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2024年6月12日
<解説動画あり>養育特例の申出に必要な添付書類が省略できるようになります
*解説動画はこちら2024年6月号「養育特例の申出に必要な添付書類が省略できるようになります」
厚生年金保険法施行規則の一部改正に伴い、2025年1月1日より「3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例の申出等(以下、「養育特例」という)」を行う際、添付書類が一部省略できるようになります。ここでは、養育特例とはどのような制度なのか、現在の具体的な手続き方法と改正後の変更点について解説いたします。
- 養育特例の概要について
養育特例とは、3歳未満の子供を養育する被保険者の標準報酬月額が短時間勤務等により低下した場合に、将来受け取る年金額に影響しないよう子供を養育する前の標準報酬月額に基づき年金を受け取ることができる制度です。現在は、養育特例を申し出る際、以下2点の添付書類が必要です。
(1)戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書
(2)住民票の写し
なお、2024年4月1日以降、申出書に被保険者と子のマイナンバーの記載があれば、住民票の写しの添付を省略することができるようになっています。 - 2025年1月1日からの変更点について
改正後は、養育特例の申出書に事業主の確認欄が設けられます。事業主が被保険者と子の関係を確認できた場合は戸籍謄本の提出が不要となります。
育児休業から復職した後、標準報酬月額が下がるケースも少なくありませんが、養育特例の申出をすることで将来の年金額への影響をなくすことが可能です。必須の添付書類がなくなることで養育特例の手続がしやすくなりますので、申出が可能な従業員には積極的に案内をしてみてください。
- 養育特例の概要について
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2024年5月14日
<解説動画あり>育児休業給付金 延長申請時の手続き厳格化(2025年4月1日施行)
*解説動画はこちら2024年5月号「2025年4月 育児休業給付金延長申請時の手続き厳格化」
雇用保険法施行規則の省令改正に伴い、2025年4月1日以降に育児休業給付金の延長申請を行う際の手続きが厳格化されることが決定しました。厳格化の背景や具体的な手続きの変更点、延長の要件について解説いたします。
- 厳格化の背景
保育所等への入所意思がないにも係らず給付金延長の為に申し込みを行う者への対応や、意に反して保育所等の入所が内定した者からの苦情対応等に自治体が時間を要しており、見直しの要望が示されていました。これに伴い自治体の負担軽減と適切な運用を図るため、ハローワークで延長可否を判断することとなりました。 - 提出書類の追加
現行の確認書類である「入所保留通知書」や「入所不承諾通知書」に加えて、本人が記載する申告書及び市区町村に保育所等の利用申込みを行った時の申込書の写しが必要となります。 - 延長要件の追加
「速やかな職場復帰の為に保育利用を希望しているか」を確認するため、以下の要件が追加審査されます。
・申し込んだ保育所等が自宅や勤務先から遠隔地(※)の施設のみになっていないこと
・市区町村への保育利用の申込に当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと
※遠隔地の判断基準として、自宅又は職場からの移動時間を30分以上とする予定。
上記提出書類の追加や新たな要件は施行日以降に育児休業にかかる子が1歳または1歳6か月に達する育児休業取得者に適用されます(パパママ育休プラスにより1歳2か月までの範囲で延長している場合は、その終了予定日が施行日以降である者)。
本改正後はハローワークにて、より厳格な審査が行われることになりますので、人事担当者は該当する育児休業取得者へ早めに案内をするなどの対応を行ったほうがよいでしょう。
<厚生労働省>
雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案概要(育児休業給付関係) - 厳格化の背景
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2024年4月11日
<解説動画あり>高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月1日施行)
*解説動画はこちら2024年4月号「2025年4月高年齢雇用継続給付の縮小」
2020年に雇用保険法が改正され、2025年4月1日から高年齢雇用継続給付が段階的に縮小されることが決定しました。改正の概要や背景、会社に求められる対応について解説いたします。
- 改正の概要
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の被保険者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった方を対象に支給される給付金です。今回の改正では、2025年4月1日以降に新たに60歳となる方への給付率が以下のように縮小されます。
◆現行
給付率は賃金の原則15%
ただし、賃金と給付額の合計が60歳到達時点の賃金に比べて
61%を超え75%未満の場合は給付額を逓減。75%を超える場合は不支給。◆2025年4月1日以降
給付率は賃金の原則10%
ただし、賃金と給付額の合計が60歳到達時点の賃金に比べて
64%を超え75%未満の場合は給付額を逓減。75%を超える場合は不支給。- 縮小の背景
高年齢雇用継続給付の縮小の背景には、2013年4月1日に施行された高年齢者雇用安定法の改正が挙げられます。企業は同改正で「65歳までの雇用確保措置」をとることが義務づけられており、2025年4月1日にその経過措置期間が終了します。このような法改正により高年齢者の労働環境が整備されつつあることから、高年齢雇用継続給付の段階的な縮小の決定がなされました。 - 会社に求められる対応
高年齢雇用継続給付の縮小に伴い、収入が減少する従業員の発生が見込まれます。高年齢雇用継続給付による補填を見込んだ賃金制度は見直しが必要でしょう。また、パートタイム・有期雇用労働法第8条では、正社員と非正社員の間で不合理な待遇差を設けることが禁止されています。定年後再雇用に於いても、職務内容、職務内容・配置変更の範囲等を正社員と比較して不合理な待遇差がないか、改めて確認を行いましょう。
<厚生労働省>
『高年齢者雇用安定法改正の概要』リーフレット
<厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第188回)資料>
『高年齢雇用継続給付について』 - 改正の概要
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2024年3月15日
<解説動画あり>2024年度から労災保険料率が改定されます
*解説動画はこちら2024年3月号「労働保険の成立手続 正しくできていますか?」
2024年4月1日より労災保険料率が改定されます。労災保険制度は、業種別に労災保険率を設定する制度を採用していますが、全54業種のうち、保険料率が引き下げられたのが17業種、引き上げ3業種、34業種が据え置きとなっています。業種平均では0.1/1000引き下げとなり、20年前から継続して引き下げ傾向にあります。
- 労災保険料率の算定方法
今回、6年ぶりに労災保険料率が改定されますが、労災保険料率は3年ごとに 審議されており、将来にわたって労災保険事業の財政の均衡を保つことができるよう、事業の種類ごとに過去3年間の保険給付実績等を加味して決定されます。なお、令和6年度分は、業種別に2.5~88/1000の範囲で定められています。 - 労働保険に係る手続
労働者が業務上の事由で負傷した際、労災保険料を財源とした労災保険制度から必要な給付を受けることができますが、給付を受けるためには、正しい手続と保険料の納付が不可欠です。
- 労働保険関係成立届
一部の個人経営の事業所を除き、労働者を1人でも雇用する事業所は、労災保険へ加入しなければなりません。なお、これは法人単位ではなく、事業所単位で手続を行う必要があるため 本社以外に支店や営業所等を新たに設立した場合も、原則、手続が必要です。なお、事務手続の簡素化を図るため、同一事業主であることや事業の種類が同じであること等を要件に、複数の事業所の保険関係を1つにまとめることができます。(継続事業の一括) - 労働保険料の納付
労働保険料は、年度の当初に1年分の保険料を概算で申告・納付し、翌年度の当初に、実際に労働者へ支払った賃金額をもとに保険料を確定・申告して、精算するしくみになっています。一般的に、この手続を「労働保険年度更新」といい、毎年6月1日から7月10日までの間に行います。
- 労働保険関係成立届
なお、会社が適切に保険加入手続を行わず、その間に労災事故が発生した場合、会社が保険給付額を負担しなければならないケースもあります。労働保険の手続状況につきまして、ぜひこの機会に一度確認してみましょう。
<厚生労働省>
令和6年度 労災保険料率表
労働保険特設サイト - 労災保険料率の算定方法
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2024年2月14日
<解説動画あり>2024年10月以降の短時間労働者に対する社会保険の適用拡大
*解説動画はこちら2024年2月号「2024年10月 社会保険の適用拡大」
2024年10月以降、短時間労働者の社会保険の適用範囲が拡大されます。これまで、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業が対象となっていましたが、2024年10月より、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業で働く短時間労働者も、加入要件を満たせば社会保険への加入が義務付けられます。
- 加入要件
厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業で働く短時間労働者で、下記要件に全て該当する場合、健康保険・厚生年金保険の加入が必要です。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)所定内賃金が月額8.8万円以上であること
(3)学生でないこと
(4)2か月を超える雇用の見込みがあること - 適用拡大の対象となる事業所への通知
2023年10月から2024年7月までの各月において、厚生年金保険の被保険者総数が6か月以上50人を超えたことが日本年金機構にて確認できた事業所に対して、2024年9月上旬に「特定適用事業所該当に関する事前のお知らせ」が送付されます。その後、2024年10月上旬に「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。事前勧奨状として「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付される場合もありますので、いずれも受領した際には内容を必ず確認しましょう。
<日本年金機構>
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
被保険者数が51人以上の企業等の事業主のみなさまへ - 加入要件
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2024年1月15日
障害のある人への合理的配慮の提供の義務化
2024年4月より障害者差別解消法が改正され、これまで努力義務であった事業者の障害のある人に対する合理的配慮の提供が義務化されます。この改正により、障害のある人からバリア(障壁)を取り除くために、何らかの対応を求められた場合、事業主は合理的な配慮をすることが求められます。今回は本改正について具体的に説明します。
- 対象となる事業者
本法における「事業者」とは、商業その他の事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別は問いません。個人事業主やボランティア活動をするグループなども「事業者」に含みます。 - 合理的な配慮の提供とは
社会生活において障害がない人には簡単に利用できることでも、障害がある人にとっては利用が難しいものが多く存在します。そのバリアを取り除くことで、障害がある人でも制限なく活動できるよう配慮することを「合理的な配慮の提供」といいます。しかし、合理的な配慮の提供の内容は、障害特性や個々の状況により異なります。必要な対応について障害のある人と事業者が話し合い、相互理解を重ねて検討していくことが重要です。 - 事業者としての取り組み方
事前に主な障害特性や合理的な配慮の具体例を確認しましょう。内閣府のポータルサイトでは、障害特性ごとの「合理的配慮の提供」の事例が紹介されています。また、障害のある人にとってバリアとなるルールやマニュアルがないかを確認し、見直しを進めましょう。
同じく2024年4月から、障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられますが、共生社会の実現に向けて、障害の有無にかかわらず、1人1人が活躍できる社会を実現するために、会社として対応できることを検討していくことが求められています。
<内閣府>
障害者差別解消法が改正に 事業者にも合理的配慮の提供が義務化されます
障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト - 対象となる事業者
人事労務