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2024年12月13日
賃金のデジタル支払いのメリット・デメリットについて
令和5年4月1日より給与の支払い方法として、新たに資金移動業者の口座振り込み、いわゆる賃金のデジタル支払いが可能となりました。利用可能な資金移動業者の指定を待つ状態が続いていましたが、令和6年8月9日に初めて1社(PayPay株式会社)が厚生労働大臣の指定を受けました。実際に導入を検討する企業が増えることが予想されますので、改めてメリット・デメリットを整理しました。
【メリット】
・企業イメージの向上につながる(会社)
キャッシュレス決済が多用されている(※)なか、給与の受取方法について柔軟な選択を可能にすることで、いち早く社会情勢に対応する企業のイメージや、働きやすい職場環境をアピールすることができます。(※出典「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」2024年3月29日発表)
・受け取り方法の併用が可能(従業員)
賃金の一部を資金移動業者の口座へ振り込み、残額を銀行口座への振り込みとする等、受け取り方法の併用が可能です。例えば、生活費で使用する分はデジタル支払いを利用し、貯蓄にまわす分は銀行口座で受け取るなど、それぞれのライフスタイルに合わせた受け取り方ができます。【デメリット】
・管理の複雑化、作業量の増加(会社)
希望をしない従業員についてはデジタル支払いを強制できません。そのため、従業員ごとに支払方法(銀行口座への振り込み・デジタル支払い)を適切に管理する必要があります。
・口座の上限額(従業員)
資金移動業者の口座については、各資金移動業者が100万円以下の上限額を設定し、口座残高が上限額を超えた場合は、予め従業員が資金移動業者に指定した銀行口座へ自動送金されます。この手数料は従業員の負担となる場合がありますので、利用する指定資金移動業者へ事前に確認することをおすすめします。このように会社・従業員の双方にメリット・デメリットがありますので、それぞれの観点から充分に検討が必要です。また、アンケート調査などにより、従業員のニーズを確認するのも良いでしょう。
参考文献:
厚生労働省HP「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について」
人事労務 過去のお役立ち情報
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2024年11月14日
<解説動画あり>子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための拡充措置について
2024年5月の育児介護休業法の改正により、男女ともに仕事と育児の両立を図ることを目的とした「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置」が拡充されました。段階的に施行される措置の中で、今号は2025年4月より施行される育児期を通じた制度の拡充措置についてご紹介いたします。
- 所定外労働の制限 (残業免除)となる対象労働者の範囲拡大
現行では3歳になるまでの子が対象ですが、小学校就学前の子を養育する労働者へ対象が拡大されます。なお、労使協定で対象外にできる労働者の範囲は、「継続雇用期間が1年に満たない者」または「週所定労働日数2日以下の者」で変更はありません。 - 子の看護休暇の見直し
現行では小学校就学前までの子が対象ですが、小学校3年生の年度末までの子へ対象が拡大されます。また、対象事由も現行の事由に加え、「感染症に伴う学級閉鎖等、入園・入学式及び卒業式」が追加され、名称も「子の看護等休暇」へ変更となります。こちらは労使協定で対象外にできる労働者の内、「勤続6か月未満の労働者」を除外する仕組みが廃止され、「週所定労働日数2日以下の者」のみとなります。 - テレワーク導入の努力義務
3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずる努力義務が追加されます。 - 育児休業取得状況の公表義務の拡大
公表義務の対象が現行の「常時雇用する労働者1000人超」から「常時雇用する労働者300人超」に該当する企業へ拡大されます。公表する数値は「男性労働者の育児休業取得率」または「男性労働者の育児休業及び育児目的の休暇等(法定の育児休業やこの看護等休暇は除く)の取得率」です。
上記改正の内、1)所定外労働制限の対象労働者の範囲拡大と2)子の看護休暇の見直し」については、就業規則等の改定が必要となります。人事担当者は2025年4月1日の施行に合わせて改定できるよう、社内準備を進めるとともに、従業員への周知もあわせて準備を進めておきましょう。
<厚生労働省>
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要
「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(リーフレット) - 所定外労働の制限 (残業免除)となる対象労働者の範囲拡大
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2024年10月14日
<解説動画あり>社会保険適用拡大による二以上事業所勤務者への影響について
2024年10月から短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等(※)で働く 短時間労働者の社会保険加入が義務化されました。(※以下、特定適用事業所といいます)
特定適用事業所で働く方で、次の4点のいずれにも該当する方が、短時間労働者として新たに加入対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
- 学生でないこと
昨今の大幅な地域別最低賃金の引き上げに伴い、今まで上記2.の要件を満たさなかった方が、時給増により新たに対象となることも想定されます。(週所定20時間=月所定約87時間となるため、時給1,012円で所定内賃金月額が8.8万円以上となります)
その結果、副業として2つ以上の会社で勤務している方や、短時間労働者として複数社を掛け持ちで勤務している方はそれぞれの会社で社会保険加入要件に該当するケースも増えてくると考えられます。(これを二以上事業所勤務者といいます)二以上事業所勤務者は、加入要件に該当した会社それぞれで社会保険に加入することになりますが、保険証は本人が選択事業所として届け出た一方の会社の健康保険からのみ発行されます。また、保険料額はそれぞれの会社の報酬額を合算して算出した標準報酬月額を、それぞれの会社の報酬額の比率によって按分して決定します。
保険料の按分計算は、資格取得時のほか月額変更届・算定基礎届により報酬月額が変更される際などにも行われます。自社での報酬月額が変わらなくても、他社分の報酬月額に変更があった場合にも保険料額が変更となる点に注意が必要です。
従前から特定適用事業所に該当している会社でも、従業員の所定労働時間の変更や賃金の引き上げにより、新たに社会保険加入対象となっている人がいないか改めて確認をしましょう。
<日本年金機構>
兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ(リーフレット) -
2024年9月13日
<解説動画あり>2024年11月施行「フリーランス・事業者間取引適正化等法」
*解説動画はこちら2024年9月号「2024年11月施行「フリーランス・事業者間取引適正化等法」」
フリーランスの取引の適正化・労働環境を整備し、多様な働き方に柔軟に対応することを目的として「フリーランス・事業者間取引適正化等法」が施行されます。
■適用の対象
この法律は発注事業者からフリーランスへの業務委託に対して適用されます。- 発注事業者
フリーランスに業務委託を行う事業者で、従業員を使用するもの - フリーランス
業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの(個人・法人は不問)
■内容
「取引の適正化」「就業環境の整備」の観点から、取引条件の明示義務、報酬支払期日の設定と期日内の支払義務、募集情報の的確な指示等が定められています。今回は、とりわけ人事労務の領域に影響のある「就業環境の整備」に関して、以下の2点を取り上げます。- 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
発注事業者は6か月以上の業務委託について、フリーランスからの申出に応じて、必要な配慮をしなければなりません。必要な配慮としては、就業時間や納期の変更、オンラインで業務を行う等が挙げられています。 - ハラスメント対策に係る体制整備義務
セクシュアルハラスメント・妊娠出産等に関するハラスメント・パワーハラスメントにより、フリーランスの就業環境が害されることのないよう、相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければなりません。労働者への義務と同様であるため、労働関係法に基づき整備した社内体制やツールをフリーランスにも活用することが考えられます。
フリーランスと業務委託の名称で契約していても、働き方の実態に労働者性があると認められる場合は、フリーランス・事業者間取引適正化等法は適用されず、労働基準法等の労働関係法令が適用されることとなります。そのため、契約内容や働き方の実態を確認し、適切な運用となるよう整えていくことが求められます。
<厚生労働省>
ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法
フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン - 発注事業者
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2024年8月14日
<解説動画あり>夫婦ともに育児休業を取得した場合の給付金の創設(2025年4月施行)
*解説動画はこちら2024年8月号「2025年4月施行 育児休業にかかる給付金制度の創設」
雇用保険法の改正を含む「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」が2024年6月5日に成立しました。これにより、雇用保険の育児休業給付に新たに「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」が創設されます。今号では各給付の内容や創設の背景について解説致します。
■出生後休業支援給付とは
- 給付の内容
夫婦ともに育児休業を取得した場合に、通常の育児休業給付に一定額が上乗せされる制度です。具体的には子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)で被保険者とその配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、28日間を限度に「休業開始時賃金の13%相当額」が上乗せ支給されます。なお、配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭などの場合は、配偶者の育児休業の取得要件は考慮せずに支給されます。 - 創設の背景
現状では、育児休業等を取得し育児休業給付金等の支給を受けても休業前の給与と比べると手取額は低くなり、男性の育児休業取得が進まない理由の1つと考えられていますが、この「出生後休業支援給付」により育児休業中の手取額低下に対する不安が減少し、男性の育児休業取得の促進、「共働き・共育て」のできる環境の推進が期待されています。
■育児時短就業給付とは
- 給付の内容
育児のために時短勤務を行い収入が低下した場合、その収入を補うために給付金を支給する制度です。具体的には2歳未満の子を養育するために短時間勤務で就業した場合、勤務中に支払われた賃金額の10%が支給されます。ただし、給付金の額と短時間勤務後の賃金の合計が短時間勤務前の賃金を超えるような場合は、給付金の支給額が調整されます。 - 創設の背景
現状では育児の為に短時間勤務制度を選択し賃金が低下した場合に支給される給付はありません。「育児時短就業給付」は育児とキャリア形成の両立を支援する為に2歳未満の子を持つ親が育児のために短時間勤務を行う際に収入減少を補填する目的で創設されました。
「出生後休業支援給付」や「育児時短就業給付」を含む改正雇用保険法は2025年4月1日から施行されます。人事担当者は就業規則などの改定や従業員への周知を漏れなく行える様、早めに情報を収集し社内準備を行っておきましょう。
- 給付の内容
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2024年7月12日
<解説動画あり>マイナ保険証利用促進に向けた今後の動きについて
*解説動画はこちら2024年7月号「マイナ保険証の利用促進に向けた今後の動向について」
令和5年4月1日より、保険医療機関・薬局においてマイナンバーカードを健康保険証として利用できるオンライン資格確認のシステム導入が義務付けられ、医療機関等を受診する際にマイナンバーカードの持参有無を尋ねられることが増えてきました。今回は、マイナ保険証の利用促進に伴う今後の動きについて整理いたします。
- 現行の健康保険証の廃止と資格確認書の発行
令和6年12月2日に現行の健康保険証の新規発行が終了します。現在お持ちの保険証は、最長で令和7年12月1日まで(※)使用することが可能です。(※有効期限が令和7年12月1日より前に切れる場合などはその有効期限まで。)現行の保険証は、令和7年12月1日までに退職等で使用できなくなった際は会社へ返納が必要ですが、令和7年12月2日以降については自己破棄も可能です。
なお、マイナンバーカードの保険証利用登録をしていない方に対しては、保険証の代わりとなる「資格確認書」が発行され、こちらを持参することで医療機関での受診が可能となります。 - 加入者に対する資格情報のお知らせの送付
協会けんぽでは令和6年9月に全加入者に対し、事業主を経由して、記号・番号を含む被保険者資格等の基本情報が記載された「資格情報のお知らせ」を送付する予定です。(各健保組合も同様の対応となる見通しですが、詳細はご加入の健保組合にご確認ください)
こちらの「資格情報のお知らせ」は、令和6年12月2日以降、マイナンバーカードリーダーが利用できない医療機関を受診する際に、マイナ保険証と合わせて提示することで利用が可能です。令和6年6月上旬以降に加入された方については、令和7年1月頃に発送される予定です。また、今後は資格取得時に送付されます。「資格情報のお知らせ」は、単体での利用は出来ません。また個人情報を含むことから、マイナ保険証と合わせて携帯のうえ、紛失には十分ご注意いただく必要があります。
メディア等でも保険証廃止について取り上げられており、従業員の方の注目度も高い変更です。今後、従業員の方からの問い合わせが増えることも予想されます。従来の保険証から、①マイナ保険証、②資格確認書、③マイナ保険証+資格情報のお知らせ、の3つの利用に分かれる点をしっかりと整理したうえで、従業員の方への案内を早めに進めましょう。
◆マイナンバーカードの保険証利用登録方法について
マイナンバーカードを保険証として利用するには、ご自身で「保険証利用登録」を行う必要があります。利用登録には次の3つの方法があります。
(1)医療機関設置のカードリーダーからの申請
(2)セブン銀行ATMからの申請
(3)マイナポータルからの申請
いずれかの方法で登録をしたのち、医療機関設置の顔認証付きカードリーダーで受付を行うことで、
マイナ保険証による保険証利用をすることが出来ます。<全国健康保険協会>
健康保険証とマイナンバーカードの一体化(マイナ保険証)に関する制度説明資料
<厚生労働省 保険局>
マイナ保険証の利用促進等について
<厚生労働省>
マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問
- 現行の健康保険証の廃止と資格確認書の発行
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2024年6月12日
<解説動画あり>養育特例の申出に必要な添付書類が省略できるようになります
*解説動画はこちら2024年6月号「養育特例の申出に必要な添付書類が省略できるようになります」
厚生年金保険法施行規則の一部改正に伴い、2025年1月1日より「3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例の申出等(以下、「養育特例」という)」を行う際、添付書類が一部省略できるようになります。ここでは、養育特例とはどのような制度なのか、現在の具体的な手続き方法と改正後の変更点について解説いたします。
- 養育特例の概要について
養育特例とは、3歳未満の子供を養育する被保険者の標準報酬月額が短時間勤務等により低下した場合に、将来受け取る年金額に影響しないよう子供を養育する前の標準報酬月額に基づき年金を受け取ることができる制度です。現在は、養育特例を申し出る際、以下2点の添付書類が必要です。
(1)戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書
(2)住民票の写し
なお、2024年4月1日以降、申出書に被保険者と子のマイナンバーの記載があれば、住民票の写しの添付を省略することができるようになっています。 - 2025年1月1日からの変更点について
改正後は、養育特例の申出書に事業主の確認欄が設けられます。事業主が被保険者と子の関係を確認できた場合は戸籍謄本の提出が不要となります。
育児休業から復職した後、標準報酬月額が下がるケースも少なくありませんが、養育特例の申出をすることで将来の年金額への影響をなくすことが可能です。必須の添付書類がなくなることで養育特例の手続がしやすくなりますので、申出が可能な従業員には積極的に案内をしてみてください。
- 養育特例の概要について
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2024年5月14日
<解説動画あり>育児休業給付金 延長申請時の手続き厳格化(2025年4月1日施行)
*解説動画はこちら2024年5月号「2025年4月 育児休業給付金延長申請時の手続き厳格化」
雇用保険法施行規則の省令改正に伴い、2025年4月1日以降に育児休業給付金の延長申請を行う際の手続きが厳格化されることが決定しました。厳格化の背景や具体的な手続きの変更点、延長の要件について解説いたします。
- 厳格化の背景
保育所等への入所意思がないにも係らず給付金延長の為に申し込みを行う者への対応や、意に反して保育所等の入所が内定した者からの苦情対応等に自治体が時間を要しており、見直しの要望が示されていました。これに伴い自治体の負担軽減と適切な運用を図るため、ハローワークで延長可否を判断することとなりました。 - 提出書類の追加
現行の確認書類である「入所保留通知書」や「入所不承諾通知書」に加えて、本人が記載する申告書及び市区町村に保育所等の利用申込みを行った時の申込書の写しが必要となります。 - 延長要件の追加
「速やかな職場復帰の為に保育利用を希望しているか」を確認するため、以下の要件が追加審査されます。
・申し込んだ保育所等が自宅や勤務先から遠隔地(※)の施設のみになっていないこと
・市区町村への保育利用の申込に当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと
※遠隔地の判断基準として、自宅又は職場からの移動時間を30分以上とする予定。
上記提出書類の追加や新たな要件は施行日以降に育児休業にかかる子が1歳または1歳6か月に達する育児休業取得者に適用されます(パパママ育休プラスにより1歳2か月までの範囲で延長している場合は、その終了予定日が施行日以降である者)。
本改正後はハローワークにて、より厳格な審査が行われることになりますので、人事担当者は該当する育児休業取得者へ早めに案内をするなどの対応を行ったほうがよいでしょう。
<厚生労働省>
雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案概要(育児休業給付関係) - 厳格化の背景
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2024年4月11日
<解説動画あり>高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月1日施行)
*解説動画はこちら2024年4月号「2025年4月高年齢雇用継続給付の縮小」
2020年に雇用保険法が改正され、2025年4月1日から高年齢雇用継続給付が段階的に縮小されることが決定しました。改正の概要や背景、会社に求められる対応について解説いたします。
- 改正の概要
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の被保険者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった方を対象に支給される給付金です。今回の改正では、2025年4月1日以降に新たに60歳となる方への給付率が以下のように縮小されます。
◆現行
給付率は賃金の原則15%
ただし、賃金と給付額の合計が60歳到達時点の賃金に比べて
61%を超え75%未満の場合は給付額を逓減。75%を超える場合は不支給。◆2025年4月1日以降
給付率は賃金の原則10%
ただし、賃金と給付額の合計が60歳到達時点の賃金に比べて
64%を超え75%未満の場合は給付額を逓減。75%を超える場合は不支給。- 縮小の背景
高年齢雇用継続給付の縮小の背景には、2013年4月1日に施行された高年齢者雇用安定法の改正が挙げられます。企業は同改正で「65歳までの雇用確保措置」をとることが義務づけられており、2025年4月1日にその経過措置期間が終了します。このような法改正により高年齢者の労働環境が整備されつつあることから、高年齢雇用継続給付の段階的な縮小の決定がなされました。 - 会社に求められる対応
高年齢雇用継続給付の縮小に伴い、収入が減少する従業員の発生が見込まれます。高年齢雇用継続給付による補填を見込んだ賃金制度は見直しが必要でしょう。また、パートタイム・有期雇用労働法第8条では、正社員と非正社員の間で不合理な待遇差を設けることが禁止されています。定年後再雇用に於いても、職務内容、職務内容・配置変更の範囲等を正社員と比較して不合理な待遇差がないか、改めて確認を行いましょう。
<厚生労働省>
『高年齢者雇用安定法改正の概要』リーフレット
<厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第188回)資料>
『高年齢雇用継続給付について』 - 改正の概要
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2024年3月15日
<解説動画あり>2024年度から労災保険料率が改定されます
*解説動画はこちら2024年3月号「労働保険の成立手続 正しくできていますか?」
2024年4月1日より労災保険料率が改定されます。労災保険制度は、業種別に労災保険率を設定する制度を採用していますが、全54業種のうち、保険料率が引き下げられたのが17業種、引き上げ3業種、34業種が据え置きとなっています。業種平均では0.1/1000引き下げとなり、20年前から継続して引き下げ傾向にあります。
- 労災保険料率の算定方法
今回、6年ぶりに労災保険料率が改定されますが、労災保険料率は3年ごとに 審議されており、将来にわたって労災保険事業の財政の均衡を保つことができるよう、事業の種類ごとに過去3年間の保険給付実績等を加味して決定されます。なお、令和6年度分は、業種別に2.5~88/1000の範囲で定められています。 - 労働保険に係る手続
労働者が業務上の事由で負傷した際、労災保険料を財源とした労災保険制度から必要な給付を受けることができますが、給付を受けるためには、正しい手続と保険料の納付が不可欠です。
- 労働保険関係成立届
一部の個人経営の事業所を除き、労働者を1人でも雇用する事業所は、労災保険へ加入しなければなりません。なお、これは法人単位ではなく、事業所単位で手続を行う必要があるため 本社以外に支店や営業所等を新たに設立した場合も、原則、手続が必要です。なお、事務手続の簡素化を図るため、同一事業主であることや事業の種類が同じであること等を要件に、複数の事業所の保険関係を1つにまとめることができます。(継続事業の一括) - 労働保険料の納付
労働保険料は、年度の当初に1年分の保険料を概算で申告・納付し、翌年度の当初に、実際に労働者へ支払った賃金額をもとに保険料を確定・申告して、精算するしくみになっています。一般的に、この手続を「労働保険年度更新」といい、毎年6月1日から7月10日までの間に行います。
- 労働保険関係成立届
なお、会社が適切に保険加入手続を行わず、その間に労災事故が発生した場合、会社が保険給付額を負担しなければならないケースもあります。労働保険の手続状況につきまして、ぜひこの機会に一度確認してみましょう。
<厚生労働省>
令和6年度 労災保険料率表
労働保険特設サイト - 労災保険料率の算定方法
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2024年2月14日
<解説動画あり>2024年10月以降の短時間労働者に対する社会保険の適用拡大
*解説動画はこちら2024年2月号「2024年10月 社会保険の適用拡大」
2024年10月以降、短時間労働者の社会保険の適用範囲が拡大されます。これまで、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業が対象となっていましたが、2024年10月より、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業で働く短時間労働者も、加入要件を満たせば社会保険への加入が義務付けられます。
- 加入要件
厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業で働く短時間労働者で、下記要件に全て該当する場合、健康保険・厚生年金保険の加入が必要です。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)所定内賃金が月額8.8万円以上であること
(3)学生でないこと
(4)2か月を超える雇用の見込みがあること - 適用拡大の対象となる事業所への通知
2023年10月から2024年7月までの各月において、厚生年金保険の被保険者総数が6か月以上50人を超えたことが日本年金機構にて確認できた事業所に対して、2024年9月上旬に「特定適用事業所該当に関する事前のお知らせ」が送付されます。その後、2024年10月上旬に「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。事前勧奨状として「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」が送付される場合もありますので、いずれも受領した際には内容を必ず確認しましょう。
<日本年金機構>
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
被保険者数が51人以上の企業等の事業主のみなさまへ - 加入要件
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2024年1月15日
障害のある人への合理的配慮の提供の義務化
2024年4月より障害者差別解消法が改正され、これまで努力義務であった事業者の障害のある人に対する合理的配慮の提供が義務化されます。この改正により、障害のある人からバリア(障壁)を取り除くために、何らかの対応を求められた場合、事業主は合理的な配慮をすることが求められます。今回は本改正について具体的に説明します。
- 対象となる事業者
本法における「事業者」とは、商業その他の事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別は問いません。個人事業主やボランティア活動をするグループなども「事業者」に含みます。 - 合理的な配慮の提供とは
社会生活において障害がない人には簡単に利用できることでも、障害がある人にとっては利用が難しいものが多く存在します。そのバリアを取り除くことで、障害がある人でも制限なく活動できるよう配慮することを「合理的な配慮の提供」といいます。しかし、合理的な配慮の提供の内容は、障害特性や個々の状況により異なります。必要な対応について障害のある人と事業者が話し合い、相互理解を重ねて検討していくことが重要です。 - 事業者としての取り組み方
事前に主な障害特性や合理的な配慮の具体例を確認しましょう。内閣府のポータルサイトでは、障害特性ごとの「合理的配慮の提供」の事例が紹介されています。また、障害のある人にとってバリアとなるルールやマニュアルがないかを確認し、見直しを進めましょう。
同じく2024年4月から、障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられますが、共生社会の実現に向けて、障害の有無にかかわらず、1人1人が活躍できる社会を実現するために、会社として対応できることを検討していくことが求められています。
<内閣府>
障害者差別解消法が改正に 事業者にも合理的配慮の提供が義務化されます
障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト - 対象となる事業者
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2023年12月12日
<解説動画あり>建設業・自動車運転の業務における時間外労働の上限規制
*解説動画はこちら2023年12月号 建設業・自動車運転の業務における時間外労働の上限規制
2019年4月に働き方改革による労働基準法の改正が行われ、時間外労働の上限規制が行われました。但し、特定の4つの事業・業務については、適用が猶予されています。今回は、2024年3月で猶予措置が終了し、同年4月から新たに適用される建設業・自動車運転の業務に係る時間外労働の上限規制について解説いたします。
原則
下記(1)~(3)が労働基準法に規定されています。
(1)時間外労働の上限は、原則、月45時間、年360時間まで。
(2)特別条項を適用する場合は、(1)の上限を超えて時間外労働を行うことが可能。
適用時でも、年720時間以内、2~6か月の複数月平均80時間以内(※)
単月100時間未満(※)に抑える必要がある。
※ 休日労働時間を含む
(3)特別条項により時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回まで。A. 建設業
- 原則の(1)~(3)いずれも適用されます。
- 但し、「災害時の復旧・復興に係る事業」については、(2)のうち、「2~6か月の複数月平均80時間以内」、「単月100時間未満」の規制が適用されません。
B. 自動車運転の業務
- 原則の(1)は適用されます。
- (2)のうち、「年720時間」は、「年960時間」に置き換えられます。また、「2~6か月の複数月平均80時間以内」、「単月100時間未満」の規制は適用されません。
- (3)の規制は適用されません。
また、建設業・自動車運転の業務については、時間外労働の上限規制が適用されることに伴い、2024年4月より36協定の様式も変更になります。上限規制適用前までに、社内で準備を進めましょう。
<厚生労働省>
時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 -
2023年11月14日
<解説動画あり>心理的負荷による精神障害の労災認定基準
*解説動画はこちら2023年11月号心理的負荷による精神障害の労災認定基準
2023年9月1日付で「心理的負荷による精神障害の認定基準」が 改正されました。業務に起因する精神障害の、より適切な労災認定、審査の迅速化、請求の容易化を目的とした本改正のポイントについて解説いたします。
(1)業務による「※心理的負荷評価表」の見直し
心理的負荷評価表に以下の「具体的出来事」が追加されました。
・顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(いわゆるカスタマーハラスメント)
・感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した
心理的強度が「強」「中」「弱」となる具体例が拡充されました。
・パワーハラスメント6類型すべての具体例等を明記
※心理的負荷評価表:実際に発生した業務上の出来事を、同表の「具体的出来事」に当てはめ、ストレスの強さを評価したもの(2)精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直し
業務外で既に発病していた精神障害について、悪化前おおむね6か月以内に、業務による「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したと医学的に判断されるときは、悪化した部分について業務との因果関係(業務起因性)が認められます。(3)医学意見の収集方法を効率化
労災認定までの期間短縮のため、複数の専門医による意見収集から、専門医1名の意見のみで決定できる事案が増えました。詳細につきましては、厚生労働省ホームページもあわせてご確認ください。
<厚生労働省>
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました -
2023年10月13日
<解説動画あり>厚生労働省から「年収の壁・支援強化パッケージ」が公表されました
*解説動画はこちら2023年10月号 年収の壁・支援強化パッケージ
配偶者の扶養に入っているパートの方が一定収入を超えると社会保険への加入が必要になり、これを避けるための就業調整を「年収の壁」と称します。政府はこれが人手不足の一因と見なし、「年収の壁・支援強化パッケージ」という施策を発表しました。
- 具体的な「年収の壁」とは
(1)106万円の壁(被用者加入保険)
短時間労働者は年収約106万円(月額8.8万円)で社会保険に加入し、保険料を負担しなくてはなりません。
(2)130万円の壁(被扶養者認定基準)
年収130万円を超えると配偶者の健康保険・厚生年金保険の被扶養者からはずれ、自分で国民年金・国民健康保険に加入しなければならなくなります。
(3)配偶者手当
収入が一定額を超え扶養からはずれると、配偶者の手当が支給されなくなることがあります。 - 「年収の壁・支援強化パッケージ」の概要
(1)「106万円の壁」の対策
「キャリアアップ助成金」のコースが新設され、短時間労働者が手取り減少を気にせず働けるよう、手取りを増やす取り組みを行う事業主に対し労働者一人あたり最大50万円が助成されます。また年収106万円を超えた方に対し本人負担の社会保険料相当を補填する「社会保険適用促進手当」を支給することで、最大2年間手取り減少を防止できる仕組みを導入します。この手当は社会保険料算定の基礎となる報酬額に含まないものとなります。
(2)「130万円の壁」への対応
労働時間延長等に伴い一時的に収入が変動し、年収が130万円以上となる場合には、「事業主の証明」を添付することで、原則連続2回まで被扶養者として認定が可能になります。
(3)「配偶者手当」への対応
令和6年春の賃金見直しに向けた労使の話し合いの中で、配偶者手当の見直しが進むよう「見直し手順のフローチャート」が公表予定です。
年収の壁による人手不足は、多くの企業が直面し得る問題です。新しい施策を活用して、気持ちよく働ける環境を整えていきましょう。この制度の詳細は、厚生労働省ホームページをご確認ください。
〈厚生労働省ホームページ〉
年収の壁・支援強化パッケージ
「年収の壁」への対応策 - 具体的な「年収の壁」とは
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2023年9月15日
<解説動画あり>裁量労働制に係る新しい手続きについて
*解説動画はこちら2023年9月号 裁量労働制に係る改正
裁量労働制に係る省令・告示が改正され、2024年4月1日から施行されます。この改正に伴い、裁量労働制の導入および継続にあたり、実務にも大きな影響を与えることが見込まれます。今回は、比較的導入が進んでいる専門業務型裁量労働制(以下、専門型)の改正に焦点を当て概要および会社に求められる対応について解説いたします。
(1)労使協定に下記事項の追加が必要となります。
- 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得ること
- 制度の適用に同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないこと
- 同意の撤回の手続きを定めること
- 同意及び同意の撤回について労働者ごとの記録を保存すること
(2)対象業務に、いわゆるM&Aアドバイザリー業務が追加され、現行の19業務から20業務に拡大されます。
この改正により、これまで労使協定と就業規則のみで適用できた専門型も労働者ごとに同意を得るプロセスが必要となります。同意者と非同意者が混在するような場合には、それぞれ賃金計算方法が異なるなど、管理も複雑化することが予想されます。
なお、施行日以降に新たにまたは継続して裁量労働制を導入するためには、つぎの時期までに労働基準監督署に協定届の届け出を行う必要があります。
- 新たに導入する事業場 :裁量労働制を導入、適用するまで
- 継続して導入する事業場:2024年3月末まで
このほか、企画業務型裁量労働制についても改正があります。裁量労働制を導入している、又は導入を考えている方は、早めに今後の措置を検討することをお勧めします。
<厚生労働省>
リーフレット「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」
https://www.mhlw.go.jp/content/001080850.pdf -
2023年8月14日
<解説動画あり>2024年4月改正 労働条件通知書の明記事項の追加について
*解説動画はこちら2023年8月号 2024年4月改正 労働条件明示のルール
2024年4月から、労働条件明示のルールが改正されます。労働基準法施行規則第5条第1項に規定されている「労働契約の締結・更新時に使用者が労働者に明示すべき事項」に、新たに4つの項目が追加されますのでご紹介いたします。
- 【就業場所・業務の変更の範囲】
全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、将来の配置転換などによって変わり得る場合はこれらの「変更の範囲」についても明示が必要となります。 - 【更新上限の有無と内容】
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働 契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要となります。なお、最初の契約締結後に新たに更新上限を設ける、または短縮する場合は、新設・短縮をする前に説明を行う必要があります。 - 【無期転換申込機会】
有期契約労働者の※「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要となります。 - 【無期転換後の労働条件】
有期契約労働者が無期転換の申込をした場合の無期転換後の労働条件を明示することが必要となります。特に労働条件の決定に当たり、他の通常の労働者(正社員や無期雇用フルタイム労働者など)とのバランスを考慮した業務内容・責任の程度・異動の有無などについて、労使間での誤解が生じないよう有期労働者に説明するよう努めなければなりません。
※「無期転換申込権」・・・労働契約法18条1項において定められた、同一使用者との間で2以上の有期労働契約が通算5年を超えて更新された際、労働者からの申し出により期間の定めのない労働契約に転換できる権利
明示事項の追加に伴い、労働条件通知書の整備が必要になりますので、改正に先んじて今のうちに準備を進めておきましょう。
<厚生労働省>
リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080267.pdf
モデル労働条件通知書の改正イメージ
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080104.pdf - 【就業場所・業務の変更の範囲】
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2023年7月14日
<解説動画あり>健康保険被保険者資格取得届等のマイナンバー記載の徹底
*解説動画はこちら2023年7月号 社会保険手続書類へのマイナンバー記載の徹底
健康保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第81号)が令和5年6月1日から施行されました。この省令改正による手続事務への影響を確認しましょう。
- 主な改正の内容
- 資格取得に関する届出について、個人番号の記載義務を明確化する。
- 事業主は、資格取得届に関し、被保険者に対して個人番号の提出を求め、又は記載事項に係る事実を確認することができるものとする。
- 保険者は、届出を受けた日から5日以内に、被保険者等の資格情報を、社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に提供する。
この省令改正により、健保組合等はマイナンバーを含む資格情報を5日以内に提供するため、事業主にマイナンバー記載の徹底を求めることとなりました。
- 健保組合への届出
事業主は、事実発生日(取得日・扶養開始日)から5日以内にマイナンバーを記載した資格取得届・被扶養者異動届を健保組合へ届け出ることとされています。入社予定の従業員には、内定から入社までの間にマイナンバーを提出してもらい、期日までに届出ができるようにしましょう。
また扶養追加の手続きの場合も、従業員には対象家族のマイナンバーを速やかに提出してもらう必要があります。特に出生の場合、マイナンバー記載の住民票を取得することで、個人番号通知書を受け取るよりも早くマイナンバーを確認することができます。
マイナンバーの収集を外部へ委託している場合は、より早期に収集できるよう収集フローの見直しを行うことも効果的です。
なお、住民票に記載されている漢字氏名、カナ氏名、生年月日、性別、住所が記載されていればマイナンバーの記載がない届出も受け付ける健保組合もある ので、加入されている健保組合の運用を確認してみるのもよいでしょう。
<厚生労働省 健康保険法施行規則等の一部を改正する省令の公布等について(通知)>
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230601S0030.pdf - 主な改正の内容
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2023年6月15日
<解説動画あり>マイナンバー改正法案の成立 健康保険証を廃止しカード一本化へ
*解説動画はこちら2023年6月号 2023年6月 マイナンバー改正法案の成立
2023年6月2日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正マイナンバー法)が可決・成立しました。
これにより2024年の秋を目途に、現行の健康保険証は廃止となります。今回は、「マイナンバーカードの保険証利用」と「マイナンバーカードと健康保険証の一体化」について取り上げます。
- マイナンバーカードの保険証利用
マイナンバーカードの保険証利用は、2021年10月より運用がスタートしています。マイナンバーカードに保険証の利用登録を行ったものを「マイナ保険証」といい、2023年6月4日時点での「マイナ保険証」の登録件数は約6,334万件となり、マイナンバーカードの保有者のうち約69.3%が保険証の利用登録を完了しています。(出典:デジタル庁「政策データダッシュボード(ベータ版)」)
「マイナ保険証」を持参すれば健康保険証がなくとも医療機関・薬局を利用できますが、現時点では全ての医療機関、薬局で使用できるわけではなく、オンライン資格確認が導入されている医療機関・薬局に限られています。 - マイナンバーカードと健康保険証の一体化
政府は2024年秋を目途に、マイナンバーカードと健康保険証を一体化し、紙やプラスチックカードの健康保険証を廃止することを決定しました。
これにより、「マイナ保険証の使用」は事実上、義務化となりますが、一方でマイナンバーカードを持たない人、持っていても保険証の利用登録を行っていない人、紛失した人が保険診療を受けられるように、健康保険組合などの保険者が申請に基づき保険証の代わりとなる1年間有効の「資格確認書」を無料で発行する予定となっています。また、発行済みの従来の健康保険証は、廃止後の最長1年間を有効とする経過措置も設けられる予定です。 - マイナ保険証のメリット
マイナ保険証は次のような活用ができます。
1.データ基づく診療・薬の処方が受けられる
初めての医療機関でも、これまでの診療データを確認しながら診療・治療を受けることができます。
2.転職などをしても健康保険証として使える
新しい医療保険者への手続きが済んでいれば、マイナンバーカードでそのまま受診することができます。
3.高額療養費の手続き省略
マイナ保険証を利用できる医療機関では「限度額適用認定証」は不要となり、窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。
4.確定申告の医療費控除手続きの自動化
従来の領収書を保存する必要がなく、マイナポータルとe-Taxを紐づけることで、医療費通知情報が自動で入力され、医療費控除の申告が簡便に行えるようになります。
マイナ保険証については、別人の情報をひも付けるなどトラブルが相次いでいますが、人事・労務担当者はそのメリットを理解し、健康保険証廃止に向け、マイナンバーカードの取得やマイナ保険証への切替、「資格確認書」の発行などについて、社員へのアナウンスが必要となります。
また、会社が行う健康保険の資格取得手続きは従来通り必要となりますので、資格取得手続きの様式や運用変更など、保険者からの情報を注視し、早めに対応を講じるようにしましょう。
<厚生労働省>
マイナンバーカードの健康保険証利用について
<デジタル庁>
マイナンバー法等の一部改正法案の概要 - マイナンバーカードの保険証利用
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2023年5月12日
<解説動画あり>令和4年度の確定保険料の算定方法について
*解説動画はこちら2023年5月号 令和4年度 労働保険年度更新
令和4年度は雇用保険料率が年度の途中で変更されたことに伴い、労働保険年度更新における確定保険料の算定方法が、例年と異なる場合があります。原則の手続きと併せてしっかり確認しておきましょう。
- 労働保険年度更新とは
労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を単位(保険年度)として、労働者に支払われる賃金総額に、事業の種類ごとに定められた保険料率を乗じて、保険料を決定します。 保険料は前払いで、年度当初におおよその賃金総額で1年分の概算保険料を申告・納付した後、年度末の最終的な賃金総額で確定保険料を算定し、前払いした保険料の精算を行います。事業主は毎年、前年度の確定保険料の精算と当年度の概算保険料を併せて申告・納付する必要があり、この手続きを「年度更新」と言います。 - 手続き期間・申告方法
「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」(以下、申告書)を作成し、毎年6月1日から7月10日までの間に、所轄の労働基準監督署、都道府県労働局または金融機関へ提出します。 - 令和4年度の確定保険料算定方法
- 一元適用事業・二元適用事業(雇用)
※例年と異なります※
労働者に支払った賃金総額の千円未満を切り捨てた額(保険料算定基礎額)を前期(令和4年4月1日から同年9月30日)と後期(令和4年10月1日から令和5年3月31日)に分けて集計します。前期・後期の保険料算定基礎額に、労災保険料率と雇用保険料率を乗じて保険料を算出します。前期と後期の保険料を合算した額が、確定保険料となります。この変更に伴い、申告書に新たに「期間別確定保険料算定内訳」欄が設けられています。 - 二元適用事業(労災)
例年の算出方法に変更はありません。
- 一元適用事業・二元適用事業(雇用)
詳細につきましては、厚生労働省リーフレットをご確認ください。
- 労働保険年度更新とは
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2023年4月13日
<解説動画あり>職場における学び・学び直しの「リスキリング」について
*解説動画はこちら2023年4月号 リスキリングの必要性
「リスキリング」は岸田内閣の総合経済対策の一つである「構造的な賃上げ」の実現に向けた取り組みの一つとして盛り込まれたこともあり、報道で耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、昨今注目の集まる「リスキリング」について解説します。
- リスキリングとは
英語では「Reskilling」と表記されるように、働き方の変化よって今後新たに必要となる技術やスキルを身に着けることをいい、職業能力の再開発、再教育を意味します。 - リカレント教育とリスキリングの違い
どちらも「学び直し」としての意味合いを持つ言葉として注目されていますが、両者の概念には違いがあります。
- リカレント教育
一度仕事を離れて大学などの教育機関に戻り、専門知識や技術を習得して復職すること - リスキリング
企業が事業戦略の一環として従業員に対して、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させること
つまり、リカレント教育は新しく何かを学ぶために一度キャリアを中断することが前提となるのに対して、リスキリングは仕事を続けながら新しいスキルを習得することで、会社の事業上の成果につなげることに主軸が置かれています。
- リカレント教育
- DXとリスキリングの相関関係
DX(デジタルトランスフォーメーション)などによる産業構造や企業戦略の変化において、新たに必要となる業務・職種に対応できる人材を育成するという点でリスキリングの重要性が増しています。日本におけるリスキリングの取組みとして2022年11月に帝国データバンクによる公表では、DX取組企業のうちリスキリングの取組割合は81.8%に上るのに対し、DX未取組企業のリスキリング取組割合は32.2%となっており、DXを推進している企業の方がリスキリングにも取り組んでいるという相関関係があることが分かります。 - リスキリングの支援
リスキリングの導入方法としては、オンライン研修やeラーニング、ワークショップが挙げられますが、2022年12月に研修費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度として人材開発支援助成金に新しく「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。「リスキリングに興味はあるけど、コスト面でなかなか手が付けられない」という企業にとって最適な助成金といえます。活用を検討してみてはいかがでしょうか。
IT・データ分野を中心とした専門的・実践的な教育訓練講座を経済産業省大臣が認定する制度として「リスキル講座(第四次産業革命スキル習得講座)認定制度」の創設、官民一体でリスキリング機会の創出を目的とした「日本リスキリングコンソーシアム」が発足されるなど、今後、リスキリングへの関心はますます高まるものと思われます。リスキリングの普及及び動向が注目されます。
<厚生労働省ホームページ>
「人材開発支援助成金に事業展開等リスキリング支援コースを創設しました」<帝国データバンク>
「DX推進に関する企業の意識調査」<日本リスキリングコンソーシアム>
https://japan-reskilling-consortium.jp/ - リスキリングとは
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2023年3月15日
<解説動画あり>障害者の法定雇用率引き上げについて
*解説動画はこちら2023年3月号 2023年4月 障害者雇用率の改定
企業に義務づけている障害者の法定雇用率を現在の2.3%から大幅に引き上げられることが決定されました。合わせて、事業主支援の強化として助成金の新設・拡充策が発表されています。今号では主な変更点について、解説します。
- 障害者の法定雇用率が段階的に引き上げ
変更後の法定雇用率は2.7%となるものの、引き上げ幅が大きいため2023年4月以降の法定雇用率は現在の2.3%で据え置かれ、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%と段階的な引き上げが予定されています。この引き上げにより、1人以上の障害者を雇用すべき事業主の範囲が以下のように広がります。
・2023年4月~ 従業員数:43.5人以上
・2024年4月~ 従業員数:40.0人以上
・2026年7月~ 従業員数:37.5人以上 - 除外率の引き下げ
障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種(建設業、道路貨物運送業、医療業等)について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除(障害者の雇用義務を軽減)する制度があります。この除外率制度は廃止が決定しており、経過措置として段階的に引き下げ・縮小が行われています。2025年4月から10%引き下げられる予定です。 - 国による事業主への支援策強化
雇用率引上げの影響を受ける事業主への支援策として2024年4月より、既存の助成金の拡充や新たな助成金を制度化することが検討されています。併せて、法定雇用率の算定に含めることのできる労働者について、現在は週の所定労働時間が20時間以上の障害者を対象としていたところ今後は「週10時間以上20時間未満」で働く精神障害者、重度の身体障害者及び重度の知的障害者についても、法定雇用率の算定対象とすることが可能となります。
<厚生労働省ホームページ>
「障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について」 - 障害者の法定雇用率が段階的に引き上げ
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2023年2月14日
<解説動画あり>2023年4月から男性の育児休業等の取得状況公表が義務化されます
*解説動画はこちら2023年3月号 2023年4月 障害者雇用率の改定
2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行されています。今改正は男性の育児休業取得を推進する点に重きが置かれており、2023年4月の施行では従業員数が1000人を超える企業を対象に、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられています。ここでは、企業に求められる対応について解説します。
- 対象となる企業
常時雇用する労働者数が1000人を超える事業主が対象となります。 - 公表内容
公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)における次の(1)または(2)のいずれかを選択して公表します。
- 男性労働者の育児休業等の取得割合
育児休業等を取得した男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数 - 男性労働者の育児休業等及び育児を目的とした休暇の取得割合
(育児休業等を取得した男性労働者の数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇を取得した男性労働者)÷配偶者が出産した男性労働者の数
- 男性労働者の育児休業等の取得割合
- 公表時期
公表前事業年度の終了後、おおむね3か月以内に公表します。実際には、2023年4月1日以後に開始する事業年度から対象となります。
(例)事業年度が4月~翌年3月の場合
2022年4月~2023年3月の実績をおおむね2023年6月末までに公表 - 公表方法
インターネットの利用やその他適切な方法で一般の方が閲覧できるように公表することが求められます。自社のホームページ等のほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表することも推奨されています。
今回の改正は大企業が対象となっていますが、中小企業においても積極的に公表することで男性の育児休業に対するポジティブなイメージを印象づけることができます。厚生労働省は、男性の育児休業取得率を2025年までに30%にすることを目標に掲げており、今後はさらなる改正が行われることも予想されます。男性も育児休業を取得しやすい職場環境づくりを進めるとともに、企業の経営戦略や採用戦略においてもひとつの指標として活用してみてはいかがでしょうか。
<都道府県労働局>
リーフレット
「2023年4月から従業員が1000人を超える企業は男性労働者の育児休業取得率等の公表が必要です」 - 対象となる企業
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2023年1月13日
<解説動画あり>賃金のデジタル払いが2023年4月に解禁されます
*解説動画はこちら2023年1月号 2023年4月 賃金のデジタル払い
賃金の支払方法について労働基準法第24条では通貨払いが原則となっていますが、例外として労働者の同意を得た場合には労働者が指定した銀行口座や証券総合口座に振り込むことが認められています。この度、労働基準法施行規則の一部を改正する省令が公布され、2023年4月より資金移動業者(〇〇Pay等)への資金移動による賃金支払い(賃金のデジタル払い)も認められることとなりました。ここでは、今後、会社に求められる対応について解説いたします。
■デジタル払いができる資金移動業者とは
賃金のデジタル払いとは、給与を現金や銀行口座への振込によらず資金移動業者の口座へ資金(給与)を移動することにより賃金を支払う方法です。資金移動業者とは、銀行等以外のものが為替取引(現金輸送によらない送金)を業として行うものであり内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。賃金のデジタル払いでは、この内、一定の要件を満たす厚生労働大臣の指定を受けた「指定資金移動業者」に限り、従業員が口座として指定することが可能となります。■会社に求められる対応は
(1)労使協定の締結
労働組合または労働者の過半数を代表する者と対象となる従業員や対象となる賃金や金額の範囲、実施開始時期などについて労使協定を締結することが必要です。
(2)従業員への賃金支払い口座の選択肢の提示
資金移動業者の口座への賃金支払いを強制することはできません。また、資金移動業者の口座のみを提示することも禁止されており、労働者が銀行口座または証券総合口座への賃金支払いも併せて選択できるようにする必要があります。
(3)従業員への説明
銀行との違いや具体的な仕組みや留意事項(口座の上限額や破綻時の補償、アカウントの有効期限)などについて従業員に説明することが求められます。
(4)従業員の同意取得
従業員が資金移動業者の口座への支払いを希望する場合、同意書を取る必要があります。給与のデジタル払いはあくまでも選択肢の一つであり会社にデジタル払いを強制するものではありませんが、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、賃金のデジタル払いのニーズは高まっていくことが予想されます。導入するかどうかの検討を含め、随時、最新情報に注視しながら早めに対策を講じるようにしましょう。
(厚生労働省 資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html