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2017年12月12日
中小事業主に対する残業60時間超の割増賃金について
メールマガジン『法報タイムズ第570号(10月5日発行)』で、残業時間の上限規制が法律に格上げされることをお知らせいたしました。
■法報タイムズ第570号「残業時間の上限規制について」
http://www.romu.jp/cms_magazine/2017/10/570.htmlこの記事の中で働き方改革関連法案を整備している旨触れておりますが、残業時間の上限規制に加えて、もうひとつ押さえておくべき改正点のポイントがあります。それは、残業時間が1ヶ月60時間を超えた場合の割増率についてです。現在、60時間を超えた残業時間に対して50%以上の割増率で支払いを義務付けられているのは大企業のみで、中小企業は猶予されていますが、改正案が施行されれば、この猶予は終了することとなります。
法律案要綱の中には以下のように記載されています。
「中小事業主に対する一箇月について六十時間を超える時間外労働に対する通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金の支払義務の適用猶予に係る規定を廃止する」施行期日は2022(平成34)年4月1日とされており、あと4年5ヶ月後には中小企業においても60時間を超えた残業時間に対して、50%以上の割増率で時間外手当を支払うことが現実味を帯びてきました。
残業の事前申請・承認制の徹底、あるいはシステムの整備などを進めて責任体制を明確化し、残業時間を適正に把握することから始めていきましょう。
■働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000177551.pdf -
2017年10月31日
残業時間の上限規制について
2017(平成29)年9月15日に、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」について、労働政策審議会から厚生労働省に対して答申が行われました。厚生労働省では、この答申を受け、法律案を整備して国会への提出準備を進めています。
この働き方改革の大きな目玉とされているのが、残業時間の上限規制です。現在の労働基準法では、労働時間の上限を1日8時間、1週40時間までとしており、同法36条に基づく労使協定を締結すれば、当該時間を超えて労働させることが認められています。しかしながら、法定労働時間を超えて労働させることができる時間は、月間45時間、年間360時間を上限とするよう告示されているのみで、法律的罰則は現在課せられておりません。また、その労使協定に特別条項を結んだ場合、延長できる時間は青天井とされており、長時間労働や過労死の一因といわれています。
今回の法律案では、告示されていた月間45時間、年間360時間という限度基準を法律へ格上げし、さらに罰則を設けることにより強制力を持たせることが考えられています。さらに、特別条項を結ぶ場合でも、年間720時間、単月では、休日労働を含んで100時間未満、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定されています。
法律案が成立した場合には2019(平成31)年に施行される予定です。長時間労働を改善するための職場環境の整備は、長期的な視点に立って進める必要があります。まずは、勤怠状況を正確に把握し、社内の意識改革、労働時間の削減目標等を設定して、着実に見直しを進めていきましょう。
【厚生労働省】「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177380.html -
2017年9月8日
10月1日より育児休業が最長2歳まで延長
6月に育児介護休業法の改正についてご案内しましたが、法改正の施行まで残り1ヶ月となりましたので、改めて育児休業期間の延長について解説いたします。
従来の育児休業制度は、原則子が1歳に達するまで育児休業を取得でき、1歳に達するまでに保育園等に入れないなどの事情がある場合には、例外として1歳6ヶ月に達するまで育児休業の延長が認められていました。10月1日より延長期間が拡大され、1歳6ヶ月に達した以後も保育園等に入れないなどの事情がある場合には、会社に申し出ることで、最長子が2歳に達するまで育児休業期間を再延長できることになります。
さらに、今回の法改正に伴い、雇用保険から支給される育児休業給付金も最長2歳まで支給期間が延長されることとなります。
【リーフレット】育児休業給付金の支給期間が2歳まで延長されます
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000169691.pdfただし、期間延長は子が1歳6か月に達する日の翌日が10月1日以降となる方(子の誕生日が平成28年3月31日以降の場合)が対象となりますので注意が必要です。
なお、今回の改正に合わせ、育児介護休業規程の改訂が必要となります。厚生労働省から規定例(簡易版)がリリースされていますので、こちらを参考に社内規程のアップデートも忘れずに実施しましょう。
【厚生労働省】育児介護休業等に関する規則の規定例(簡易版)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/291001_kiteirei-kannibann.docx関連するお役立ち情報
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2017年8月15日
協会けんぽのマイナンバー制度による情報連携開始
以前、協会けんぽの マイナンバーの取り扱いについて解説をいたしました。
■法報タイムズ Vol.543
http://www.romu.jp/cms_magazine/2017/01/543.html「申請書内にマイナンバーを付記することにより、2017年(平成29)年7月からは非課税証明書等の従来必要とされていた添付書類を省略することが出来る」とご案内し、その後7月18日よりマイナンバー制度による情報連携の開始が発表されました。しかしながら、7月から3ヵ月程度は「試行運用期間」と定められており、この期間は情報連携結果と添付書類内容に相違がないかを確認するために、従来通り添付書類の提出が必要となります。
本年秋以降には、本格運用が開始され、次の添付書類が不要になる予定です。
<マイナンバー記入により情報連携を行う申請>
- 高額療養費の申請(低所得者のみ)
- 高額介護合算療養費の申請(低所得者のみ)
- 基準収入額適用申請
- 食事及び生活療養標準負担額の差額申請(低所得者のみ)
【協会けんぽ】平成29年7月よりマイナンバー制度による情報連携が開始されます
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/home/g5/cat550/sb5010/290526001 -
2017年7月5日
労働保険料の口座振替について
労働保険料は例年7月10日までに申告・納付が必要とされています。労働保険料の納付は、納付書による納付、インターネットバンキング等を利用して納付、口座振替により納付、のいずれかの方法で行います。今回はこのうち口座振替についてご紹介いたします。
【厚生労働省】労働保険料等の口座振替納付
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/hokenryou/index.html口座振替のメリットとして、金融機関に出向く手間や待ち時間が解消され、納付忘れや遅延の心配がなく、さらに保険料の納期限もゆとりができます。また、引落とし日の約3週間前には引落とし内容に関する案内が届き、引落とし後も約3週間で結果が届きますので確認漏れの心配もありません。この申込みに必要な申込用紙は次のURLからダウンロードできます。
【厚生労働省】口座振替の申込について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/hokenryou/kouza_moushikomi.htmlなお、申込み時期により、口座振替の開始時期が異なるため注意が必要です。申込締切日と振替タイミングは以下のリーフレットをご確認ください。
【リーフレット】労働保険料は口座振替が便利です!
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149893.pdf会社の管理部門は、この時期、社会保険の算定基礎届の提出業務にも対応しなければならず、非常に忙しくしていることが多いと思います。口座振替制度を活用し、煩雑な納付作業を効率化していきましょう。
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2017年6月19日
最長2歳まで育児休業の延長が可能に
10月に改正される育児・介護休業法における大きな目玉は、子が2歳に達するまで育児休業を延長できるようになることです。
現在の制度は、原則として子が1歳に達するまで育児休業を取得でき、さらに、1歳に達するまでに保育園等に入れないなどの場合には、例外として1歳6ヶ月に達するまで育児休業の延長が認められています。
10月の改正でこの期間が拡大され、1歳6ヶ月に達した以後も保育園等に入れないなどの場合には、会社に申し出ることで、子が2歳に達するまで育児休業期間を再延長できることになります。なお、雇用保険から支給される育児休業給付も、今回の改正にあわせて2歳まで延長できるようになります。
産休中または育児休業中の社員から問い合わせがきても慌てないように、改正内容について予め理解しておきましょう。
【厚生労働省リーフレット】
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/291001kaiseiri-fu.pdf -
2017年4月11日
「勤務間インターバル制度」導入促進助成金について
政府が進める働き方改革の中に「勤務間インターバル制度」と呼ばれる仕組みがあります。これは退社時刻から翌日の出社時刻までに一定時間の間隔を取ることで、長時間労働抑制及び休息時間確保を促す目的があります。現在、導入は義務化されておりませんが、この制度の普及を目指すために中小企業向けに次の助成金が設けられ、政府はその導入を促しています。
職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.htmlこの助成金は「休息時間数が9時間以上11時間未満、又は11時間以上の勤務間インターバルを導入する」目標達成に向け、以下の取り組みのいずれかを1つ以上実施することが求められます。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の整備など)
- その他の勤務間インターバル導入のための機器等の導入・更新
(原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません)
助成金の支給額や導入事例等の詳細は以下のリーフレットをご確認ください。
職場意識改善助成金 勤務間インターバル導入コース(新設)のご案内
http://hyogo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/hyogo-roudoukyoku/kikaku/2017217interbal.pdf申請期間は2017(平成29)年の12月15日までとなりますが、予算額の関係で期間終了前に受付が締め切りとなる可能性があります。導入に向け助成金の利用を検討される場合は、早めの準備を進めましょう。
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2017年3月12日
労働基準法改正案について
現在、国会審議が継続している労働基準法改正案については、昨年、中小企業への影響が大きい改正部分についてお伝え致しました。
今回は、改正法案の目的の一つである「多様で柔軟な働き方の実現」に向けてどのような改正が予定されているかについて解説してまいります。
- フレックスタイム制の清算期間の見直し
現行法では清算期間の上限は1ヶ月に設定されていますが、より柔軟でメリハリをつけた働き方を可能とするために、清算期間の上限について3ヶ月への延長が検討されています。清算期間を1ヶ月を超えて3ヶ月までに延長する場合は、新たに労使協定の労働基準監督署への届出が必要になりますが、3ヶ月の中で労働時間の調整を図ることが出来るようになります。 - 企画業務型裁量労働制の見直し
現行法の対象業務は「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」と限定的でしたが、改正により適用範囲が拡大され「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」が追加される予定です。詳細は法案成立後に省令等で明らかになると思われますが、対象業務の追加により、労働者が主体性をもって働けるような裁量労働制本来の趣旨に即した活用が望まれます。 - 高度プロフェッショナル制度の創設
一定の年収要件(1075万円以上を予定)を満たし、職務範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者について、本人同意を得た上で労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が適用除外される新たな制度になります。この制度のポイントは従来の制度では除外されていなかった「深夜」の割増賃金も適用除外となる点といえます。なお、同制度を適用する場合、割増賃金支払いの基礎としての労働時間の把握は不要ですが、健康確保の観点から「事業場内に所在していた時間」及び「事業場外で業務に従事していた場合における労働時間」を健康管理時間として把握することが求められます。
この制度の活用で、時間ではなく成果に応じて評価されることにより、残業した労働者の方が結果的に高賃金である、といった、従来存在していた不公平感が解消されることが期待されます。
今回紹介した改正労働基準法案は、2017年中に成立する見込みが非常に高いため、今後の審議の動向に注目していきましょう。
【厚生労働省】労働基準法等の一部を改正する法律案の概要
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/189-41.pdf関連するお役立ち情報
- フレックスタイム制の清算期間の見直し
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2017年2月9日
日本年金機構におけるマイナンバーの取り扱いについて
日本年金機構のホームページでマイナンバーへの対応が公開されました。
その内容として、2017(平成29)年1月以降、年金関係の届書において、順次マイナンバーの記入が必須とされております。一方、会社が届出を行う被保険者資格取得届については、加入している健康保険によって対応が変わることになりました。
今回は、被保険者資格取得届への対応に焦点を当てて解説したいと思います。まず、政府が管掌している協会けんぽに加入している会社においては、届出書にマイナンバーの記載は要せず、従来通り基礎年金番号のみ記載すれば良いこととされています。そのため、様式は現行のものを引き続き使用することになります。一方、健康保険組合に加入している会社においては、2017(平成29)年1月以降、届出書にマイナンバーの記載が必要となります。様式は各組合で独自のものを用いていると思いますが、マイナンバーを記載する欄が新たに設けられていることかと思われます。なお、健康保険組合に加入している場合でも、年金事務所に提出する届出書についてはマイナンバーの記載は不要となります。
厚生年金保険分野においても、順次マイナンバーを記入すべき届書の拡大が予定されていますので、今後の動向に注目しておきましょう。
日本年金機構におけるマイナンバーへの対応
http://www.nenkin.go.jp/mynumber/kikoumynumber/1224.html -
2017年1月10日
協会けんぽにおけるマイナンバーの取り扱いについて
2016(平成28)年1月より雇用保険分野の手続にはマイナンバーを付記して届出を行うこととされていますが、2017(平成29)年1月より健康保険の手続においてもマイナンバーの付記が開始されます。
このうち中小企業が主に加入する協会けんぽではマイナンバーが利用される手続として次の申請が挙げられています。
- 高額療養費の申請
- 高額介護合算療養費の申請
- 基準収入額適用の申請
- 食事及び生活療養標準負担額の減額申請
- 限度額適用・標準負担額減額認定証の申請
これらの手続では、マイナンバーを付記することによって、2017(平成29)年7月からは非課税証明書等、従来必要とされていた添付書類を省略することが可能となる予定です。
また、協会けんぽでは、日本年金機構や住民基本台帳ネットワークとの連携により加入者のマイナンバー収集を予定しており、会社は社員のマイナンバーを協会けんぽへ提出する必要はありません。
なお、2017(平成29)年1月以降に会社を退職して任意継続被保険者となる際、任意継続被保険者の方が被扶養者の届出を行う場合は、被扶養者のマイナンバーの届出が必要になります。退職する社員の方が任意継続被保険者の届出を予定している場合は、会社として周知をするようにしましょう。
【全国健康保険協会】協会けんぽにおけるマイナンバーの取扱について
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat550/2811300001
人事労務