可能にする改正が検討されていることから、今後の動向に注目です。
1. 2. のように、組織再編等を行う場合には、要件を満たすか否かで欠損金の利用が制限されるため注意が必要です。
- 欠損金を有する法人が以下の全ての事由に該当する場合
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2009年8月12日
2009(平成21)年9月スタート「ダイレクト納付」のメリット
昨年度から、国庫金を対象とした新しい収納サービス「ダイレクト方式」を利用したリアルタイム口座振替のスキームが各官庁でスタートしているのをご存知でしょうか。2008(平成20)年10月に財務省関税局、2009(平成21)年1月に特許庁に導入され、9月からは国税庁でも電子納税の新たな納付手段としてこの「ダイレクト方式」=「ダイレクト納付」が導入されます。
現行の電子納税は、金融機関のネットバンキング契約が前提にあり、実際のPC操作もe-Taxとネットバンキング2箇所へのアクセスが必要でした。これが「ダイレクト納付」になると、文字通りワンクリックで直接納付でき、インターネットバンキングの利用手数料も不要です。
現行の電子納税にないメリットは以下のとおりです。- 納付手続きが簡単(電子申告等の送信後、ワンクリックで納付完了)
- インターネットバンキングの契約が不要
- 即時、または期日指定の納付が可能
- 税理士が納税者に代わって納付手続きを行うことが可能
このダイレクト納付の対象は、e-Taxで申告可能な国税で、源泉所得税、法人税、消費税及び地方消費税、申告所得税、酒税、印紙税に限定されています。ただし、e-Taxで納付情報の登録依頼を行えば、全税目で利用可能となります。申込みから利用開始まで1ヵ月程度かかりますので、導入を予定している企業は早めに準備が必要です。申込みは管轄の税務署で受け付けているので検討してみてはいかがでしょうか。
<参考>
国税庁ホームページ(ダイレクト納付の手続)
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/index.htm -
2009年8月5日
復活した欠損金繰戻し還付の活用
2009(平成21)年2月1日以降終了事業年度より、資本金1億円以下の中小法人について「欠損金の繰戻し還付」制度が復活しています。この制度は、景気後退で赤字に陥った中小法人の資金繰り支援となるものですが、活用にあたっては、制度を十分に理解した上で、適用を検討したいところです。
繰戻し還付制度とは、当期に欠損金が生じた場合、これを前期の所得に充当して、前期に納税した法人税の全部又は一部を還付してもらう制度であり、以下の要件を満たしていることが必要となります。
- 還付所得事業年度から欠損事業年度(当期)の前事業年度まで連続して青色申告書を提出していること
- 欠損事業年度(当期)の青色申告書をその提出期限までに提出していること
- 一定の事項を記載した還付請求書を 2. の確定申告書と同時に提出していること
欠損金の繰戻し還付請求書を提出した場合、法人税法上、税務調査が明記されているため、適用にあたっては調査に要する労力等も勘案する必要があります。
なお、この制度は法人税だけに設けられているものです。地方税の取り扱いにおいては、事業税は欠損金の繰越控除が適用されることになり、住民税では法人税が還付された事業年度に、その還付された法人税を課税標準額から控除することになります。
繰戻し還付を適用すると、翌期以降における、法人税と地方税で欠損金の繰越額に違いが生じるため、繰越額の確認をしっかりと行う必要があります。
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2009年7月29日
インターネット販売における消費税
近年、インターネットの利用者増加に伴い、電子商取引が増加しています。国境を越えた取引も容易に行えるようになりましたが、その一方で課税上の問題も発生しています。現状では、海外において運営されているサイトから購入した音楽や映像には、消費税は課税されていませんが、1.消費地課税の原則、2.課税の公平性、の面から問題が指摘されています。
- 消費地課税の原則
消費税は財物が消費される場所で課税されるべきとする原則です。現在の日本の消費税法において、サービスの提供に関する取引は、サービスが行われる場所が国内であれば課税されますが、国外であれば課税されません。
インターネットを通じた音楽・映像の配信取引は、サービスの提供に分類されます。日本に事務所等を持たない海外の事業者から購入する場合、国外取引とされるため消費税課税が行われません。日本で消費されるにもかかわらず消費税の課税対象外と扱われるため、消費地課税の原則と矛盾が生じています。 - 課税の公平性
国内の事業者からインターネットで音楽・映像の配信を受ける場合は、国内取引として消費税の課税の対象となります。一方、海外の事業者から同様のサービスを受ける場合は、消費税は課税されません。取引の経済的実態が同じであるにもかかわらず課税関係において不均衡が生じています。
電子商取引の国際化が急速に進んでいますが、法整備がそれに追いついていないのが現状です。電子商取引の課税上の問題には国際的な枠組みの整備が必要と考えられますが、各国の課税権確保の思惑も絡み、現時点では具体化していません。将来、国際的な調整が行われた場合には、日本の消費税にも変化が生じる可能性が大きく、今後の動向が注目されるところです。
- 消費地課税の原則
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2009年7月22日
株主代表訴訟における訴訟費用の取扱い
役員が不正行為により会社に損害を与えたような場合や著しい判断ミスなどにより株主が著しく不利益を被った場合、その責任を追及しない会社に代わって株主自身が直接役員に対して訴えを提起することが認められています。その訴訟における損害賠償等の効果は会社に帰属します。これを株主代表訴訟といいいます。
この訴訟に関する費用については、勝訴または敗訴にかかわらず役員自らが負うべきものですが、これを企業が支払った場合、判決結果により取扱いが異なります。
- 役員勝訴の場合
役員は適正に職務を遂行していることが確認されたものであり、その提訴費用は企業自体を守る費用又は正当に職務を遂行している役員を守る為に企業が支出すべき費用であるとも考えられるため、その費用の全額が損金となり、役員に対する課税も行われない。 - 役員敗訴の場合
役員の過失等により会社に損害を与えたことが確認されたものであり、提訴費用や損害賠償金は役員自身が負担すべきものであると考えられるため、その費用を企業が負担した場合には、その全額が役員賞与とされ、損金不算入となる。 - 訴訟が取り下げられた場合
役員の責任の所在が明らかとはなっていないが、敗訴が確定していない以上役員としての職務を適正に遂行しているものと推定されるため、1.と同様に取り扱われる。
<参考>
国税庁ホームページ(株主代表訴訟に係る弁護士費用等の負担)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/32.htm - 役員勝訴の場合
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2009年7月15日
中小企業倒産防止共済制度
世界的金融危機の影響を受け、企業の倒産件数も増加傾向にあります。こうした状況の下、取引先に不測の事態が生じたときの備えとして、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する中小企業倒産防止共済という制度があります。
この制度を利用すると、共済加入後6ヶ月以上経過した後、取引先の倒産により売掛金や手形の回収が困難になった場合に、3,200万円を限度として、掛金総額の10倍に相当する金額までの貸付を受けることができます。
万一取引先が倒産してしまい実際に貸付を受けることになった際の貸付条件は、無担保・無保証人・無利子の5年毎月均等償還となっています。(但し、貸付を受けた共済金額の1/10相当額は、掛金総額から控除されることになる。)
また、法人が掛金を支払った場合には、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます。
なお、掛金を損金に算入する際の手続として、法人税の申告書に「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」【別表十(六)】の添付が必要となります。
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2009年6月24日
「経済危機対策」における税制上の措置
2009(平成21)年6月19日、最近の社会経済情勢を踏まえ、経済危機対策として、租税特別措置法の一部を改正する法律案が国会で可決されました。今回の改正では、以下の3点の措置が講じられます。
- 住宅取得等のため資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
2009(平成21)年1月1日から2010(平成22)年12月31日までの間に、20歳以上である者が、直系尊属(父母、祖父母など)から住宅の取得等に充てるために金銭の贈与を受けた場合は、当該期間を通じて500万円までは贈与税が非課税となる。従来の措置とあわせ、暦年課税の場合は、110万円+500万=610万円が、相続時精算課税を選択した場合は、3,500万円+500万円=4,000万円が非課税枠となります。
なお、適用対象となる住宅取得等の範囲は、居住用家屋と同時に取得する敷地及び居住用家屋の増改築を含みます。 - 中小企業の交際費課税の軽減
2009(平成21)年4月1日以後に終了する事業年度から、資本金1億円以下の法人に係る定額控除限度額が、現行の400万円から600万円に引上げられます。 - 研究開発税制の拡充
試験研究費の総額に係る税額控除制度等について、
(イ)2009(平成21)年度、2010(平成22)年度において税額控除できる上限額が、当期の法人税額の20%から30%に引上げられます。
(ロ)2009(平成21)年度、2010(平成22)年度に生じる税額控除限度超過額について、2012(平成24)年度までの法人税額から控除することが可能となりました。この場合の控除の上限額は、法人税額の30%です。
特に、2.については、既に申告をしている場合でも、改正後の措置が適用となるので、注意を要します。
- 住宅取得等のため資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
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2009年6月17日
ストックオプションに係る課税
ストックオプションは、法人が取締役・使用人等に対し、一定の期間(権利行使期間)中に予め定められた価額(権利行使価額)で自社の株式を取得することができる権利を付与するものであり、株価が上昇すれば、取締役・使用人等は、その値上がり分の利益を得ることができるというものです。権利行使により得られる利益が法人の業績向上による株価上昇と直接連動するため、権利付与された取締役・使用人等は株価に対する意識が高まり、業績向上へのインセンティブになるとされています。
権利付与された取締役・使用人等は、原則として、ストックオプションが付与された時点では課税されず、権利行使時に、その時点での株式時価と権利行使価額との差額分について給与課税を受けます。次に、株式を売却した時は、売却価額と権利行使時の時価との差額分について譲渡所得課税を受けます。
一方、一定の要件を満たす税制適格となるストックオプションの場合には、権利行使時の給与課税は行われず、株式売却時に売却価額と権利行使価額との差額に対して譲渡所得課税を受けることになります。なお税制適格要件は以下の全ての要件を満たすものです。
- 会社法上のストックオプションの付与決議に基づいて、自社又は発行済株式または出資総数の50%超の株式又は出資を直接または間接に保有する関係法人の取締役・使用人との間で締結された契約に基づき付与されたものであること。(一定の大口株主等を除く。)
- 権利行使期間は、付与決議の日から2年以上10年以内であること。
- 権利行使価額の年間の合計額が1,200万円を超えないこと。
- 権利行使価額が契約締結時の時価以上であること。
- ストックオプションの譲渡ができないこと。
- 権利行使により取得した株式の保管・管理が、証券会社等に委託等されること。
税制上の適格要件を満たしたストックオプションを付与した法人は、付与した日の属する年の翌年1月31日までに本店所在地の所轄税務署長に一定の調書を提出する必要があるので注意が必要です。
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2009年6月10日
海外に支払いをする際の税務上の留意点
海外への支払が日本国内での取引に起因する所得、いわゆる国内源泉所得に該当する場合には、所得税の課税対象となるものがあります。この場合、原則として支払者が源泉徴収の方法により税務署に納税する必要があります。
源泉徴収の対象となる国内源泉所得のうち発生頻度の高いものは以下の通りです。
- 人的役務の提供事業の対価(専門知識や特別の技能を持つ者が提供する役務等)
- 使用料等(著作権、特許権、ノウハウ等)
- 不動産の賃貸料等
- 配当・貸付金の利子等
なお、支払を受ける海外の国々と日本との間に租税条約が締結されている場合には、その条約により免税もしくは軽減税率の恩恵を受けることが可能です。
支払の際に源泉徴収の対象となる取引等を的確に見定めてその要否を判断することは、国内法と租税条約との両面からのアプローチが必要となるため、源泉徴収漏れを指摘される事例が多く、注意が必要です。
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2009年6月3日
連結納税
連結納税制度とは、簡単に言えば企業グループを1つの法人とみなして課税する仕組みのことです。基本的には、親会社とその親会社が100%出資している国内にある子会社すべてが対象となります。
この制度は、連結決算を行っている上場企業等だけでなく、中堅・中小企業のなかにも適用申請する企業があります。
連結納税の適用を考えるうえで、いくつかあるメリットのうち、最大のものと考えられるのは連結グループ内の各法人間の所得の通算が可能になることと言えるでしょう。
グループ内に赤字法人と黒字法人が存在する場合、その赤字と黒字が相殺され、企業グループ全体としては法人税額を抑えることができるという効果が得られるのです。
しかしながら、主に以下のようなデメリットもありますので、適用する前に、有利となるか、不利となるかしっかりシュミレーションを行い検討する必要があります。
また、連結納税制度は、適用しようとする事業年度開始の日の6ヶ月前までに申請書を提出しなければならないため、早期にプランニングを行うことが肝要となります。
- 子会社欠損金の切捨て
連結欠損金額は7年間で繰越控除されますが、子会社の連結納税適用前又は加入前に生じていた税務上の繰越欠損金は、原則として連結グループに持ち込めません。 - 子会社の含み益資産等に対する課税
連結納税適用時又は連結グループへ新たに加入する子会社は、その前に一定の資産等が時価評価されます。そのため、子会社の保有資産に多額の含み益があれば多額の所得が発生してしまうことがああります。 - 制度を選択した場合には継続適用することが原則
連結納税を取り止めることができるのは「やむを得ない事情があるとき」に限られます。今年は連結納税、翌年は単体納税など、任意に繰り返して選択するようなことは認められません。
- 子会社欠損金の切捨て
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2009年5月28日
減損損失の税務上の取扱い
土地や建物などの固定資産を所有する企業は、資産の収益性の低下により減損処理を行う場合があります。特に最近の経済情勢の影響から、監査での指摘をはじめ減損を検討する企業も多いと考えられます。今回は、この場合の税務上の取扱いについて確認いたします。
法人税法では、基本的に資産の評価換えによる損益を認めていないため、減損損失の金額は、申告の際に加算調整する必要があります。土地などの非償却資産は減損損失の全額が否認されますが、建物などの減価償却資産は、全額が否認されるとは限りません。
法人税法では「償却費として損金経理した金額」のうち、限度額内での損金算入を認めています。法人税法基本通達7-5-1において、減損損失の金額は、「償却費として損金経理した金額」に含まれると明記されています。
つまり、税務上は、減損損失の金額と会計上の減価償却費との合計額で償却費と捉え、限度額に対して超過している場合、その超過金額が加算調整されることになります。加算調整された金額は、翌期以降に償却不足額が出た場合、その不足額の範囲で減算調整されます。
なお、同じ固定資産の損失であっても、災害により著しく損傷した場合や1年以上にわたり遊休状態にある場合など、一定の要件に該当する際は損金として認められるため、性質の違いに注意を要します。
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2009年5月20日
役員賠償責任保険の保険料の取扱い
会社役員は、経営上の失敗等に基因して、株主代表訴訟又は第三者訴訟を受けるリスクを負っています。役員賠償責任保険は、株主代表訴訟等を受けた場合の損害賠償金及び訴訟費用を補償する保険です。
役員賠償責任保険に加入した場合の保険料の処理は、その保険料の区分に応じて処理が異なるため注意が必要です。
- 基本契約(普通保険約款部分)の保険料
⇒基本契約に係る保険料を会社が負担した場合の当該保険料については、役員個人に対する給与課税を行う必要はない。 - 株主代表訴訟担保特約の保険料(特約保険料)
⇒特約保険料については、役員個人負担又は役員報酬から天引きすることとなるが、この保険料を会社が負担した場合には、給与課税を要する。
また、特約保険料の役員間の配分については、実務上、次のいずれかの方法など合理的な基準により配分する必要がある。
- 役員の人数で均等に分担する方法
- 役員報酬に比例して分担する方法
- 商法上の区分別に分担する方法
今後、役員賠償責任保険の加入を検討している企業は上記取扱いに十分注意してください。
- 基本契約(普通保険約款部分)の保険料
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2009年5月13日
現物給与と源泉所得税
労働環境を整えるため様々な福利厚生制度を設けている企業がありますが、税務上、福利厚生についても現物給与として源泉徴収の対象とされる可能性がありますので注意が必要です。
所得税法において、給与所得は「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得」であるとされており、この所得には金銭で支給するものだけでなく、金銭以外の物又は権利その他経済的利益により支給する、いわゆる現物給与も含まれるとされています。そのため、現物給与を支給する際も源泉徴収が必要となります。
一方、現物給与のうち、一定のものは非課税とされており、源泉徴収の対象から除かれているものもあります。具体的には以下のようなものが挙げられます。
非課税とされる経済的利益
- 通勤手当(原則として月100,000円以下、通勤方法等により異なる)
- 出張旅費、転勤に伴う旅費(合理的な額の範囲内)
- 永年勤続記念品(勤続年数10年以上、かつ、5年以上の間隔で支給)
- 職務に必要な技術や知識の習得費用
- 値引販売(販売価額の70%以上であり、取得価額以上で販売)
- 残業食事代
- 慰安旅行(4泊5日以内、かつ、全従業員の50%以上参加)
- 社宅の貸与(一定額以上の家賃徴収している場合)
- レクリエーション費用(全従業員を対象とし、社会通念上相当と認められる金額)
- 金銭の貸付(平均調達金利による貸付、年5,000円以下の利息)
なお、非課税とされる現物給与であっても、金額が多額であったり、頻度が多かったりと過度に行われている場合には非課税とはならず、現物給与として課税される可能性があるので注意が必要です。
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2009年5月7日
業績悪化による役員給与の減額改定
深刻な不況の影響により、役員給与を減額せざるを得ない企業もあるのではないでしょうか。
これまでは、損金算入が認められる役員給与の減額改定は、「経営の状況が著しく悪化したことによりやむを得ず減額せざるを得ない場合」に限られていました。この「著しい悪化」には、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことは含まれず、具体的な状況が不明確でしたが、昨年12月に、国税庁から「役員給与に関するQ&A」が公表され、業績悪化事由による改定に該当する事例が、下記の通り掲げられました。- 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から減額せざるを得ない場合
- 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、減額せざるを得ない場合
- 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要上、経営改善の計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
上記1.は、公開会社のように株主が不特定多数からなる法人を想定しており、経営責任を取るために役員給与を減額する場合をいいます。同族会社のように経営者=株主となる会社の場合は、客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにする必要があります。
上記2.は、融資を受けている金融機関から役員給与を減額する指導があった場合をいいます。
非公開の中小企業で最も多いケースは、上記3.です。減額時の会社の状況を示す資料と、経営状況の改善を図るための中長期的な計画を事前に作成し、保存することが必要です。
いずれの事例も、恣意的な利益操作ではないため減額であることが明らかであるため損金算入が認められるものですので、減額に至った客観的な事情を具体的に説明できるようにすることがポイントとなります。
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2009年4月30日
ソフトウェアの除却について
目まぐるしく変化する今日のビジネス環境の下、多様化するニーズに応えるため、ITの活用は不可欠となっています。
税務上、ソフトウェアについては、資産計上を行った上で、複写販売用原本は3年、自社利用等その他の場合には5年を耐用年数として減価償却を行います。
しかし、このような経済環境の下、新製品の開発やバージョンアップ等により、実際の使用期間が短くなってしまう場合も多いと思われます。
そのような場合、記録媒体等の物理的廃棄であれば除却は明確ですが、ソフトウェアの利用を廃止したときは、いつも物理的な除却を行うとは限りません。そこで、以下のような場合、除却処理を行うことができるという基準が設けられています。
- 自社利用のソフトウェア
そのソフトウェアによるデータ処理の対象となる業務が廃止され、当該ソフトウェアを利用しなくなったことが明らかな場合、又はハードウェアやオペレーティングシステムの変更等によって他のソフトウェアを利用することになり、従来のソフトウェアを利用しなくなったことが明らかな場合 - 複写して販売するための原本となるソフトウェア
新製品の出現、バージョンアップ等により、今後、販売を行わないことが社内稟議書、販売流通業者への通知文書等で明らかな場合
ソフトウェアについては、有形固定資産に比べ、利用廃止等を明らかにすることが難しいケースが多いです。
そこで、プログラムの削除画面を保存しておくことや、業務の都合上、バックアップ等で残しておく場合には、その理由を明らかにしておくこと、また、今後利用しなくなるに至った経緯を社内稟議等で明らかにしておくこと等により、客観的に説明し得る資料を保存しておくことが重要となります。 - 自社利用のソフトウェア
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2009年4月22日
タックスヘイブン対策税制
タックスヘイブン税制とは、軽課税国に不当に利益を留保することを防ぐため、(1)タックスヘイブン国(法人税無税又は税負担率25%以下)に所在、(2)日本法人及び居住者に株式等の50%超を直接又は間接に保有されている、という2つの要件に該当する外国子会社等の留保所得を、その日本親会社の収益の額とみなして益金の額に算入する制度です。
この制度の適用対象となる法人は、上記2要件を満たす外国子会社等の株式等の5%以上を保有する法人です。海外子会社を有する日本親会社は、ほとんどが5%以上所有しているものと考えられます。
2008(平成20)年1月から中国のいわゆる法人税率が25%になったことにより、上記に該当する外国子会社を所有する日本親会社が増えたと考えられます。しかし、その場合でも、以下の適用除外条件の全てを満たす場合には、確定申告書に適用除外の旨を記載した書面を添付し、根拠資料を保存することで、タックスヘイブン課税はされません。
- 事業基準:外国子会社の営む事業が、株式・債権の保有、工業所有権の提供、船舶、航空機リース業以外の事業である
- 実体基準:外国子会社は、その所在国において事務所、店舗、工場等を有する
- 管理支配基準:外国子会社は、事業の管理、支配及び運営を自ら行っている
- 非関連者基準又は所在地国基準:子会社の行う主たる事業が、
(イ)卸売、銀行、信託、保険、証券、水運、航空運送業である場合は非関連者との取引量が50%を超えている、
(ロ)その他の事業の場合はその事業を主として本店所在地国で行っている
以上より、外国子会社を有する法人は、まず、その外国子会社の税率、税負担率、株主構成を確認してタックスヘイブン税制の適用対象法人になるのか検討し、次に、適用対象となる場合は、上記4基準で適用除外に該当するのかを判定する必要があります。
なお、軽課税国か否かの要件における税負担率25%以下というのは、非課税所得等も含めた所得金額に対する租税額の割合が25%以下ということであり、その国のいわゆる税率が25%を超えている場合でも対象となることがあるので併せて注意しておく必要があります。
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2009年4月15日
上場有価証券評価損の計上についての税務指針
昨秋以降の景気悪化の影響による株価の低迷で、上場株式の時価が著しく下落しています。
決算を迎え、評価損を計上する会社も増えているのではないでしょうか。上場有価証券の評価損計上にあたり、税務上、損金として認められる要件は、(1)期末価額が簿価に対しておおむね50%相当下落し、かつ、(2)近い将来回復の見込みがないことです。
これまで(2)の要件については明確な判断基準がありませんでしたが、国税庁より「上場有価証券の評価損に関するQ&A」が発表され、判断の一助となる指針が示されました。
- 過去の市場推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りは、税務上その基準は尊重される。
- 回復可能性の判断として専門性を有する客観的な第三者の見解があれば合理的な判断の根拠とすることができる。
具体的には、証券アナリストなど専門性を有する第三者による個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し、株式発行法人に関する企業情報などを用います。
回復見込みの判断について上記のような基準が示されましたが、最終的には、個別銘柄ごとの状況を踏まえ、適否が判断されることになります。そのため、会社としては、回復見込みなしと判断する場合は、その判断基準の根拠となる周辺書類等を整備しておくことが重要です。
<参考>
国税庁ホームページ(「上場有価証券の評価損に関するQ&A」)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/090400/pdf/01.pdf -
2009年4月5日
未払残業代を支払う場合の取扱い
テレビ・新聞等で「残業代未払い」や「労働基準監督署による未払残業代の支払勧告」といった言葉を見聞きすることは多くなりました。未払残業代の請求権利は2年間有効であるため、会社規模・従業者数によっては、未払残業代が億単位となる場合もあるようです。
今回は、未払残業代を支払うこととなった場合の税務の取扱いについて解説いたします。
過去に確定した給与を遡及して支払う場合は、その未払残業代を確定した年別に、既に支払済みの給与に加えて、年末調整(確定申告)の修正を行い、給与支払報告書の再提出により修正後の住民税の賦課を受けることになります。この場合、所得税・住民税の増額に加えて、延滞税の納付も必要となります。
一方、未払残業代の精算として、一定金額を一時金として支払うことが当期に確定した場合は、当期の賞与と同様に所得税・住民税の処理をすることになります。そのため、過去の所得税・住民税の修正処理は必要ありませんが、支払いが確定した年の所得税、その翌年に賦課される住民税の増額インパクトが生じることになります。
なお、国税庁ホームページの質疑応答事例でこの取扱いが掲載されていますので、あわせてご参照ください。
<参考>
国税庁ホームページ(過去に遡及して残業手当を支払った場合)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/41.htm -
2009年3月31日
事業所税の納税義務の判定
会社の税金を計算する上で重要視されているのが、法人税、事業税、住民税そして消費税などですが、もう一つ、申告が必要な税金として、事業所税の存在が忘れられがちです。
事業所税は、人口30万人以上の都市等において、事業所等において事業を行う者に対して課税される税金です。事業所等とは、自己所有のものだけでなく、借りて使用しているものも含まれ、具体的には、事務所や店舗、倉庫、工場などが対象となります。
納税義務は、期末時点における同市内(東京23区については23区内)の事業所等の床面積の合計が1000平米を超える場合又は同市内の合計従業者数が100人を超える場合に生じ、税額は事業所の床面積及び従業者給与総額に応じて計算されます。
ポイントは、免税点(面積1000平米以下又は従業者数100人以下)の判定は、期末時点における現況で判定されるところであり、たとえば期中事業所があったとしても、期末時点でその事業所を廃止している場合、廃止事業所の床面積は、判定の対象から除かれる点です。
判定の結果、免税点以下であれば、その期の事業所税は課税されません。免税点を超える場合には、その廃止した事業所については、当該事業所があった期間に応じて課税されます。
また、会社単体で免税点以下であっても、同じビルの中で、同族会社等の特殊関係者が事業を行っているような場合には、その特殊関係者と合算して判定を行うため、合算して免税点を超えていれば、その会社の事業所に対応する事業所税を納めなければならないので注意が必要です。
なお、事業所税には、延長制度がありませんので、消費税と同じく、期末から2ヶ月以内に申告納付することを併せて注意してください。
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2009年3月25日
定期同額給与の改定
決算期は決算書の作成、株主総会の開催、税務申告の実施等様々な手続きやその準備で忙しいことと思います。これら一連の業務を終えると一息つきたいといったところですが、これらの決算業務の直後に検討しなければならない重要項目に、役員給与の改定があります。
法人税においては、原則として役員給与のうち支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、各支給額が同額であるものだけが定期同額給与として損金に算入することができ、期中に増減があった場合は、特別な事情がない限り、定期同額給与の要件を満たさないため損金となりません。決算後に役員給与の見直しをする場合は定期同額給与の要件を満たすだけでなく、改定する時期にも注意が必要です。
- 事業年度開始の日から3月を経過する日までに改定されている。
- その改定前の各支給時期(当該事業年度に属するものに限る。3.において同じ。)における支給額が同額である。
- その改定以後の各支給時期における支給額が同額である。
上記の要件を満たさない役員給与の改定は、定期同額給与の要件を満たしていないものとして一部が損金として認められません。そのため、余計な税金を発生させないためにも、決算作業と並行して、翌期の事業計画を策定し期中に増減させないように計画に基づいた役員給与の額を検討することが重要です。
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2009年3月18日
自己株式の取得と税務上の資本金等の算定
昨今の株価低迷を受け、資本政策の観点からも自己株式の保有比率が高まっています。自己株式を取得した場合には、税務上資本金等の額が減少することになり、法人住民税の均等割額や外形標準課税の資本割の算定に影響が生じます。
税務上、自己株式を取得した際の資本金等の額の減少額は次の2つの場合の区分に応じ、それぞれの金額となります。
- 証券取引市場等で取得した場合
『自己株式の取得の対価の額に相当する金額』 - 1.以外の方法により取得した場合(相対取引など)
※ただし、上記の計算した額が、取得の対価の額を超える場合には、その対価の額となる。
なお、同じ資本取引である「資本剰余金による欠損填補」については、税務上の資本金等の額に変更は生じません。
ただし、外形標準課税の資本割の算定上のみ、特例として、2010(平成22)年3月31日までに開始する事業年度においては、この部分の金額を資本割額の算定上、資本金等の額から控除することになっているため、失念しないよう注意が必要です。
- 証券取引市場等で取得した場合
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2009年3月11日
貸倒損失を計上する場合の留意点
米国を中心とした世界経済の悪化の影響を受けて日本経済も減速し、倒産する会社が増加している昨今、得意先に対する売上債権等の回収可能性について懸念する会社も増加しているのが現状ではないでしょうか。
回収できなくなった債権については、貸倒損失の計上を行うことになりますが、法人税基本通達において、回収不能か否かの判断基準が以下のように定められています。
- 法律的に金銭債権が消滅する場合
(例)更生計画認可の決定、債権者集会の協議決定等 - 債務者の資産状況、支払能力からみてその全額が回収できないと認められる場合
(例)破産、債務超過、天災事故等 - 一定期間取引停止後弁済がない場合等
(例)継続的に行われていた取引の停止時から1年以上経過又は債権額より取立費用の額が多い場合
貸倒損失を計上する場合、それが税務上損金として認められるか否かについて慎重に検討し、否認されることがないよう、周辺書類を整備することが重要です。
- 法律的に金銭債権が消滅する場合
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2009年3月4日
外国子会社配当の益金不算入制度
2009(平成21)年の税制改正では、「税金がかからなくなる制度」も創設される見込みです。「外国子会社配当の益金不算入制度」は、その「税金がかからなくなる制度」のひとつです。
実は、ドイツやフランスでは既に同様の制度が導入されており、日本では、昨年5月頃から経済産業省が中心となって導入を検討してきました。海外の子会社に留保されている資金を還流させて、日本の持続的な成長に利用しようというもので、新聞やテレビの報道などでご存知の方も多いのではないでしょうか。
全世界的に不安定な経済情勢の下、経済産業省の目論見どおりに資金が還流するのか不透明ですが、「税金のかからない制度」に注目しない手はありません。
制度の概要
内国法人が、次の要件を満たす外国子会社から受ける配当等の額について、その額の95%を益金不算入とする制度である。この制度は、平成21年4月1日以後に開始する事業年度に受け取る配当等から適用されます。
要件1
内国法人が対象となる外国子会社の発行済株式等の25%以上を有していること
(租税条約に異なる定めがある場合はその割合。米国であれば10%以上、フランスであれば15%など)要件2
内国法人が上記の株式等を、(1)配当等の支払義務が確定する日以前6ヶ月以上、(2)引き続き、(3)直接に、有していること
留意点
この制度の創設を含む2009(平成21)年の税制改正関連法案は、現在、国会審議中であり、実際の適用にあたっては、成立後の法令の確認が必要です。また、この制度の創設に伴い、外国税額控除制度やタックスヘイブン対策税制の改正も予定されており、経過措置を含めた周辺規定の改正にも留意が必要です。
税務会計