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2013年12月10日
地域別最低賃金の改定について
地域最低賃金改定の概要
平成25年度の全国の地域別最低賃金が10月に改定されました。
最低賃金は賃金の実態調査結果などを参考に毎年最低賃金審議会が県単位で決定しています。
最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。地域別最低賃金の全国一覧については、以下のHPでご覧いただけます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/最低賃金額より低い賃金で契約した場合は無効とされます。また、最低賃金額未満の賃金しか支払っていない場合は、50万円以下の罰金規定があります。
今年は安倍内閣が2%の物価上昇を目標に掲げていることを踏まえ、地域別最低賃金の全国加重平均額は764円となり、前年比すべての都道府県で11~22円、全国加重平均で15円のアップとなりました。最高は東京都の869円、最低は鳥取など9県で664円となっています。
また、地域別最低賃金で働いた場合の収入が生活保護の給付水準を下回る逆転現象が起きていることも問題視されていましたが、今回、最低賃金額が生活保護水準と逆転していた11都道府県のうち、北海道を除く10都府県で逆転が解消されました。最低賃金に関する注意点
最低賃金に関する主な注意点は、
- 雇用形態に関係なく適用される
最低賃金は、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭める恐れがあるなどとみなされる特定の労働者を除き、パートタイマー、アルバイト、嘱託、派遣等雇用形態に関係なく原則としてすべての労働者に適用されます。 - 派遣社員の場合
派遣労働者の最低賃金については、派遣元所在地の最低賃金を適用するのではなく派遣先所在地の最低賃金が適用されるので、賃金の支払者である派遣元は派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握しておく必要があります。 - 月給、日給の場合
月給や日給などで最低賃金額以上かどうかを確認する場合は、時間給に換算して最低賃金と比較します。月給の場合は月給を1ヶ月の所定労働時間で除し、日給の場合は日給を1日の所定労働時間で除します。
なお、最低賃金には、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、臨時に支払われる手当、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金、時間外・深夜・休日労働の割増賃金は算入されません。
最低賃金法に抵触する可能性のある水準の賃金を支払っている場合は、毎年改定の際に確認をするようにしてください。
- 雇用形態に関係なく適用される
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2013年11月11日
年末調整における今年の改正点と昨年の大幅改正の復習
平成25年分の年末調整の仕方が既に国税庁のホームページにアップされています。
「平成25年分年末調整のしかた」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2013/01.htmその中で「昨年と比べて変わった点」の抜粋がこちらです。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2013/pdf/04-06.pdf変更点は大きく3つありますが、昨年ほど大きな改正はありません。
- 復興特別所得税の源泉徴収
毎月の給与や賞与から徴収されている税額は、所得税及び復興特別所得税の合算額となっておりますので、年末調整も合算額で行います。誤って平成24年以前の源泉徴収税額表を使わないようにご注意ください。 - 年収1500万円以上の給与所得控除額
給与等の収入金額が1500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円で固定することとなりました。 - 特定役員の退職所得の計算
退職所得の金額の計算については、退職所得控除額を控除した残額を2分の1する措置が廃止されました。従いまして、特定役員に対する退職所得の金額は、収入金額から退職所得控除額を控除した残額となります。
退職所得の源泉徴収票については以下をご確認ください。
【国税庁】「特定役員退職手当等がある方の退職所得の源泉徴収票・特別徴収票について」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/yakuin_taishoku.pdfまた、昨年の改正点についてはインパクトがありましたので、記憶にも新しいかと思いますが、大きく3つあります。
- 介護医療保険料控除の増加
- 保険料控除の上限額が、新契約の場合は各々4万円へ変更
- 保険料控除の合計額が10万円から12万円に変更
詳しくは、以下をご参照ください。
法報タイムズ第391号
http://www.romu.jp/cms_magazine/2012/10/391.htmlなお、今年の源泉徴収票の様式については昨年からの変更はありません。
詳しくは、以下をご参照ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/tebiki2013/pdf/03.pdf本稿は、下記メールマガジンの記事より一部抜粋・加筆の上、掲載しております。
『法報タイムズ第429号 年末調整における今年の改正点と昨年の大幅改正の復習』 - 復興特別所得税の源泉徴収
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2013年10月10日
新規学卒採用において企業が求める人材
厚生労働省は、2013年8月30日に「労働市場における人材の確保・育成の変化」と題した、労働市場を分析したレポートを発表しました。日本経済を取り巻く情勢や就業構造が変化する中、日本経済の競争力強化のためには、人材が重要と考えられています。今回のレポートは、「構造変化の中での雇用・人材と働き方」をテーマに分析が行われており、日本経済が持続的に成長し、企業収益の改善、労働者側の賃金上昇と雇用拡大、そして消費の拡大へ続く「好循環」を実現するために、企業と労働者双方が、現在の構造変化に対応し、競争力と人材力の強化が必要、とまとめています。
今回は、レポートの中から、若年者の人材確保をテーマにしたものとして、「企業が若年者の正社員採用にあたり重視する資質」と「企業が若手社員に不足していると考える能力」をご紹介します。
若年者の正社員採用にあたり重視する資質
「仕事に対する熱意・意欲、向上心」 73.6%
「積極性、チャレンジ精神、行動力」 62.0%
「組織協調性(チームワークを尊重できる)」 52.5%
「コミュニケーション能力」 51.7%
「社会常識やマナー」 48.0%
「規律ルールを守れる」 45.4%
(2013年 構造変化の中での企業経営と人材のあり方に関する調査より)上記のうち、1990年代と比較して大きく増加したのは次のとおりです。
1位 「コミュニケーション能力」 14.3% 増加
2位 「積極性、チャレンジ精神、行動力」 10.1% 増加
3位 「仕事に対する熱意・意欲、向上心」 8.7% 増加「熱意・意欲」、「積極性・行動力」、「協調性、コミュニケーション能力」が重視され、その度合いが強まっています。背景には、企業内の組織の和やチームワークの重要性が再認識されるようになったことが考えられます。
また、採用で重視する過程の1位は「面接」となっており、こうした要素の有無や程度は、学生がこれまでに経験した一連の課題発見・解決プロセスを面接にて明らかにすることで見極められているようです。
企業が重要と考えたものの若手社員に不足しているとされる資質
1位 「他人に働きかけ巻き込む力」
2位 「創造力」
3位 「主体性」
4位 「課題発見力」
5位 「計画力」
(2007年 企業の『求める人材像』調査より)調査結果から、最近の傾向として、「自分で考えて行動できる人材」を企業は求めているものと考えられます。
分析レポートの詳細版は厚生労働省のWebサイトでご覧いただけます。以下のURLよりご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000015637.html本稿は、下記メールマガジンの記事より一部抜粋・加筆の上、掲載しております。
『法報タイムズ第426号 新規学卒採用において企業が求める人材』 -
2013年9月5日
転職入職者の賃金変更に関する状況(厚生労働省発表)
7月30日、厚生労働省が「転職入職者の賃金変更に関する状況」と題した、労働市場分析レポートを公表しました。
このレポートは、2000年~2011年の「雇用動向調査」を用いて、転職前後における賃金の変化を分析したものです。「雇用動向調査」とは、雇用労働力の流動状況を明らかにするため、厚生労働省が1964年からの毎年2回実施している調査です。
転職前後で賃金は「変わらない」ことが最も多い
転職に伴う賃金変動(全体)
「変わらない」 37.1%
「減少した」 32.5%
「増加した」 28.9%転職に伴う賃金変動(前職が一般労働者の場合に限定)
「変わらない」 38.9%
「減少した」 37.7%
「増加した」 23.5%(※)一般労働者:パートタイム労働者(1日の所定労働時間がその事業所の一般の労働者より短い人または1日の所定労働時間が同じでも1週の所定動労時間が一般の労働者より少ない人)以外の労働者
前職の退職理由によって賃金変動の傾向が異なる
分析レポートによると、定年退職、もしくは契約期間満了により退職した場合、50.4%の割合で賃金が減少しています。
定年等以外の会社都合理由により退職した場合も同様に、賃金が減少した割合は45.0%と高い水準となっています。一方、定年退職、契約期間満了、会社都合、これらに該当しない自発的理由等で退職した場合は、賃金が減少した人は33.5%に留まり、本人の意思に係らず退職した場合に、賃金が減少しやすい傾向があるようです。
また、年齢別にみると、年齢が高いほど賃金の減少傾向が強く、会社都合により45歳以上で転職した人の半数以上は、賃金が減少しています。
他の職業への転職の場合、6割近くの人が賃金減少
他の職業への転職の場合、賃金が減少した人の割合が59.4%となっており、「増加した」「変わらない」を上回りました。他の職業へ転職する場合、賃金が減少する傾向が強いことが顕著になっています。
一方、同一職種への転職に限定すると、賃金が「変わらない」割合は44.6%となり、「増加した」「減少した」の割合を上回り、最も大きな割合となりました。
分析レポートの詳細版は厚生労働省のHPでご覧いただけます。以下のURLよりご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/roudou_report/dl/20130730_02.pdf本稿は、下記メールマガジンの記事より一部抜粋・加筆の上、掲載しております。
『法報タイムズ第423号 転職入職者の賃金変更に関する状況』 -
2013年5月2日
能力不足により降格を行う場合の留意点
会社が行う、社員の能力不足を理由とした降格には、懲戒処分としての降格と人事権の行使としての降格があります。
今回は、人事権の行使としての降格、つまり、人事異動による降格にスポットをあて、降格人事を行う際の留意点について解説します。降格とは
職制上の役職や職位を引き下げたり、職能資格制度における資格や等級を引き下げたりすることをいい、前者は、課長などの上位の役職をはく奪したり、下位の課長補佐や係長に引き下げることを指します。後者は、職能資格制度における管理職・リーダー職・ジュニア職というような資格の中で下位の資格に引き下げたり、または、資格ごとに割り振られた等級を、たとえば1等級から3等級に引き下げたりすることを指します。
「職制上の役職や職位を引き下げる降格」における留意点
一定の役職を解くまたは引き下げる降格については、業務上の必要があり、また、合理的理由がある場合には、使用者の裁量的判断により行うことができるとされています。ただし、例外として、労働契約に職位を限定する特約が存在するなど、労働契約による制限を受ける場合は、職位の引き下げを伴う降格を行うことができません。
「職能資格制度における資格や等級を変動させる降格」における留意点
一方、職能資格制度における資格や等級の引き下げについては、職能資格制度の枠組みの中でその可否が考えられるものであり、制度の中で降格が予定され、会社にその権限が根拠づけられている規定が必要となります。
つまり、職能資格制度における資格や等級を引き下げるためには、
- 就業規則に降格についての規定があり
- 会社の制度として、資格や等級が能力評価で決定することができるとの取り決めをしていること
が必要です。
さらに、就業規則の根拠に基づくものであっても、無制限に降格できるわけではなく、人事権の濫用とならないよう留意する必要があります。降格が人事権の権利濫用にあたるか否かは、以下の点を総合的に勘案して判断されることになります。
- 使用者の業務上の必要性や能力不足と判断したことの相当性
- 能力や適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無やその程度
- 労働者の受ける不利益の程度
- 企業体における昇進・降格の運用状況
人事異動としての降格は、会社にゆだねられた裁量権や就業規則の定めにより行使することはできます。しかし、トラブルを未然に防ぐためには、入社時や人事評価面談、新たな職位に就いた際などに、会社が期待する能力基準等を明確にし、労働者と共有しておくことが重要です。
本稿は、下記メールマガジンの記事より一部抜粋・加筆の上、掲載しております。
『法報タイムズ第411号 能力不足により降格を行う場合の留意点』 -
2013年4月5日
情報漏洩リスクに備えた規程整備のポイント
スマートフォンやタブレット端末の普及は急速に進み、今やその所持率は50%近くに及んでいるといわれています。いつでもネットワーク接続が出来る環境になり便利になった反面、会社としては、情報漏洩リスクの高まりを認識しなければなりません。ひとつの投稿が会社の信用を大きく傷つけたり、顧客などのステークホルダーとのトラブルに発展する危険性があることを社員に教育するとともに、未然に防ぐ管理体制も構築する必要があります。
今回は、情報漏洩リスクに備えた規程整備に焦点をあて、解説します。服務規定
労働契約上、労働者は使用者の業務上の秘密を保持すべき義務を負っているため、個別の合意や就業規則上の規定がなくても、秘密保持義務は発生すると解されています。しかし、社員への周知徹底を目的として、あらためて就業規則に機密漏洩禁止規定を設け、社内ルールとしての義務を明確にすることが望ましいといえます。さらに、入社時および退社時に 社員一人ひとりから秘密保持を約した誓約書を取り付けることも有効です。
【就業規則(服務規定)への記載例】
- 「社員は、会社の業務上知り得た一切の機密、ノウハウ、データを記録した媒体等、および会社が秘密として指示した事項を保持してはならず、会社の承諾なしに、在職中はもとより、退職後も第三者へ開示・漏洩してはならない」
- 「会社および社員、または取引先等を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布してはならない。ここでいう流布とは、インターネット上の書き込み等も含むものとする」
懲戒規定
服務規定とあわせて、情報漏洩行為は、懲戒処分の対象である旨、明確にしておきます。懲戒処分は、就業規則に定められた懲戒事由に該当する場合にのみ、有効となります。 万が一、起きてしまった場合に、懲戒処分を実施できるよう、必ず服務規定とセットで定めておきます。
【就業規則(懲戒事由)への記載例】
- 「会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は、業務の正常な運営を阻害したとき」
- 「会社や取引先等に対する誹謗中傷等によって会社の名誉信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき 」
いずれの規定も社員へきちんと説明し周知徹底させることが重要です。更なる情報化時代の到来に備えて、社員全員が集まる社員総会や入社時などに、秘密保持義務に対する意識づけをし、定期的に社員教育を行うようにしましょう。
本稿は、下記メールマガジンの記事より一部抜粋・加筆の上、掲載しております。
『法報タイムズ第408号 情報漏えいリスクに備えた規程整備のポイント』 -
2013年1月4日
高年齢者雇用安定法の改正における実務対応
少子高齢化による労働力人口の減少や年金受給開始年齢の引き上げによる無収入・無年金問題への対応として、2012(平成24)年8月29日、改正高年齢者雇用安定法が成立、施行されることになりました。
※改正内容の詳細は、メールマガジン『法報タイムズ』393号をご覧ください。
※http://www.romu.jp/cms_magazine/2012/11/393.html今回の改正事項のうち、「継続雇用制度の対象者を限定する仕組みの廃止」における実務面の対応については、雇用継続制度の対象者基準廃止後も円滑な運用ができるように2012(平成24)年11月9日に厚生労働省より指針が発表されました。
指針のポイント
指針で示されている雇用継続制度におけるポイントは以下の3点です。
- 原則、継続雇用制度は希望者全員を対象とすること
- 継続雇用しないことができるケースは、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たしえないことなど、就業規則に定める解雇事由または退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合とすること
- 継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること
実務における対応
現在、継続雇用制度を適用している企業においては、定年年齢を65歳に引き上げるか、定年年齢は現状のままとして継続雇用制度を維持するかを決定する必要があります。この決定に基づいて、就業規則等の改定を行います。定年年齢を変えずに、継続雇用制度を維持する場合の対応は、以下の通りです。
- 就業規則に継続雇用制度の除外者を明記する
厚生労働省の指針で示された継続雇用の対象者から除外してよいケース、つまり「就業規則の解雇事由や退職事由に該当するもの」を継続雇用しない旨、就業規則に定めます。 - 就業規則に限定基準の適用有無を定める
経過措置として設けられた年金受給開始年齢以降の者を対象に労使協定の対象者限定基準を適用するかどうか定めます。 - 労使協定の締結有無をチェックする
上記2.で年金受給開始年齢以降の者に限定基準を適用するためには、施行日前の2013(平成25)年3月31日までに、労使協定を締結している場合に限ります。まれに、就業規則に「労使協定で定める」などの記載があるにもかかわらず、労使協定の締結を行っていないケースがあります。施行日前に必ず確認をしてください。
なお、現行の労使協定について、年金受給開始年齢の者を対象として、限定基準を運用する場合には、労使協定は施行日に向けての特段の改定は必要ありません。
改正法施行まであと約3ヶ月です。就業規則だけでなく、高年齢者の活用方針の検討や賃金制度の改定など、見直しの漏れがないか、今一度確認をしましょう。
<ご参考>
高年齢者雇用安定法のQ&A(厚生労働省HP)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1.html本稿は、下記メールマガジンの記事より一部抜粋・加筆の上、掲載しております。
『法報タイムズ第399号 高年齢者雇用安定法の改正における実務対応』
人事労務