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2023年12月12日
<解説動画あり>建設業・自動車運転の業務における時間外労働の上限規制
*解説動画はこちら2023年12月号 建設業・自動車運転の業務における時間外労働の上限規制
2019年4月に働き方改革による労働基準法の改正が行われ、時間外労働の上限規制が行われました。但し、特定の4つの事業・業務については、適用が猶予されています。今回は、2024年3月で猶予措置が終了し、同年4月から新たに適用される建設業・自動車運転の業務に係る時間外労働の上限規制について解説いたします。
原則
下記(1)~(3)が労働基準法に規定されています。
(1)時間外労働の上限は、原則、月45時間、年360時間まで。
(2)特別条項を適用する場合は、(1)の上限を超えて時間外労働を行うことが可能。
適用時でも、年720時間以内、2~6か月の複数月平均80時間以内(※)
単月100時間未満(※)に抑える必要がある。
※ 休日労働時間を含む
(3)特別条項により時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回まで。A. 建設業
- 原則の(1)~(3)いずれも適用されます。
- 但し、「災害時の復旧・復興に係る事業」については、(2)のうち、「2~6か月の複数月平均80時間以内」、「単月100時間未満」の規制が適用されません。
B. 自動車運転の業務
- 原則の(1)は適用されます。
- (2)のうち、「年720時間」は、「年960時間」に置き換えられます。また、「2~6か月の複数月平均80時間以内」、「単月100時間未満」の規制は適用されません。
- (3)の規制は適用されません。
また、建設業・自動車運転の業務については、時間外労働の上限規制が適用されることに伴い、2024年4月より36協定の様式も変更になります。上限規制適用前までに、社内で準備を進めましょう。
<厚生労働省>
時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 -
2023年11月14日
<解説動画あり>心理的負荷による精神障害の労災認定基準
*解説動画はこちら2023年11月号心理的負荷による精神障害の労災認定基準
2023年9月1日付で「心理的負荷による精神障害の認定基準」が 改正されました。業務に起因する精神障害の、より適切な労災認定、審査の迅速化、請求の容易化を目的とした本改正のポイントについて解説いたします。
(1)業務による「※心理的負荷評価表」の見直し
心理的負荷評価表に以下の「具体的出来事」が追加されました。
・顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(いわゆるカスタマーハラスメント)
・感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した
心理的強度が「強」「中」「弱」となる具体例が拡充されました。
・パワーハラスメント6類型すべての具体例等を明記
※心理的負荷評価表:実際に発生した業務上の出来事を、同表の「具体的出来事」に当てはめ、ストレスの強さを評価したもの(2)精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直し
業務外で既に発病していた精神障害について、悪化前おおむね6か月以内に、業務による「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したと医学的に判断されるときは、悪化した部分について業務との因果関係(業務起因性)が認められます。(3)医学意見の収集方法を効率化
労災認定までの期間短縮のため、複数の専門医による意見収集から、専門医1名の意見のみで決定できる事案が増えました。詳細につきましては、厚生労働省ホームページもあわせてご確認ください。
<厚生労働省>
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました -
2023年10月13日
<解説動画あり>厚生労働省から「年収の壁・支援強化パッケージ」が公表されました
*解説動画はこちら2023年10月号 年収の壁・支援強化パッケージ
配偶者の扶養に入っているパートの方が一定収入を超えると社会保険への加入が必要になり、これを避けるための就業調整を「年収の壁」と称します。政府はこれが人手不足の一因と見なし、「年収の壁・支援強化パッケージ」という施策を発表しました。
- 具体的な「年収の壁」とは
(1)106万円の壁(被用者加入保険)
短時間労働者は年収約106万円(月額8.8万円)で社会保険に加入し、保険料を負担しなくてはなりません。
(2)130万円の壁(被扶養者認定基準)
年収130万円を超えると配偶者の健康保険・厚生年金保険の被扶養者からはずれ、自分で国民年金・国民健康保険に加入しなければならなくなります。
(3)配偶者手当
収入が一定額を超え扶養からはずれると、配偶者の手当が支給されなくなることがあります。 - 「年収の壁・支援強化パッケージ」の概要
(1)「106万円の壁」の対策
「キャリアアップ助成金」のコースが新設され、短時間労働者が手取り減少を気にせず働けるよう、手取りを増やす取り組みを行う事業主に対し労働者一人あたり最大50万円が助成されます。また年収106万円を超えた方に対し本人負担の社会保険料相当を補填する「社会保険適用促進手当」を支給することで、最大2年間手取り減少を防止できる仕組みを導入します。この手当は社会保険料算定の基礎となる報酬額に含まないものとなります。
(2)「130万円の壁」への対応
労働時間延長等に伴い一時的に収入が変動し、年収が130万円以上となる場合には、「事業主の証明」を添付することで、原則連続2回まで被扶養者として認定が可能になります。
(3)「配偶者手当」への対応
令和6年春の賃金見直しに向けた労使の話し合いの中で、配偶者手当の見直しが進むよう「見直し手順のフローチャート」が公表予定です。
年収の壁による人手不足は、多くの企業が直面し得る問題です。新しい施策を活用して、気持ちよく働ける環境を整えていきましょう。この制度の詳細は、厚生労働省ホームページをご確認ください。
〈厚生労働省ホームページ〉
年収の壁・支援強化パッケージ
「年収の壁」への対応策 - 具体的な「年収の壁」とは
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2023年9月15日
<解説動画あり>裁量労働制に係る新しい手続きについて
*解説動画はこちら2023年9月号 裁量労働制に係る改正
裁量労働制に係る省令・告示が改正され、2024年4月1日から施行されます。この改正に伴い、裁量労働制の導入および継続にあたり、実務にも大きな影響を与えることが見込まれます。今回は、比較的導入が進んでいる専門業務型裁量労働制(以下、専門型)の改正に焦点を当て概要および会社に求められる対応について解説いたします。
(1)労使協定に下記事項の追加が必要となります。
- 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
- 制度の適用に同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないこと
- 同意の撤回の手続きを定めること
- 同意及び同意の撤回について労働者ごとの記録を保存すること
(2)対象業務に、いわゆるM&Aアドバイザリー業務が追加され、現行の19業務から20業務に拡大されます。
この改正により、これまで労使協定と就業規則のみで適用できた専門型も労働者ごとに同意を得るプロセスが必要となります。同意者と非同意者が混在するような場合には、それぞれ賃金計算方法が異なるなど、管理も複雑化することが予想されます。
なお、施行日以降に新たにまたは継続して裁量労働制を導入するためには、つぎの時期までに労働基準監督署に協定届の届け出を行う必要があります。
- 新たに導入する事業場 :裁量労働制を導入、適用するまで
- 継続して導入する事業場:2024年3月末まで
このほか、企画業務型裁量労働制についても改正があります。裁量労働制を導入している、又は導入を考えている方は、早めに今後の措置を検討することをお勧めします。
<厚生労働省>
リーフレット「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」
https://www.mhlw.go.jp/content/001080850.pdf -
2023年8月14日
<解説動画あり>2024年4月改正 労働条件通知書の明記事項の追加について
*解説動画はこちら2023年8月号 2024年4月改正 労働条件明示のルール
2024年4月から、労働条件明示のルールが改正されます。労働基準法施行規則第5条第1項に規定されている「労働契約の締結・更新時に使用者が労働者に明示すべき事項」に、新たに4つの項目が追加されますのでご紹介いたします。
- 【就業場所・業務の変更の範囲】
全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、将来の配置転換などによって変わり得る場合はこれらの「変更の範囲」についても明示が必要となります。 - 【更新上限の有無と内容】
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働 契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要となります。なお、最初の契約締結後に新たに更新上限を設ける、または短縮する場合は、新設・短縮をする前に説明を行う必要があります。 - 【無期転換申込機会】
有期契約労働者の※「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要となります。 - 【無期転換後の労働条件】
有期契約労働者が無期転換の申込をした場合の無期転換後の労働条件を明示することが必要となります。特に労働条件の決定に当たり、他の通常の労働者(正社員や無期雇用フルタイム労働者など)とのバランスを考慮した業務内容・責任の程度・異動の有無などについて、労使間での誤解が生じないよう有期労働者に説明するよう努めなければなりません。
※「無期転換申込権」・・・労働契約法18条1項において定められた、同一使用者との間で2以上の有期労働契約が通算5年を超えて更新された際、労働者からの申し出により期間の定めのない労働契約に転換できる権利
明示事項の追加に伴い、労働条件通知書の整備が必要になりますので、改正に先んじて今のうちに準備を進めておきましょう。
<厚生労働省>
リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080267.pdf
モデル労働条件通知書の改正イメージ
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080104.pdf - 【就業場所・業務の変更の範囲】
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2023年7月14日
<解説動画あり>健康保険被保険者資格取得届等のマイナンバー記載の徹底
*解説動画はこちら2023年7月号 社会保険手続書類へのマイナンバー記載の徹底
健康保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第81号)が令和5年6月1日から施行されました。この省令改正による手続事務への影響を確認しましょう。
- 主な改正の内容
- 資格取得に関する届出について、個人番号の記載義務を明確化する。
- 事業主は、資格取得届に関し、被保険者に対して個人番号の提出を求め、又は記載事項に係る事実を確認することができるものとする。
- 保険者は、届出を受けた日から5日以内に、被保険者等の資格情報を、社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に提供する。
この省令改正により、健保組合等はマイナンバーを含む資格情報を5日以内に提供するため、事業主にマイナンバー記載の徹底を求めることとなりました。
- 健保組合への届出
事業主は、事実発生日(取得日・扶養開始日)から5日以内にマイナンバーを記載した資格取得届・被扶養者異動届を健保組合へ届け出ることとされています。入社予定の従業員には、内定から入社までの間にマイナンバーを提出してもらい、期日までに届出ができるようにしましょう。
また扶養追加の手続きの場合も、従業員には対象家族のマイナンバーを速やかに提出してもらう必要があります。特に出生の場合、マイナンバー記載の住民票を取得することで、個人番号通知書を受け取るよりも早くマイナンバーを確認することができます。
マイナンバーの収集を外部へ委託している場合は、より早期に収集できるよう収集フローの見直しを行うことも効果的です。
なお、住民票に記載されている漢字氏名、カナ氏名、生年月日、性別、住所が記載されていればマイナンバーの記載がない届出も受け付ける健保組合もある ので、加入されている健保組合の運用を確認してみるのもよいでしょう。
<厚生労働省 健康保険法施行規則等の一部を改正する省令の公布等について(通知)>
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230601S0030.pdf - 主な改正の内容
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2023年6月15日
<解説動画あり>マイナンバー改正法案の成立 健康保険証を廃止しカード一本化へ
*解説動画はこちら2023年6月号 2023年6月 マイナンバー改正法案の成立
2023年6月2日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正マイナンバー法)が可決・成立しました。
これにより2024年の秋を目途に、現行の健康保険証は廃止となります。今回は、「マイナンバーカードの保険証利用」と「マイナンバーカードと健康保険証の一体化」について取り上げます。
- マイナンバーカードの保険証利用
マイナンバーカードの保険証利用は、2021年10月より運用がスタートしています。マイナンバーカードに保険証の利用登録を行ったものを「マイナ保険証」といい、2023年6月4日時点での「マイナ保険証」の登録件数は約6,334万件となり、マイナンバーカードの保有者のうち約69.3%が保険証の利用登録を完了しています。(出典:デジタル庁「政策データダッシュボード(ベータ版)」)
「マイナ保険証」を持参すれば健康保険証がなくとも医療機関・薬局を利用できますが、現時点では全ての医療機関、薬局で使用できるわけではなく、オンライン資格確認が導入されている医療機関・薬局に限られています。 - マイナンバーカードと健康保険証の一体化
政府は2024年秋を目途に、マイナンバーカードと健康保険証を一体化し、紙やプラスチックカードの健康保険証を廃止することを決定しました。
これにより、「マイナ保険証の使用」は事実上、義務化となりますが、一方でマイナンバーカードを持たない人、持っていても保険証の利用登録を行っていない人、紛失した人が保険診療を受けられるように、健康保険組合などの保険者が申請に基づき保険証の代わりとなる1年間有効の「資格確認書」を無料で発行する予定となっています。また、発行済みの従来の健康保険証は、廃止後の最長1年間を有効とする経過措置も設けられる予定です。 - マイナ保険証のメリット
マイナ保険証は次のような活用ができます。
1.データ基づく診療・薬の処方が受けられる
初めての医療機関でも、これまでの診療データを確認しながら診療・治療を受けることができます。
2.転職などをしても健康保険証として使える
新しい医療保険者への手続きが済んでいれば、マイナンバーカードでそのまま受診することができます。
3.高額療養費の手続き省略
マイナ保険証を利用できる医療機関では「限度額適用認定証」は不要となり、窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。
4.確定申告の医療費控除手続きの自動化
従来の領収書を保存する必要がなく、マイナポータルとe-Taxを紐づけることで、医療費通知情報が自動で入力され、医療費控除の申告が簡便に行えるようになります。
マイナ保険証については、別人の情報をひも付けるなどトラブルが相次いでいますが、人事・労務担当者はそのメリットを理解し、健康保険証廃止に向け、マイナンバーカードの取得やマイナ保険証への切替、「資格確認書」の発行などについて、社員へのアナウンスが必要となります。
また、会社が行う健康保険の資格取得手続きは従来通り必要となりますので、資格取得手続きの様式や運用変更など、保険者からの情報を注視し、早めに対応を講じるようにしましょう。
<厚生労働省>
マイナンバーカードの健康保険証利用について
<デジタル庁>
マイナンバー法等の一部改正法案の概要 - マイナンバーカードの保険証利用
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2023年5月12日
<解説動画あり>令和4年度の確定保険料の算定方法について
*解説動画はこちら2023年5月号 令和4年度 労働保険年度更新
令和4年度は雇用保険料率が年度の途中で変更されたことに伴い、労働保険年度更新における確定保険料の算定方法が、例年と異なる場合があります。原則の手続きと併せてしっかり確認しておきましょう。
- 労働保険年度更新とは
労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を単位(保険年度)として、労働者に支払われる賃金総額に、事業の種類ごとに定められた保険料率を乗じて、保険料を決定します。 保険料は前払いで、年度当初におおよその賃金総額で1年分の概算保険料を申告・納付した後、年度末の最終的な賃金総額で確定保険料を算定し、前払いした保険料の精算を行います。事業主は毎年、前年度の確定保険料の精算と当年度の概算保険料を併せて申告・納付する必要があり、この手続きを「年度更新」と言います。 - 手続き期間・申告方法
「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」(以下、申告書)を作成し、毎年6月1日から7月10日までの間に、所轄の労働基準監督署、都道府県労働局または金融機関へ提出します。 - 令和4年度の確定保険料算定方法
- 一元適用事業・二元適用事業(雇用)
※例年と異なります※
労働者に支払った賃金総額の千円未満を切り捨てた額(保険料算定基礎額)を前期(令和4年4月1日から同年9月30日)と後期(令和4年10月1日から令和5年3月31日)に分けて集計します。前期・後期の保険料算定基礎額に、労災保険料率と雇用保険料率を乗じて保険料を算出します。前期と後期の保険料を合算した額が、確定保険料となります。この変更に伴い、申告書に新たに「期間別確定保険料算定内訳」欄が設けられています。 - 二元適用事業(労災)
例年の算出方法に変更はありません。
- 一元適用事業・二元適用事業(雇用)
詳細につきましては、厚生労働省リーフレットをご確認ください。
- 労働保険年度更新とは
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2023年4月13日
<解説動画あり>職場における学び・学び直しの「リスキリング」について
*解説動画はこちら2023年4月号 リスキリングの必要性
「リスキリング」は岸田内閣の総合経済対策の一つである「構造的な賃上げ」の実現に向けた取り組みの一つとして盛り込まれたこともあり、報道で耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、昨今注目の集まる「リスキリング」について解説します。
- リスキリングとは
英語では「Reskilling」と表記されるように、働き方の変化よって今後新たに必要となる技術やスキルを身に着けることをいい、職業能力の再開発、再教育を意味します。 - リカレント教育とリスキリングの違い
どちらも「学び直し」としての意味合いを持つ言葉として注目されていますが、両者の概念には違いがあります。
- リカレント教育
一度仕事を離れて大学などの教育機関に戻り、専門知識や技術を習得して復職すること - リスキリング
企業が事業戦略の一環として従業員に対して、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させること
つまり、リカレント教育は新しく何かを学ぶために一度キャリアを中断することが前提となるのに対して、リスキリングは仕事を続けながら新しいスキルを習得することで、会社の事業上の成果につなげることに主軸が置かれています。
- リカレント教育
- DXとリスキリングの相関関係
DX(デジタルトランスフォーメーション)などによる産業構造や企業戦略の変化において、新たに必要となる業務・職種に対応できる人材を育成するという点でリスキリングの重要性が増しています。日本におけるリスキリングの取組みとして2022年11月に帝国データバンクによる公表では、DX取組企業のうちリスキリングの取組割合は81.8%に上るのに対し、DX未取組企業のリスキリング取組割合は32.2%となっており、DXを推進している企業の方がリスキリングにも取り組んでいるという相関関係があることが分かります。 - リスキリングの支援
リスキリングの導入方法としては、オンライン研修やeラーニング、ワークショップが挙げられますが、2022年12月に研修費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度として人材開発支援助成金に新しく「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。「リスキリングに興味はあるけど、コスト面でなかなか手が付けられない」という企業にとって最適な助成金といえます。活用を検討してみてはいかがでしょうか。
IT・データ分野を中心とした専門的・実践的な教育訓練講座を経済産業省大臣が認定する制度として「リスキル講座(第四次産業革命スキル習得講座)認定制度」の創設、官民一体でリスキリング機会の創出を目的とした「日本リスキリングコンソーシアム」が発足されるなど、今後、リスキリングへの関心はますます高まるものと思われます。リスキリングの普及及び動向が注目されます。
<厚生労働省ホームページ>
「人材開発支援助成金に事業展開等リスキリング支援コースを創設しました」<帝国データバンク>
「DX推進に関する企業の意識調査」<日本リスキリングコンソーシアム>
https://japan-reskilling-consortium.jp/ - リスキリングとは
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2023年3月15日
<解説動画あり>障害者の法定雇用率引き上げについて
*解説動画はこちら2023年3月号 2023年4月 障害者雇用率の改定
企業に義務づけている障害者の法定雇用率を現在の2.3%から大幅に引き上げられることが決定されました。合わせて、事業主支援の強化として助成金の新設・拡充策が発表されています。今号では主な変更点について、解説します。
- 障害者の法定雇用率が段階的に引き上げ
変更後の法定雇用率は2.7%となるものの、引き上げ幅が大きいため2023年4月以降の法定雇用率は現在の2.3%で据え置かれ、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%と段階的な引き上げが予定されています。この引き上げにより、1人以上の障害者を雇用すべき事業主の範囲が以下のように広がります。
・2023年4月~ 従業員数:43.5人以上
・2024年4月~ 従業員数:40.0人以上
・2026年7月~ 従業員数:37.5人以上 - 除外率の引き下げ
障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種(建設業、道路貨物運送業、医療業等)について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除(障害者の雇用義務を軽減)する制度があります。この除外率制度は廃止が決定しており、経過措置として段階的に引き下げ・縮小が行われています。2025年4月から10%引き下げられる予定です。 - 国による事業主への支援策強化
雇用率引上げの影響を受ける事業主への支援策として2024年4月より、既存の助成金の拡充や新たな助成金を制度化することが検討されています。併せて、法定雇用率の算定に含めることのできる労働者について、現在は週の所定労働時間が20時間以上の障害者を対象としていたところ今後は「週10時間以上20時間未満」で働く精神障害者、重度の身体障害者及び重度の知的障害者についても、法定雇用率の算定対象とすることが可能となります。
<厚生労働省ホームページ>
「障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について」 - 障害者の法定雇用率が段階的に引き上げ
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2023年2月14日
<解説動画あり>2023年4月から男性の育児休業等の取得状況公表が義務化されます
*解説動画はこちら2023年3月号 2023年4月 障害者雇用率の改定
2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行されています。今改正は男性の育児休業取得を推進する点に重きが置かれており、2023年4月の施行では従業員数が1000人を超える企業を対象に、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられています。ここでは、企業に求められる対応について解説します。
- 対象となる企業
常時雇用する労働者数が1000人を超える事業主が対象となります。 - 公表内容
公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)における次の(1)または(2)のいずれかを選択して公表します。
- 男性労働者の育児休業等の取得割合
育児休業等を取得した男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数 - 男性労働者の育児休業等及び育児を目的とした休暇の取得割合
(育児休業等を取得した男性労働者の数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇を取得した男性労働者)÷配偶者が出産した男性労働者の数
- 男性労働者の育児休業等の取得割合
- 公表時期
公表前事業年度の終了後、おおむね3か月以内に公表します。実際には、2023年4月1日以後に開始する事業年度から対象となります。
(例)事業年度が4月~翌年3月の場合
2022年4月~2023年3月の実績をおおむね2023年6月末までに公表 - 公表方法
インターネットの利用やその他適切な方法で一般の方が閲覧できるように公表することが求められます。自社のホームページ等のほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表することも推奨されています。
今回の改正は大企業が対象となっていますが、中小企業においても積極的に公表することで男性の育児休業に対するポジティブなイメージを印象づけることができます。厚生労働省は、男性の育児休業取得率を2025年までに30%にすることを目標に掲げており、今後はさらなる改正が行われることも予想されます。男性も育児休業を取得しやすい職場環境づくりを進めるとともに、企業の経営戦略や採用戦略においてもひとつの指標として活用してみてはいかがでしょうか。
<都道府県労働局>
リーフレット
「2023年4月から従業員が1000人を超える企業は男性労働者の育児休業取得率等の公表が必要です」 - 対象となる企業
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2023年1月13日
<解説動画あり>賃金のデジタル払いが2023年4月に解禁されます
*解説動画はこちら2023年1月号 2023年4月 賃金のデジタル払い
賃金の支払方法について労働基準法第24条では通貨払いが原則となっていますが、例外として労働者の同意を得た場合には労働者が指定した銀行口座や証券総合口座に振り込むことが認められています。この度、労働基準法施行規則の一部を改正する省令が公布され、2023年4月より資金移動業者(〇〇Pay等)への資金移動による賃金支払い(賃金のデジタル払い)も認められることとなりました。ここでは、今後、会社に求められる対応について解説いたします。
■デジタル払いができる資金移動業者とは
賃金のデジタル払いとは、給与を現金や銀行口座への振込によらず資金移動業者の口座へ資金(給与)を移動することにより賃金を支払う方法です。資金移動業者とは、銀行等以外のものが為替取引(現金輸送によらない送金)を業として行うものであり内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。賃金のデジタル払いでは、この内、一定の要件を満たす厚生労働大臣の指定を受けた「指定資金移動業者」に限り、従業員が口座として指定することが可能となります。■会社に求められる対応は
(1)労使協定の締結
労働組合または労働者の過半数を代表する者と対象となる従業員や対象となる賃金や金額の範囲、実施開始時期などについて労使協定を締結することが必要です。
(2)従業員への賃金支払い口座の選択肢の提示
資金移動業者の口座への賃金支払いを強制することはできません。また、資金移動業者の口座のみを提示することも禁止されており、労働者が銀行口座または証券総合口座への賃金支払いも併せて選択できるようにする必要があります。
(3)従業員への説明
銀行との違いや具体的な仕組みや留意事項(口座の上限額や破綻時の補償、アカウントの有効期限)などについて従業員に説明することが求められます。
(4)従業員の同意取得
従業員が資金移動業者の口座への支払いを希望する場合、同意書を取る必要があります。給与のデジタル払いはあくまでも選択肢の一つであり会社にデジタル払いを強制するものではありませんが、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、賃金のデジタル払いのニーズは高まっていくことが予想されます。導入するかどうかの検討を含め、随時、最新情報に注視しながら早めに対策を講じるようにしましょう。
(厚生労働省 資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html
人事労務