-
2021年12月14日
令和4年1月新設 65歳以上労働者の「雇用保険マルチジョブホルダー制度」
令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象にした「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されます。
現行の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が1週間の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等の要件を満たす場合に適用されます。
本制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の要件を満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者=「マルチ高年齢被保険者」となることができる制度です。
- 適用要件
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
要件を満たし適用を希望する労働者は、ご自身で手続きを行います。手続きに際しては、いくつか注意点があります。
- 手続きの際の注意点
- 手続きは、制度を受ける本人の住所又は居所を管轄するハローワークで行う
- 申出を行った日から被保険者となる(申出日以前の遡り不可)
- 被保険者の資格を取得した日から雇用保険料の納付義務が発生する
- 加入は任意でも、任意での脱退はできない
手続きは労働者自身で行いますが、雇用の事実や所定労働時間など、事業主の証明が必要となる為、企業側は労働者からの依頼に基づき、速やかに必要な証明を行います。また、通常の被保険者と同様、賃金総額に応じた雇用保険料の納付も必要となります。
本制度を利用して雇用保険に加入した労働者が離職した場合、離職日以前の1年間に雇用保険被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること等の要件を満たせば、「高年齢休職者給付金」を一時金として受給できるようになります。その他、育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付等も受給対象となります。
70歳までの定年引き上げや、定年制の廃止など、高齢者の就業確保が求められる一方で、高齢者にとってはフルタイムでの就業の継続が難しいケースも少なくありません。一か所での就業だけでなく、副業・兼業という働き方の選択肢が広がる本制度は、高齢者の活躍の場を広げるきっかけにもなります。また、企業においてはニーズに答えたより柔軟な雇用が求められることとなります。
<厚生労働省:雇用保険マルチジョブホルダー制度について>
労働者向けリーフレット:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838540.pdf
事業主向けリーフレット:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838542.pdf
Q&A:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508_00002.html - 適用要件
-
2021年11月15日
育児休業給付に関する被保険者期間の要件緩和について
育児休業開始日が令和3年9月1日以降の方を対象に、育児休業給付を受給する際の被保険者期間の要件が緩和されます。この改正により、今まで要件を満たすことができず給付を受けられなかった場合でも、支給対象となる可能性がありますのでご注意ください。
- 現行
「育児休業開始日」を起算として、その日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月(育児休業開始日前日から1ヵ月ごとに区切った期間)が、12ヵ月以上あること - 改正後
「産前産後休業開始日等」を起算として、その日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が、12カ月以上ある場合には、育児休業給付の支給に係る被保険者期間要件を満たすものとすること
これまで、育児休業開始日を起算としていたため、給料を受けることができない産前産後休業期間は、育児休業給付の被保険者期間を算定するうえでは、賃金支払基礎日数の要件を満たさない期間として処理せざるをえませんでした。
今回の改正により、産前産後休業開始日等を起算として被保険者期間を計算するため、上記の問題が解決され、同時に支給対象者が拡大する可能性があります。
育児休業開始日が令和3年9月1日以降の方から対象となります。よって、これまで要件を満たさず不支給とされていた場合でも、改正後の要件に該当する可能性があるため、確認する必要があります。
今では育休を取得して働く女性の割合は、83%にのぼります。育児休業給付金はお休みしている間の所得補償の位置づけとなりますので、産育休を取得する社員が 安心して休みに入ることができるよう、社内でも法改正の内容を確認しておきましょう。
<厚生労働省Webサイト> - 現行
-
2021年10月14日
育児・介護休業法改正における令和4年4月1日施行内容について
令和3年6月に育児・介護休業法が改正されました。 改正概要の以下5点は令和4年4月1日から段階的に施行となります。
- 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
- 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
- 育児休業の分割取得
- 育児休業の取得の状況の公表の義務付け
- 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
今回は令和4年4月1日に施行される2.および5.に焦点を当て解説いたします。
上記「2.育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け」ですが、具体的には 次の通りです。
【育児休業を取得しやすい雇用環境の整備】
育児休業と産後パパ育休制度(出生時育児休業制度のことで、本来の育児休業とは別に、産後8週間以内に4週間を上限に一括または2回まで分割して休業 取得できる制度)の申し出が円滑に行われるように、以下のいずれかの措置をとらなければなりません。
(1)研修の実施
(2)相談窓口の設置
(3)自社の育児休業取得事例の収集・提供
(4)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知【妊娠、出産を申し出た本人または配偶者に対する個別の周知・意向確認】
(1)周知事項
・育児休業・産後パパ育休に関する制度
・育児休業・産後パパ育休の申し出先
・育児休業給付に関すること
・労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
(2)周知・移行確認の方法
・面談、書面交付、FAX、電子メールのいずれかまた、「5.有期雇用労働者に対する育児・介護休業取得要件の緩和」ですが、法改正前の取得要件は、以下の2点のいずれも満たす必要があります。
(1)引き続き雇用された期間が1年以上
(2)1歳6ヵ月までの間に契約満了することが明らかでない今回の法改正で上記(1)の要件が撤廃となり、無期雇用労働者と同様の取扱いになります。ただし、別途労使協定を締結している場合は、引き続き除外することが可能です。育児休業給付についても同様の緩和が行われます。
令和3年6月の改正内容は令和4年4月1日以後3段階に分けて施行されます。内容についての理解とともに、就業規則の見直しはもとより従業員への周知 および実務上の対応についての検討が必要になります。いまから内容理解を進めていく必要があります。厚生労働省Webサイト「育児介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html -
2021年9月14日
保険者から被保険者へ健康保険証の直接送付が可能になります
2021年10月以降、健康保険証を保険者から被保険者へ直接送付することが可能となります。現在は、健康保険証について「被保険者証の交付をするときは、事業主に送付しなければならない」と健康保険法施行規則に定められていますが、コロナ禍における在宅勤務が進む中、人事担当者が保険証を従業員に渡すためだけに出社する必要があり、制度の見直しが求められていました。
そこで今回の制度変更では、以下のような変更が加えられました。「保険者は、前項の規定により被保険者に被保険者証を交付しようとするときは、これを事業主に送付しなければならない。ただし、保険者が支障がないと認めるときは、これを被保険者に送付することができる。」
この「保険者が支障がないと認めるとき」とは、どのような状況を想定しているのか、厚生労働省は以下の通り回答しています。
「事務負担や費用、住所地情報の把握等を踏まえた円滑な直接交付事務の実現可能性や、関係者(保険者・事業主・被保険者)間での調整状況等を踏まえ、保険者が支障がないと認める状況を想定している。」
(厚生労働省「健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令の施行に関する留意事項等について」)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210816S0030.pdfこのように制度を活用する際には、関係者の実情に応じた具体的運用方法(費用の負担や送付方法等)が求められることとなり、細部の事務的事項が詰まり次第、順次案内がなされるものと思われます。
なお、事業所整理記号及び被保険者整理番号は引き続き事業主に通知され、事業主は通知された事業所整理記号及び被保険者整理番号を適切に管理することが必要となります。また、保険証の返納についても、これまで通り事業主を経由して保険者に返納しなければならないこととなっています。
働き方が変わる中で、社会保険等の事務的な取り扱いも電子化の進展など大きな変化が予想されます。情報のキャッチアップと社内の管理体制の見直しが求められます。
-
2021年8月12日
2021年最低賃金の目安が公表。全国加重平均は930円に
2021年の最低賃金の引き上げ額の目安が公表されました。昨年は新型コロナウイルスの影響を受け、引き上げ幅は1円に留まりましたが、全国加重平均930円は昨年の902円から28円の引き上げという、昭和53年度に目安制度が始まって以降最大の上げ幅となりました。
最低賃金の引き上げについては、「経済財政運営と改革の基本方針2021」 (骨太方針2021)の中で、「より早期に全国加重平均1000円とすることを目指す」と明記されていることから、上昇ペースが速まることが予想されますので、今後の動向が注目されます。
今回公表された各都道府県の引き上げ目安について、国はこれまで各都道府県を物価や経済状況に応じて、AからDの4つのランクに分け、ランクごとに引き上げ目安を示してきましたが、今回は全てのランクで28円としました。
(厚生労働省「令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について」)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19902.html目安通りの引き上げとなれば、最高額の東京においては1013円から1041円、最低額の沖縄などは792円から820円となります。引き上げは各都道府県労働局の審議・決定を経て、10月より順次適用となる見込みです。
地域別最低賃金は産業や職種にかかわりなく、原則すべての労働者に適用となります。最低賃金を下回る賃金設定は無効となるだけでなく、不足額に対する溯っての対応や罰則を科される可能性がありますので、事前の確認をしておきましょう。
-
2021年7月14日
退職金課税の見直しについて
従来、退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収前の金額) - 退職所得控除額) × 1/ 2 = 退職所得金額ただし、平成25年分以後、勤続年数5年以下の役員等の退職手当については、上記計算式の「1/2」を乗じることはできなくなっています。
令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等については、上記に加え、勤続年数5年以下の法人役員等「以外」の退職金についても、一定金額以上の部分について、上記計算式の1/2の計算の適用から除外されることとされました。
具体的には、退職所得控除額を控除した残額の300万円を超える部分について、1/2を乗じることができなくなります。
■国税庁:源泉所得税の改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0021004-072.pdfなお、「従業員の退職所得の収入金額の収入すべき時期」は退職金支給日ではなく、「退職日」となります。例えば令和3年12月31日付で退職した従業員に、令和4年1月25日に退職金を支払う場合は、令和3年分の退職所得となり、改正前の規定が適用されますので注意が必要です。
一般的なケース以外の退職所得の属する年分の判断については、以下をご参照ください。
■国税庁タックスアンサー:退職所得の収入金額の収入すべき時期
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2728.htmセカンドキャリアのデザインや、年金受給等のファナンシャルプランなど個々人の高齢化に対する備えを、いかに早い段階で戦略的にプランニング するかが、今後ますます重要になりそうです。
-
2021年6月14日
育児休業給付金等の手続の際、通帳等の写しが原則不要になります
押印・署名の省略など社会保険手続の簡素化が急速に進む中、さらに、育児休業給付金、介護休業給付金、高年齢雇用継続給付金の手続の際、通帳等の写しが原則不要になります。
現状、最初の支給申請にあたり、申請書記載内容の確認書類として払渡希望金融機関確認書類(通帳やキャッシュカードの写し等)の提出が必要です。しかし、令和3年8月1日から原則これが不要になります。 対象となる申請書は以下の通りです。
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続支給申請書
- 育児休業給付金受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 介護休業給付金支給申請書
ただし、手書きで申請書を作成する場合は、引き続き通帳等の写しが必要となりますのでご注意ください。
(厚生労働省「雇用継続給付等の申請を行う事業主等の皆さまへ」)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000783316.pdfなお、上記1.の高年齢雇用継続給付は、令和7年度から新たに60歳となる労働者への同給付の給付率を10%に縮小することが決まっています。
(厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し」)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000744250.pdfまた、上記2.および3.においても、関連して育児休業等の取り扱いが改正されておりますのでご注意ください。
(厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要」)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000788616.pdf今回、通帳等の写しが不要となることで、電子申請による手続きが従来の紙手続きに比べますます効率的であるといえます。電子申請による手続きは「場所、時間を問わず申請可能」「ペーパーレス化」など様々なメリットがあります。
行政による手続きの電子化および電子化による効率化を急速に進めている感があり、紙による手続きを実施されている事業所においては、電子化を進めるメリットは非常に高いといえるのではいでしょうか。
-
2021年5月13日
テレワーク時の交通費および在宅勤務手当の取扱い
コロナ禍でテレワークが急速に拡大しつつある中、これまでの通勤手当を見直したり、新しく「在宅勤務手当」を支給する企業が増えてきています。
そのような状況の中、厚生労働省年金局事業管理課長から日本年金機構事業管理部門担当理事宛に「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」」の一部改正について」という事務連絡が発出されました。
この事例集には、テレワークにおける交通費および在宅勤務手当の社会保険上の取り扱いが示されています。変更点の概要は以下のとおりです。
- 在宅勤務・テレワークを導入し、一時的に出社する際の交通費を事業主が負担する場合、その交通費が「報酬等」に含まれるどうかは当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かで異なる
- 労務提供地が自宅の場合:
業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、 「報酬等」には含まれない。 - 労務提供地が事業所の場合:
自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。
- 労務提供地が自宅の場合:
- 在宅勤務・テレワークに際し、在宅勤務手当が支給される場合「報酬等」に含まれるかは以下の基本的な考え方にのっとり、支給要件や支給実態をふまえ個別に判断される。
- 労働の対償として支払われる場合(実費弁償にあたらない):
在宅勤務手当が、在宅勤務に通常必要な費用として使用されなかった場合でも、その差額を事業主に返還する必要がないものであれば「報酬等」に含まれる。
(例)毎月5,000円を渡し切りで支給する。 - 実費弁償にあたる場合:
通信に要する費用など、その手当が業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償にあたるものとして「報酬等」に含まれない。
(例)労働者が業務のために使用した通信費等を立替払いにより負担 した後、その明細書を企業に提出して精算する。一括で請求される費用のうち、業務のために使用した部分を合理的に計算し、当該部分を実費弁償分とする。
- 労働の対償として支払われる場合(実費弁償にあたらない):
- 在宅勤務・テレワークの導入に伴い、新たに実費弁償にあたらない在宅勤務手当が支払われることとなった場合は、固定的賃金の変動に該当し随時改定(いわゆる月変)の対象となる。
- 同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合:
それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定のいずれの対象となるかを判断する。 - 新たに変動的な在宅勤務手当の創設と、変動的な手当の廃止が同時に 発生した場合:
創設・廃止される手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できない場合は、3か月の平均報酬月額が増額した場合、減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。 - 一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分がある場合:
当該実費弁償分は「報酬等」に含める必要はなく、それ以外の部分は「報酬等」に含まれる。この場合、月々の実費弁償分の算定に伴い実費弁償分以外の部分の金額に変動があった場合でも固定的賃金の 変動に該当しないことから、随時改定の対象とはならない。
- 同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合:
新しい働き方の普及に伴い、それに則した社会保険上の取扱いが示された形となります。一度現在の運用を確認しておくとよいでしょう。
▼事務連絡「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」」の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210405T0110.pdf - 在宅勤務・テレワークを導入し、一時的に出社する際の交通費を事業主が負担する場合、その交通費が「報酬等」に含まれるどうかは当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かで異なる
-
2021年4月14日
中途採用比率の公表が義務化されました
「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」が改正され、対象企業に正規雇用者の中途採用比率の公表が義務付けられました。
中途採用に関する情報を公開することで、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進することを目指しています。
以下より概要を解説いたします。
- 対象
常時雇用労働者数301人以上の企業ただし、常時雇用する労働者数が 300人以下の事業主であっても、その後300人を超えた場合は、その事業年度から対象となります。 - 公表すべき内容
直近の3事業年度の各年度についての、採用した正規雇用者の中途採用比率
「直近の3事業年度」とは、事業年度における正規雇用労働者の採用活動が終了し、正規雇用による中途採用者の状況をまとめることができる状態となった最新の事業年度から3事業年度を指します。
「中途採用」とは、新規学卒等採用者以外の雇い入れ者で、既卒者であって、新規学卒者と同じ採用枠で採用した者は含みません。 - 公表の方法
- 公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように公表する必要があります。
「インターネットの利用」とは、原則として自社のホームページの利用等を指します。また、厚生労働省がインターネット上に開設する「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」の利用も含まれます。
「その他の方法」とは、「日刊紙への掲載」等の広く情報を周知させる 方法のほか、事務所へ掲示や書類の備え付け等の方法により、求めに応じて一般の者が知り得るようにする方法をいいます。 - 公表する値は、原則として小数点以下第1位を四捨五入した整数値とします。ただし、事業主の判断で小数点以下第2位以下の位を四捨五入した値まで公表しても問題ありません。
- 初回の公表については、2021年4月1日の法施行後、最初の事業年度内に、2度目以降は前回の公表からおおむね1年以内に、可能な限り速やかに公表を行うこととされています。
- 公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように公表する必要があります。
詳細につきましては、厚生労働省ホームページをご参照ください。
<正規雇用労働者の中途採用比率の公表>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/tp120903-1_00001.html
労働者の主体的なキャリア形成による職業生活の更なる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備をさらに推進する必要がある、としています。公表の義務付けを踏まえた今後の対応が注目されます。
- 対象
-
2021年3月12日
高年齢者就業確保措置 ~70歳までの就業確保~
まず現行の高年齢者雇用確保措置をおさらいします。
以下のいずれかの雇用確保措置を講ずることが義務付けられています。(1)65歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)65歳までの継続雇用制度の導入ここに、今回の改正によって以下のいずれかの就業確保措置を講ずる努力義務が加わることとなります。
(1)70歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入大きな変化として、65歳までは「雇用」の確保のみに限定されていましたが、(4)、(5)のように「雇用」によらない措置も含め70歳までの「就業確保」(創業支援等措置)を検討することになります。
この、創業支援等措置を講ずる場合は、いくつかステップを踏む必要があるので、確認してみましょう。- 計画の作成
従事する業務の内容や支払う金銭など全12項目を盛り込んだ計画を作成します。 - 過半数労働組合等の同意
上記の計画についての同意を得る必要があります。 - 計画を周知
同意を得た計画については、就業規則などと同様に労働者に周知が必要です。
創業支援等措置を講ずる場合には、他に「労働者性がない働き方」という大前提が存在します。労働者性が認められる働き方となる場合には (1)~(3)の「雇用」による措置を講ずる必要があります。
また、継続雇用制度の導入についても継続雇用する事業主の範囲が異なりますので確認してみましょう。(1)65歳まで:自社・子会社、関連会社等の「特殊関係事業主」のみ
(2)70歳まで:特殊関係事業主以外の「他社」も継続雇用制度の対象事主とすることができるなお、上記(1)では、都道府県労働局長の認定を受けている場合に限り無期転換申込権は発生しませんが、(2)の特殊関係事業主以外の「他社」で継続雇用される場合には、特例の対象外となり無期転換申込権が発生します。
本改正について、もしまだ未検討の場合で施行日に間に合わない場合でも高年齢者雇用安定法Q&Aにもあるように、まずは未検討事業主に対しての啓発・指導が予想されます。ぜひ今からでも高年齢者人材の活躍できる環境づくりを検討してみて下さい。
- 計画の作成
-
2021年2月12日
時間外労働・休日労働に関する協定届の様式変更
法定時間外労働や法定休日労働が発生する事業場におきましては、事前に時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)を労使間で締結し、その内容を36協定届へ記入したうえで、労働基準監督署へ届け出る必要が あります。
2021年4月より、その36協定届の様式が変更になります。主な変更点は下記のとおりです。
(1)36協定届における押印・署名の廃止
労働基準監督署へ届け出る「36協定届」への押印・署名が不要になります。
(記名は必要です)
ただし、届の前提となる「36協定書」は、別途労使で合意したうえで労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法(記名押印又は署名など)により締結し、保管しておく必要があります。
また、36協定届が36協定書を兼ねる場合も、記名押印又は署名の省略は不可となります。(2)労働者代表に関するチェックボックスが新設
36協定の適正な締結に向けて、労働者代表に関するチェックボックスが新設されます。具体的には、下記の点を確認するためのチェックボックスです。
・管理監督者でないこと
・36協定を締結する者を選出することを明らかにしたうえで、投票、挙手等の方法で選出すること
・使用者の意向に基づいて選出された者でないこと各社テレワークが進む中、通常より署名や押印に時間を要しているところかと思いますが、早めに届出準備を済ませ、協定の有効期間前までに届出を行うようにしましょう。また、電子申請も可能ですので、必要に応じてご活用ください。
厚生労働省 2021年4月~ 36協定届が新しくなります
https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf -
2021年1月14日
算定基礎届・賞与支払届総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設
現在、社会保険の定時決定の届出および賞与支払の届出の際、各届出様式とは別途に、総括表を届け出ることになっています。この総括表について、事業主による電子申請の利用を促進するとともに、添付書類の省略を図るため、令和3年4月1日より廃止されることとなりました。
これまで添付していた総括表の対応は次の通り変更となります。
- 総括表の取扱い
算定基礎届等の提出の際に添付する次の総括表を廃止- 健康保険・厚生年金保険 被保険者月額算定基礎届総括表
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表
- 船員保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表
- 賞与を支給しなかった場合の取扱い
日本年金機構に登録した賞与支払予定月に、いずれの被保険者及び70歳以上被用者に対して賞与を支給しなかった場合は、総括表の廃止に伴い、新たに次のいずれかの「賞与不支給報告書」を届出
(なお、現状は、賞与が不支給であった旨を総括表にて届出が必要です。)- 健康保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書
- 船員保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書
また、登録されている賞与支払予定月に変更がある場合は、変更後の賞与 支払予定月の記載が求められます。
総括表の廃止は工数削減になります。一方で、特に算定基礎届総括表は、事業所に関する多くの情報を記載して提出することにより、事業所の情報を確認する機会がなくなることになりますので、常に事業所情報をアップデートし、正確な届出をすることが重要です。
<厚生労働省ホームページ>
「算定基礎届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について
(令和2年12月18日年管管発1218第2号)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T201222T0020.pdf - 総括表の取扱い
人事労務