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2024年12月13日
賃金のデジタル支払いのメリット・デメリットについて
令和5年4月1日より給与の支払い方法として、新たに資金移動業者の口座振り込み、いわゆる賃金のデジタル支払いが可能となりました。利用可能な資金移動業者の指定を待つ状態が続いていましたが、令和6年8月9日に初めて1社(PayPay株式会社)が厚生労働大臣の指定を受けました。実際に導入を検討する企業が増えることが予想されますので、改めてメリット・デメリットを整理しました。
【メリット】
・企業イメージの向上につながる(会社)
キャッシュレス決済が多用されている(※)なか、給与の受取方法について柔軟な選択を可能にすることで、いち早く社会情勢に対応する企業のイメージや、働きやすい職場環境をアピールすることができます。(※出典「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」2024年3月29日発表)
・受け取り方法の併用が可能(従業員)
賃金の一部を資金移動業者の口座へ振り込み、残額を銀行口座への振り込みとする等、受け取り方法の併用が可能です。例えば、生活費で使用する分はデジタル支払いを利用し、貯蓄にまわす分は銀行口座で受け取るなど、それぞれのライフスタイルに合わせた受け取り方ができます。【デメリット】
・管理の複雑化、作業量の増加(会社)
希望をしない従業員についてはデジタル支払いを強制できません。そのため、従業員ごとに支払方法(銀行口座への振り込み・デジタル支払い)を適切に管理する必要があります。
・口座の上限額(従業員)
資金移動業者の口座については、各資金移動業者が100万円以下の上限額を設定し、口座残高が上限額を超えた場合は、予め従業員が資金移動業者に指定した銀行口座へ自動送金されます。この手数料は従業員の負担となる場合がありますので、利用する指定資金移動業者へ事前に確認することをおすすめします。このように会社・従業員の双方にメリット・デメリットがありますので、それぞれの観点から充分に検討が必要です。また、アンケート調査などにより、従業員のニーズを確認するのも良いでしょう。
参考文献:
厚生労働省HP「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」
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2024年11月14日
<解説動画あり>子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための拡充措置について
2024年5月の育児介護休業法の改正により、男女ともに仕事と育児の両立を図ることを目的とした「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置」が拡充されました。段階的に施行される措置の中で、今号は2025年4月より施行される育児期を通じた制度の拡充措置についてご紹介いたします。
- 所定外労働の制限 (残業免除)となる対象労働者の範囲拡大
現行では3歳になるまでの子が対象ですが、小学校就学前の子を養育する労働者へ対象が拡大されます。なお、労使協定で対象外にできる労働者の範囲は、「継続雇用期間が1年に満たない者」または「週所定労働日数2日以下の者」で変更はありません。 - 子の看護休暇の見直し
現行では小学校就学前までの子が対象ですが、小学校3年生の年度末までの子へ対象が拡大されます。また、対象事由も現行の事由に加え、「感染症に伴う学級閉鎖等、入園・入学式及び卒業式」が追加され、名称も「子の看護等休暇」へ変更となります。こちらは労使協定で対象外にできる労働者の内、「勤続6か月未満の労働者」を除外する仕組みが廃止され、「週所定労働日数2日以下の者」のみとなります。 - テレワーク導入の努力義務
3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずる努力義務が追加されます。 - 育児休業取得状況の公表義務の拡大
公表義務の対象が現行の「常時雇用する労働者1000人超」から「常時雇用する労働者300人超」に該当する企業へ拡大されます。公表する数値は「男性労働者の育児休業取得率」または「男性労働者の育児休業及び育児目的の休暇等(法定の育児休業やこの看護等休暇は除く)の取得率」です。
上記改正の内、1)所定外労働制限の対象労働者の範囲拡大と2)子の看護休暇の見直し」については、就業規則等の改定が必要となります。人事担当者は2025年4月1日の施行に合わせて改定できるよう、社内準備を進めるとともに、従業員への周知もあわせて準備を進めておきましょう。
<厚生労働省>
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要
「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(リーフレット) - 所定外労働の制限 (残業免除)となる対象労働者の範囲拡大
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2024年10月14日
<解説動画あり>社会保険適用拡大による二以上事業所勤務者への影響について
2024年10月から短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等(※)で働く 短時間労働者の社会保険加入が義務化されました。(※以下、特定適用事業所といいます)
特定適用事業所で働く方で、次の4点のいずれにも該当する方が、短時間労働者として新たに加入対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
- 学生でないこと
昨今の大幅な地域別最低賃金の引き上げに伴い、今まで上記2.の要件を満たさなかった方が、時給増により新たに対象となることも想定されます。(週所定20時間=月所定約87時間となるため、時給1,012円で所定内賃金月額が8.8万円以上となります)
その結果、副業として2つ以上の会社で勤務している方や、短時間労働者として複数社を掛け持ちで勤務している方はそれぞれの会社で社会保険加入要件に該当するケースも増えてくると考えられます。(これを二以上事業所勤務者といいます)二以上事業所勤務者は、加入要件に該当した会社それぞれで社会保険に加入することになりますが、保険証は本人が選択事業所として届け出た一方の会社の健康保険からのみ発行されます。また、保険料額はそれぞれの会社の報酬額を合算して算出した標準報酬月額を、それぞれの会社の報酬額の比率によって按分して決定します。
保険料の按分計算は、資格取得時のほか月額変更届・算定基礎届により報酬月額が変更される際などにも行われます。自社での報酬月額が変わらなくても、他社分の報酬月額に変更があった場合にも保険料額が変更となる点に注意が必要です。
従前から特定適用事業所に該当している会社でも、従業員の所定労働時間の変更や賃金の引き上げにより、新たに社会保険加入対象となっている人がいないか改めて確認をしましょう。
<日本年金機構>
兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ(リーフレット) -
2024年9月13日
<解説動画あり>2024年11月施行「フリーランス・事業者間取引適正化等法」
*解説動画はこちら2024年9月号「2024年11月施行「フリーランス・事業者間取引適正化等法」」
フリーランスの取引の適正化・労働環境を整備し、多様な働き方に柔軟に対応することを目的として「フリーランス・事業者間取引適正化等法」が施行されます。
■適用の対象
この法律は発注事業者からフリーランスへの業務委託に対して適用されます。- 発注事業者
フリーランスに業務委託を行う事業者で、従業員を使用するもの - フリーランス
業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの(個人・法人は不問)
■内容
「取引の適正化」「就業環境の整備」の観点から、取引条件の明示義務、報酬支払期日の設定と期日内の支払義務、募集情報の的確な指示等が定められています。今回は、とりわけ人事労務の領域に影響のある「就業環境の整備」に関して、以下の2点を取り上げます。- 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
発注事業者は6か月以上の業務委託について、フリーランスからの申出に応じて、必要な配慮をしなければなりません。必要な配慮としては、就業時間や納期の変更、オンラインで業務を行う等が挙げられています。 - ハラスメント対策に係る体制整備義務
セクシュアルハラスメント・妊娠出産等に関するハラスメント・パワーハラスメントにより、フリーランスの就業環境が害されることのないよう、相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければなりません。労働者への義務と同様であるため、労働関係法に基づき整備した社内体制やツールをフリーランスにも活用することが考えられます。
フリーランスと業務委託の名称で契約していても、働き方の実態に労働者性があると認められる場合は、フリーランス・事業者間取引適正化等法は適用されず、労働基準法等の労働関係法令が適用されることとなります。そのため、契約内容や働き方の実態を確認し、適切な運用となるよう整えていくことが求められます。
<厚生労働省>
ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法
フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン - 発注事業者
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2024年8月14日
<解説動画あり>夫婦ともに育児休業を取得した場合の給付金の創設(2025年4月施行)
*解説動画はこちら2024年8月号「2025年4月施行 育児休業にかかる給付金制度の創設」
雇用保険法の改正を含む「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」が2024年6月5日に成立しました。これにより、雇用保険の育児休業給付に新たに「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」が創設されます。今号では各給付の内容や創設の背景について解説致します。
■出生後休業支援給付とは
- 給付の内容
夫婦ともに育児休業を取得した場合に、通常の育児休業給付に一定額が上乗せされる制度です。具体的には子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)で被保険者とその配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、28日間を限度に「休業開始時賃金の13%相当額」が上乗せ支給されます。なお、配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭などの場合は、配偶者の育児休業の取得要件は考慮せずに支給されます。 - 創設の背景
現状では、育児休業等を取得し育児休業給付金等の支給を受けても休業前の給与と比べると手取額は低くなり、男性の育児休業取得が進まない理由の1つと考えられていますが、この「出生後休業支援給付」により育児休業中の手取額低下に対する不安が減少し、男性の育児休業取得の促進、「共働き・共育て」のできる環境の推進が期待されています。
■育児時短就業給付とは
- 給付の内容
育児のために時短勤務を行い収入が低下した場合、その収入を補うために給付金を支給する制度です。具体的には2歳未満の子を養育するために短時間勤務で就業した場合、勤務中に支払われた賃金額の10%が支給されます。ただし、給付金の額と短時間勤務後の賃金の合計が短時間勤務前の賃金を超えるような場合は、給付金の支給額が調整されます。 - 創設の背景
現状では育児の為に短時間勤務制度を選択し賃金が低下した場合に支給される給付はありません。「育児時短就業給付」は育児とキャリア形成の両立を支援する為に2歳未満の子を持つ親が育児のために短時間勤務を行う際に収入減少を補填する目的で創設されました。
「出生後休業支援給付」や「育児時短就業給付」を含む改正雇用保険法は2025年4月1日から施行されます。人事担当者は就業規則などの改定や従業員への周知を漏れなく行える様、早めに情報を収集し社内準備を行っておきましょう。
- 給付の内容
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2024年7月12日
<解説動画あり>マイナ保険証利用促進に向けた今後の動きについて
*解説動画はこちら2024年7月号「マイナ保険証の利用促進に向けた今後の動向について」
令和5年4月1日より、保険医療機関・薬局においてマイナンバーカードを健康保険証として利用できるオンライン資格確認のシステム導入が義務付けられ、医療機関等を受診する際にマイナンバーカードの持参有無を尋ねられることが増えてきました。今回は、マイナ保険証の利用促進に伴う今後の動きについて整理いたします。
- 現行の健康保険証の廃止と資格確認書の発行
令和6年12月2日に現行の健康保険証の新規発行が終了します。現在お持ちの保険証は、最長で令和7年12月1日まで(※)使用することが可能です。(※有効期限が令和7年12月1日より前に切れる場合などはその有効期限まで。)現行の保険証は、令和7年12月1日までに退職等で使用できなくなった際は会社へ返納が必要ですが、令和7年12月2日以降については自己破棄も可能です。
なお、マイナンバーカードの保険証利用登録をしていない方に対しては、保険証の代わりとなる「資格確認書」が発行され、こちらを持参することで医療機関での受診が可能となります。 - 加入者に対する資格情報のお知らせの送付
協会けんぽでは令和6年9月に全加入者に対し、事業主を経由して、記号・番号を含む被保険者資格等の基本情報が記載された「資格情報のお知らせ」を送付する予定です。(各健保組合も同様の対応となる見通しですが、詳細はご加入の健保組合にご確認ください)
こちらの「資格情報のお知らせ」は、令和6年12月2日以降、マイナンバーカードリーダーが利用できない医療機関を受診する際に、マイナ保険証と合わせて提示することで利用が可能です。令和6年6月上旬以降に加入された方については、令和7年1月頃に発送される予定です。また、今後は資格取得時に送付されます。「資格情報のお知らせ」は、単体での利用は出来ません。また個人情報を含むことから、マイナ保険証と合わせて携帯のうえ、紛失には十分ご注意いただく必要があります。
メディア等でも保険証廃止について取り上げられており、従業員の方の注目度も高い変更です。今後、従業員の方からの問い合わせが増えることも予想されます。従来の保険証から、①マイナ保険証、②資格確認書、③マイナ保険証+資格情報のお知らせ、の3つの利用に分かれる点をしっかりと整理したうえで、従業員の方への案内を早めに進めましょう。
◆マイナンバーカードの保険証利用登録方法について
マイナンバーカードを保険証として利用するには、ご自身で「保険証利用登録」を行う必要があります。利用登録には次の3つの方法があります。
(1)医療機関設置のカードリーダーからの申請
(2)セブン銀行ATMからの申請
(3)マイナポータルからの申請
いずれかの方法で登録をしたのち、医療機関設置の顔認証付きカードリーダーで受付を行うことで、
マイナ保険証による保険証利用をすることが出来ます。<全国健康保険協会>
健康保険証とマイナンバーカードの一体化(マイナ保険証)に関する制度説明資料
<厚生労働省 保険局>
マイナ保険証の利用促進等について
<厚生労働省>
マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問
- 現行の健康保険証の廃止と資格確認書の発行
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2024年6月12日
<解説動画あり>養育特例の申出に必要な添付書類が省略できるようになります
*解説動画はこちら2024年6月号「養育特例の申出に必要な添付書類が省略できるようになります」
厚生年金保険法施行規則の一部改正に伴い、2025年1月1日より「3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例の申出等(以下、「養育特例」という)」を行う際、添付書類が一部省略できるようになります。ここでは、養育特例とはどのような制度なのか、現在の具体的な手続き方法と改正後の変更点について解説いたします。
- 養育特例の概要について
養育特例とは、3歳未満の子供を養育する被保険者の標準報酬月額が短時間勤務等により低下した場合に、将来受け取る年金額に影響しないよう子供を養育する前の標準報酬月額に基づき年金を受け取ることができる制度です。現在は、養育特例を申し出る際、以下2点の添付書類が必要です。
(1)戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書
(2)住民票の写し
なお、2024年4月1日以降、申出書に被保険者と子のマイナンバーの記載があれば、住民票の写しの添付を省略することができるようになっています。 - 2025年1月1日からの変更点について
改正後は、養育特例の申出書に事業主の確認欄が設けられます。事業主が被保険者と子の関係を確認できた場合は戸籍謄本の提出が不要となります。
育児休業から復職した後、標準報酬月額が下がるケースも少なくありませんが、養育特例の申出をすることで将来の年金額への影響をなくすことが可能です。必須の添付書類がなくなることで養育特例の手続がしやすくなりますので、申出が可能な従業員には積極的に案内をしてみてください。
- 養育特例の概要について
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2024年5月14日
<解説動画あり>育児休業給付金 延長申請時の手続き厳格化(2025年4月1日施行)
*解説動画はこちら2024年5月号「2025年4月 育児休業給付金延長申請時の手続き厳格化」
雇用保険法施行規則の省令改正に伴い、2025年4月1日以降に育児休業給付金の延長申請を行う際の手続きが厳格化されることが決定しました。厳格化の背景や具体的な手続きの変更点、延長の要件について解説いたします。
- 厳格化の背景
保育所等への入所意思がないにも係らず給付金延長の為に申し込みを行う者への対応や、意に反して保育所等の入所が内定した者からの苦情対応等に自治体が時間を要しており、見直しの要望が示されていました。これに伴い自治体の負担軽減と適切な運用を図るため、ハローワークで延長可否を判断することとなりました。 - 提出書類の追加
現行の確認書類である「入所保留通知書」や「入所不承諾通知書」に加えて、本人が記載する申告書及び市区町村に保育所等の利用申込みを行った時の申込書の写しが必要となります。 - 延長要件の追加
「速やかな職場復帰の為に保育利用を希望しているか」を確認するため、以下の要件が追加審査されます。
・申し込んだ保育所等が自宅や勤務先から遠隔地(※)の施設のみになっていないこと
・市区町村への保育利用の申込に当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと
※遠隔地の判断基準として、自宅又は職場からの移動時間を30分以上とする予定。
上記提出書類の追加や新たな要件は施行日以降に育児休業にかかる子が1歳または1歳6か月に達する育児休業取得者に適用されます(パパママ育休プラスにより1歳2か月までの範囲で延長している場合は、その終了予定日が施行日以降である者)。
本改正後はハローワークにて、より厳格な審査が行われることになりますので、人事担当者は該当する育児休業取得者へ早めに案内をするなどの対応を行ったほうがよいでしょう。
<厚生労働省>
雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案概要(育児休業給付関係) - 厳格化の背景
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2024年4月11日
<解説動画あり>高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月1日施行)
*解説動画はこちら2024年4月号「2025年4月高年齢雇用継続給付の縮小」
2020年に雇用保険法が改正され、2025年4月1日から高年齢雇用継続給付が段階的に縮小されることが決定しました。改正の概要や背景、会社に求められる対応について解説いたします。
- 改正の概要
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の被保険者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった方を対象に支給される給付金です。今回の改正では、2025年4月1日以降に新たに60歳となる方への給付率が以下のように縮小されます。
◆現行
給付率は賃金の原則15%
ただし、賃金と給付額の合計が60歳到達時点の賃金に比べて
61%を超え75%未満の場合は給付額を逓減。75%を超える場合は不支給。◆2025年4月1日以降
給付率は賃金の原則10%
ただし、賃金と給付額の合計が60歳到達時点の賃金に比べて
64%を超え75%未満の場合は給付額を逓減。75%を超える場合は不支給。- 縮小の背景
高年齢雇用継続給付の縮小の背景には、2013年4月1日に施行された高年齢者雇用安定法の改正が挙げられます。企業は同改正で「65歳までの雇用確保措置」をとることが義務づけられており、2025年4月1日にその経過措置期間が終了します。このような法改正により高年齢者の労働環境が整備されつつあることから、高年齢雇用継続給付の段階的な縮小の決定がなされました。 - 会社に求められる対応
高年齢雇用継続給付の縮小に伴い、収入が減少する従業員の発生が見込まれます。高年齢雇用継続給付による補填を見込んだ賃金制度は見直しが必要でしょう。また、パートタイム・有期雇用労働法第8条では、正社員と非正社員の間で不合理な待遇差を設けることが禁止されています。定年後再雇用に於いても、職務内容、職務内容・配置変更の範囲等を正社員と比較して不合理な待遇差がないか、改めて確認を行いましょう。
<厚生労働省>
『高年齢者雇用安定法改正の概要』リーフレット
<厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第188回)資料>
『高年齢雇用継続給付について』 - 改正の概要
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2024年3月15日
<解説動画あり>2024年度から労災保険料率が改定されます
*解説動画はこちら2024年3月号「労働保険の成立手続 正しくできていますか?」
2024年4月1日より労災保険料率が改定されます。労災保険制度は、業種別に労災保険率を設定する制度を採用していますが、全54業種のうち、保険料率が引き下げられたのが17業種、引き上げ3業種、34業種が据え置きとなっています。業種平均では0.1/1000引き下げとなり、20年前から継続して引き下げ傾向にあります。
- 労災保険料率の算定方法
今回、6年ぶりに労災保険料率が改定されますが、労災保険料率は3年ごとに 審議されており、将来にわたって労災保険事業の財政の均衡を保つことができるよう、事業の種類ごとに過去3年間の保険給付実績等を加味して決定されます。なお、令和6年度分は、業種別に2.5~88/1000の範囲で定められています。 - 労働保険に係る手続
労働者が業務上の事由で負傷した際、労災保険料を財源とした労災保険制度から必要な給付を受けることができますが、給付を受けるためには、正しい手続と保険料の納付が不可欠です。
- 労働保険関係成立届
一部の個人経営の事業所を除き、労働者を1人でも雇用する事業所は、労災保険へ加入しなければなりません。なお、これは法人単位ではなく、事業所単位で手続を行う必要があるため 本社以外に支店や営業所等を新たに設立した場合も、原則、手続が必要です。なお、事務手続の簡素化を図るため、同一事業主であることや事業の種類が同じであること等を要件に、複数の事業所の保険関係を1つにまとめることができます。(継続事業の一括) - 労働保険料の納付
労働保険料は、年度の当初に1年分の保険料を概算で申告・納付し、翌年度の当初に、実際に労働者へ支払った賃金額をもとに保険料を確定・申告して、精算するしくみになっています。一般的に、この手続を「労働保険年度更新」といい、毎年6月1日から7月10日までの間に行います。
- 労働保険関係成立届
なお、会社が適切に保険加入手続を行わず、その間に労災事故が発生した場合、会社が保険給付額を負担しなければならないケースもあります。労働保険の手続状況につきまして、ぜひこの機会に一度確認してみましょう。
<厚生労働省>
令和6年度 労災保険料率表
労働保険特設サイト - 労災保険料率の算定方法
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2024年2月14日
<解説動画あり>2024年10月以降の短時間労働者に対する社会保険の適用拡大
*解説動画はこちら2024年2月号「2024年10月 社会保険の適用拡大」
2024年10月以降、短時間労働者の社会保険の適用範囲が拡大されます。これまで、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業が対象となっていましたが、2024年10月より、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業で働く短時間労働者も、加入要件を満たせば社会保険への加入が義務付けられます。
- 加入要件
厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業で働く短時間労働者で、下記要件に全て該当する場合、健康保険・厚生年金保険の加入が必要です。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)所定内賃金が月額8.8万円以上であること
(3)学生でないこと
(4)2か月を超える雇用の見込みがあること - 適用拡大の対象となる事業所への通知
2023年10月から2024年7月までの各月において、厚生年金保険の被保険者総数が6か月以上50人を超えたことが日本年金機構にて確認できた事業所に対して、2024年9月上旬に「特定適用事業所該当に関する事前のお知らせ」が送付されます。その後、2024年10月上旬に「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。事前勧奨状として「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付される場合もありますので、いずれも受領した際には内容を必ず確認しましょう。
<日本年金機構>
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
被保険者数が51人以上の企業等の事業主のみなさまへ - 加入要件
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2024年1月15日
障害のある人への合理的配慮の提供の義務化
2024年4月より障害者差別解消法が改正され、これまで努力義務であった事業者の障害のある人に対する合理的配慮の提供が義務化されます。この改正により、障害のある人からバリア(障壁)を取り除くために、何らかの対応を求められた場合、事業主は合理的な配慮をすることが求められます。今回は本改正について具体的に説明します。
- 対象となる事業者
本法における「事業者」とは、商業その他の事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別は問いません。個人事業主やボランティア活動をするグループなども「事業者」に含みます。 - 合理的な配慮の提供とは
社会生活において障害がない人には簡単に利用できることでも、障害がある人にとっては利用が難しいものが多く存在します。そのバリアを取り除くことで、障害がある人でも制限なく活動できるよう配慮することを「合理的な配慮の提供」といいます。しかし、合理的な配慮の提供の内容は、障害特性や個々の状況により異なります。必要な対応について障害のある人と事業者が話し合い、相互理解を重ねて検討していくことが重要です。 - 事業者としての取り組み方
事前に主な障害特性や合理的な配慮の具体例を確認しましょう。内閣府のポータルサイトでは、障害特性ごとの「合理的配慮の提供」の事例が紹介されています。また、障害のある人にとってバリアとなるルールやマニュアルがないかを確認し、見直しを進めましょう。
同じく2024年4月から、障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられますが、共生社会の実現に向けて、障害の有無にかかわらず、1人1人が活躍できる社会を実現するために、会社として対応できることを検討していくことが求められています。
<内閣府>
障害者差別解消法が改正に 事業者にも合理的配慮の提供が義務化されます
障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト - 対象となる事業者
人事労務